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耳鳴り


歩くこと数分。


頭が覚えている限りの道を辿ってきた。


「ここから先は覚えてない。」


先導していた風斗がそう言った。




前回来た時に覚えているのはここの場所が最後だった。


道が二つに分かれている。


どっちかに勝手に進んだのか。


それとも進んだ記憶が全て消されてしまったのか。




僕たちにはわからないが、この二つの道のどっちかが、あれにつながる道だ。


「どうする綾人」


「どちらかに正解があるのは間違いないとは思うんだが...」


それを決める手段がないから困っているところだ。


あたりが真っ暗なこともあってどちらの道も先が見えない。




「どっちも行ってみるってのはどう?」


「なるほどな」


どっちかわからないならどっちもいって確かめればいい。


「でも道に何かあるかもしれないぜ?ここにも何かがいるとすると、なんかトラップとか、そういうの仕掛けてあるんじゃねえの?」


「うーん」


確かにそのリスクを考慮するとどっちの道も細心の注意をはらっていかないといけない。


まあこの世界では常に気をつけるのが常識だとは思うが。




「ぺっぽにでも決めてもらうか?こいつ綾人助ける時力になったんだぜ。」


「そうなのか。ありがとう」


僕はそう言ってぺっぽに近づいて頭を撫でてみた。


するとぺっぽは一切抵抗せず素直に受け入れてくれた。


「おーすげえ」


「なにもすごくない」


「ワン!」




「じゃあぺっぽどっちに行った方がいいと思う?」


風斗がぺっぽの頭を撫でながら優しく話しかけた。


「ワン!」


ぺっぽが吠えた先は右の道。


「まあどっち行ったとしても俺たちは大丈夫だ。なあ綾人。」


「あぁそうだな」




行く道も決まったので僕たちは腰を上げ、立ち上がった。


そして一歩目を踏み出そうとした瞬間耳鳴りがした。


キィィィィィィ。


耳を刺すような金属音が綾人の耳に聞こえてきた。




あまりのうるささに綾人は一度膝を地につけるしかなかった。


耳を手で押さえて様子を見る。


「大丈夫か!?」


「ちょっと耳鳴りがしただけだ。大丈夫」


「耳鳴りがしただけでしゃがみこむなんて流石におかしいだろ」


「クゥン」


「本当に耳鳴りがしただけだ。」


「そうなのか?何かあったらいつでも頼ってくれよ。本当に」




風斗はあの一件からすごく綾人を心配するようになった。


この世界には二人と一匹しかいないはずなのだから無理もない。


僕は風斗に心配をかけないために急いで立ち上がり再び歩き出した。




キィィ...


まだ微かだが耳鳴りは残っている。


音は次第に形を変えていった。


ただの金属音だと思っていたが、よく聞くとまるで無数の人間の「声」のようなものになっていた。


幼い、若い、まだまだ子供のような声がいっぱい重なって聞こえてきた。


何を言っているかはまだわからないが、少しだけ分解はできる。


『ダリ....ダリ....」


ダリ?なんだそれと頭の中で色々考えたがよくわからなかった。


風斗と道を進んでいるが特に異変はない。


というかまず新しい道という認識なので変化があってもわからない。




「綾人?」


「どうした?」


風斗が何故かこちらをみている。


「今なんか左の道をずっとみてたぞ。しかもなんか笑顔で」




「左の道を見てた?」


ひだり、ひだり、ダリ、ダリ


僕は気づいてしまった。


耳鳴りの正体


完全に無意識だった。


左の道をみているのも、知らぬ間に笑顔になっていることも。


その声はひだり..ひだり..と言っていたのだ。




「なんか左の道にあるのか?」


風斗は少しだけ道を戻り、左の道を覗き込むが何も見つからない。


「いやなんでもない。多分」


「多分?なぜそこを曖昧にする意味があるんだ。もしかしてなんかあったのか?」




風斗にこれ以上心配をさせるのは迷惑だろうか。


いや言わない方が後から怒られる。


「実はさっきから声が聞こえるんだ」


「声?」




「あぁ。最初はただの耳鳴りだったんだ。でも次第にそれは音を変えていって、だんだんと気づいてきた。それが実は子供のような声であることに。」




「そいつがなんか言ってるのか?」


「今は何も聞こえないけどさっきまで多分ひだり、ひだり、って言ってたはずだ」




「だから綾人はずっと左見てたのか」


「そういうことだ」


「で綾人はどう思う?その耳鳴りについて。敵ととるか。それとも味方ととるか。」


「いまのところまだ断定はできない。でもこの耳鳴りが言うことを一度やってみて気づくこともあるだろうな。」


「だよな」




なぜか風斗は誇らしげな表情をしていた。


「つまり?」


「そういうことだ。耳鳴りに従って左に行ってみるんだよ。」


大体何を言い出すかわかっていたが、すぐそこに行き着くのは流石としか言いようがないな。




風斗の提案通り僕たちはきていた道を引き返して左の道に行くことに決めた。


結局振り出しの位置にもどった僕たちだったが、そんな時僕の耳に異変が起きた。


ドン!


今度は声ではなく爆発音のようなものが耳に響いた


鼓膜が破れるようなすごい勢いの音。




そしてまた微かに声が聞こえた。


『ミギ..ミギ..』




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