もう一つの世界
風斗が扉を開ける。
「眩しい!」
風斗が思わず声を上げる。
想像を絶するような眩しさだ。
それと同時にふと感じたことがあった。
なんだろうこの空気は。
嗅いだことがあるような空気だ。
「風斗。扉の前には何が広がってるの?」
手で目を押さえながら風斗に話しかける。
「おいこれってまさか...綾人!目を開けろ。」
風斗にそう言われ僕も目を開ける。
「これって...僕の部屋じゃないか!」
扉の先はの僕の部屋だった。
「なんでこんなところに...」
「とりあえず1階に降りてみようぜ」
風斗が手で誘ってくる。
「そうしようか。」
僕は風斗の誘いに乗り、部屋の扉を開けてみることにした。
風斗が扉に手をかけて開けようとする。
「これ...開かないぞ。」
風斗が体重をかけて押しても、扉はびくともしなかった。
「じゃあ僕たちここに閉じ込められたってこと?」
僕は流石に落ち込んだ。
山を出発してどれぐらい経っただろうか。
いろいろ不可解な目に遭い、なんとかここまで来たがここがどこかすらわからないし、まずこれは本当に現実の世界なんだろうか。
「なんてな。冗談だよ。」
笑いながら扉を開ける風斗。
「流石に冗談と疑える体力は残ってないよー。」
こんな状況でもまだふざけることのできる風斗はすごいというか能天気というか。
だがさっきの状況から考えてもだいぶメンタルが回復したみたいだな。
少し安心した。
「行こうぜ。」
扉を開けた風斗が呼んでくる。
それについていき、扉を開けてくれている風斗についていく。
2階の廊下はなんの変哲もない。
普段僕がよくみる光景だ。
そして1階につながる階段を見下ろす位置についた。
ここもこれといった変わりもない。
「もし、ここが本当の現実世界だとしたら絶対に家族がいるはずなんだ。」
もう出発して数時間経っているはずなので時刻で言うと7時か8時ぐらいだろうか。
この時間帯は父が帰宅して、母親もいる。
普段ならもう夜ご飯の時間だ。
「じゃあ降りるぞ。」
風斗がそういって先陣をきる。
一段ずつ慎重に降りていく。
それに僕もついていく。
やはり何かがおかしい。
階段がもう残り数段になった時、普段ならリビングからテレビの音が聞こえてくる。
テレビの音でなくとも洗い物の音、両親が話している声、だが一切それが聞こえない。
階段を下り終わり、1階についた。
「様子はどうなんだ。風斗。」
「本当に何もないぞ。前遊びに来た時と何も変わってない。」
風斗がこっちを振り返り、そういった。
「とりあえずリビングに行ってみよう。それで全てがわかる。」
僕たちは階段を降りたところからゆっくりと足を進めて行った。
僕の家はリビングとの間に一枚扉がある。
その扉を開ければリビングに出ることができる。
「綾人。開けるぞ。」
「ちょっと待ってくれないか?もし仮にここが違う世界だとして、安易に扉を開けるのは危険だと思うんだ。ここは一つ何か試してみた方がいいんじゃない?」
僕は少し危険だと思い、風斗に提案した。
「確かにそうだな。でも何をするんだよ。」
「僕に考えがある。ちょっと風斗のリュックもらうぞ。」
「あぁ別にいいけどぺっぽが入ってるから重いぞ。」
風斗にリュックを渡してもらった時の重さに驚いた。
腕が沈むかと思った。
思わずリュックを片手で支えることができずに地面についてしまった。
「ぺっぽってこんなに重いのか?」
「いや俺は水8Lぐらい持ってきてるからな。重いのも当然だろ。」
今までこんな重さのリュックを背負ったまま山に登ってきたのか。
どういう体に作られてるのか。
少し気になるぐらいだ。
「でそのリュックで何するんだ?」
「僕が作戦に使うのはぺっぽだ。」
風斗が一瞬首を傾げた。
「ぺっぽ?なんでだよ。」
「この先の扉が安全かどうかまず生き物の反応を見た方がいいと思ったんだ。ぺっぽはさっきからずっと何かを警戒していた。そうなると一番危険を察知できるレーダーはぺっぽだと思ったんだよ。」
「なるほどな」
風斗は少し感心したような表情をした。
「確かに犬ってそういうの結構敏感な気がするしな。」
「そういうこと。じゃあ早速ぺっぽを扉に近づけてみようか。準備はいいか?ぺっぽ。」
ぺっぽは一切返事をしない。
もう一度聞いてみる。
「準備はいいか?ぺっぽ。」
反応はない。
なんでこうも反応がないんだ。
もしかしてすでに何かしらの警戒をしているのかもしれない。
そう考えていると風斗が声をかけた。
「準備はいい?ぺっぽ」
「ワン!」
元気よく返事をした。
何かを警戒して無反応だったのではなくただ単に僕が嫌いだったのか。
「綾人。もしかしてなんか嫌われるようなことした?」
「僕は何もしてない。」
なぜぺっぽに嫌われているのかあまり理解できない。
「まあいいよ。ここは俺がぺっぽに指示を出す。」
そういってぺっぽを抱える風斗。
もともと扉に背を向けていた体制から、風斗が体勢を変え扉と目を合わせる形になった。
少しの間時間を置いてみたが、一切反応はない。
「どうだぺっぽ何か見つかったか?」
風斗がそう声をかけても何も反応がない。
「じゃあこの扉を開けても大丈夫か?」
「ワン!」
ぺっぽが返事をした。
とにかくこの先に何か危険が待っている可能性は低そうだ。
そうして僕たちはリビングにつながる扉を開けるのだった。




