絶望と希望
綾人は茂みから飛び出して走った。
30mぐらい走ったところで止まった。
風斗は綾人を追いかけようとして、茂みから出ようとするがぺっぽが服を噛んで必死に止める。
「綾人!」
その叫び声も虚しく、UFOらしきものはだんだんと近付いてくる。
大きさは車一台分ぐらいだろうか。
UFOは綾人の前で止まった。
近くで見てみると、これは紙でできているのか?
金属や、その他の物質ではなく紙でできているようだった。
遠くから見た時はあまり違和感がなかったが、全体的に歪な形をしている。
操縦席らしきものがあるが、操縦している者はいないようだ。
UFOらしきその物体は綾人に近付いたきり何もしない。
動くこともないし、何か危害を加える様子もない。
茂みから見ていた風斗も一安心と思っていたその時だった。
UFOのパーツである紙が少しずつ剥がれていった。
まるで塗装が剥がれるようにぺりぺりと剥がれ、中から本当の姿を現した。
そこにあったのは丸いボールのようなもの。
それは綾人の足元に着地した。
「ボール?」
綾人が不審に思いそのボールを手に取った瞬間...そのボールから中身が溢れ出してきた。
無数の紙切れのようなものがブワッと吹き出した。
その紙切れは綾人の足元を一瞬で埋めた。
なんだろうと思い、綾人は腰を落として適当に紙を一枚拾った。
『ほしい』
「ほしい?」
紙にはただ一言『ほしい』と書いてあった。
綾人は多くある紙の一枚を拾っただけなので、まだまだたくさん種類があるはずだと思い、もう一枚を拾った。
だがその紙も『ほしい』と書いてあった。
そして綾人はもう1枚もう1枚と繰り返し見ていった。
だが書いてあることはもちろん同じ。
ただ一言『ほしい』
何が欲しいんだ?
何を求めているんだ?
綾人は頭の中で色々考えた。
あのUFOらしきものは僕に何をしようとしたのか。
この紙に書いてある『ほしい』とは一体何を求めているのか。
もう1枚、もう1枚とめくっていくうちに綾人は頭の中が回らなくなっていた。
いつしか綾人も繰り返し発言するようになった。
「ほしい...ほしい...」
紙をめくって中身を覗くだけの作業。
ただそれだけだったのに綾人は少しずつおかしくなっていった。
拾っては覗いてをひたすら繰り返していくうちにもう拾える紙がなくなってしまった
綾人は拾える紙がなくなったことに気づくと、ただ茫然と立っていた。
何かを悟ったような、それとも中身が空っぽになってしまったように。
その一連の状況を見ていた風斗は何か危険を感じ走りだした。
「おい!綾人。」
風斗が声をかけるが返事はない。
体を揺さぶっても、軽く殴る素振りを見せたところで何も反応はない。
ずっと立ち尽くしたいた。
言っているのはただ一言だけ。
消えそうなほど弱い声で「ほしい」の一言だけを繰り返し言っている。
「どうしたんだよ!」
風斗が怒りや、不安や、色々な感情が入りまじった複雑な声で意識を取り戻そうとするが、綾人の意識は帰ってこない。
風斗はひどく後悔した。
自分があの時止めていれば、こうはならなかった。
自分があの時UFOを引きつける能力や、圧倒的な力があったとすれば...
後悔しきってもしきれない。
風斗は地面に這いつくばった。
怒りや後悔を地面にぶつけた。
ただひたすらに、地面を叩いた。
だが返ってくるのは手のひらの痛みだけだった。
「これから二人で帰ろうって話をしてたのに...」
綾人からの返事はない。
「俺とぺっぽで帰るか?」
そんなことを考えたが、あまりに綾人が報われない。
「多分、俺を危険から守るために、体張ってくれたんだよな...」
思えば、冷静な綾人がこんな危険な真似をするとは思えない。明らかにリスクのほうが大きかった。
適当な理由で自分を納得させて鼓舞したんだな
風斗は、地面にうつ伏せになり、とにかく丸まっていた。
この現実から逃れたかった。
そんな時ぺっぽが背中に乗ってきた。
「ワン!ワン!」
俺を励ますように、鳴いていた。
ただ励ましているだけじゃない。
ぺっぽは、俺のポケットに向かって鳴いていた。
何かあるのか?
俺はそう思い、ポケットの中に手を突っ込んでみた。
手触りは少し柔らかくい。
それを掴んで勢いよくポケットから引っこ抜いた。
「ランドセル?」
そういやスーパーに買い物に行った時になんかカゴに入ってたから適当に持ってきたんだよな。
「ワン!ワン!」
そのランドセルを見たぺっぽが更に声を上げる。
ぺっぽは体の向きを立ち尽くしている綾人の方へと向ける。
「このランドセルに何かあるんだな。」
風斗はぺっぽの必死さを読み取り、このランドセルに綾人を救う可能性を見出した。




