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僕たちが外に出てきた頃には家の中に響いていたドス、ドス、という鈍い音は、嘘のように鳴り止んでいた。

勢いよく飛び出してきたせいで腕を擦りむいてしまった。

血が滲んでいる。

僕が怪我を少しみていると風斗が心配そうな顔でこちらをみてきた。

「大丈夫か?」

声をかけてくれる。

「全然大丈夫だよ。擦りむいただけだし。」

「そうか。ならよかった。」

こんなかすり傷程度で心配してくれるなんて、と心の中で少し思った。

僕たちは今、帰る場所がない。

この世界で生き延びたとしても、帰れる保証はどこにもなかった。


色々考え事をしていると顔に出たのだろうか。

「大丈夫だ。俺たちは絶対に帰れる。」

僕の表情を察したような感じで励ましの声をかけてくれる。

「ひとまずこれからどうするかだな。」

僕たちは僕の家の目の前にいる。

だが、家の中にはまだ何かいるかもしれないし、危険だ。

「まず目標を整理しようぜ。俺たちは帰ることを第1に考えるんだ。」

「そうだな。」

「そして帰れる可能性のある選択肢は二つ。一つ目は綾人の部屋に行くこと。二つ目はもう一度青ヶ山へいくことだ。」

確かに考えてみればその二つしか選択肢はない。

そして僕の家の中は何かがいて危険だ。

つまり僕たちに残された選択肢は一つしかないってことか。

「青ヶ山へ行く。」

僕が手のひらを胸に当てて言った。

「よし。じゃあ決まりだな。もう一度青ヶ山のあそこに行く。

「場所は全く覚えてないけど、行くしかないんだ。」

改めて選択肢が一つしかないことを知った。

「あぁ。そうだな。」

ぺっぽもカバンからジャンプをして出てきた。

「お前も決めたんだな覚悟を。」

ぺっぽは返事をしなかった。

だが、こちらを見返してくるその目は、逃げる気がないように見えた。

そして僕たちはもう一度青ヶ山の始まりの場所を目指すことにした。


相変わらずひとけのない街。

声や音も何もしない。

聞こえるのは微かな風の音だけ。

「そういや喉乾いたな。」

風斗が上を見ながら呟く。

「水持ってきてるからそれ飲めばいいじゃん。」

「水だけじゃ満足できないんだよなー。もう全然冷たくないし。」

風斗が水筒に入っていた水を一口飲んだ。

「ぬるい。」

「じゃあ自販機でも行ったらどうだ?」

「でも俺、お金持ってないぞ。」

「じゃあ無理か。」

そういや二人ともお金は持っていなかった。

「ちょっと待てよ。この世界に人がいないとすると、スーパーとか行ったら商品取り放題なんじゃないか?」

風斗が少し高揚しているようだ。

「確かに取り放題かもしれないが、こっちの世界の食べ物って食べれるのか?」

ふと疑問に思った。

こっちの世界に来てから食べたものといえば風斗が持参してくれたチョコレートと、カップラーメンのみ。

こっちの世界の食べ物はまだ食べたことがないのだ。

「まあそんなこと気にすんな。とりあえずスーパー行ってみようぜ!」

「わかった。行ってみよう。」

ちょうど青ヶ山に行く道にスーパーがあったので寄ってみることにした。


「わぁすげぇ!」

風斗がジャンプをしてはしゃいでいる。

現実世界となんら変わりないスーパーなのだが、品揃えが完璧だ。

しかも店員がいないとなるとこの商品は全て僕たちが貰っても良いということだ。

僕も少し胸の高鳴りを覚えた。

だが少し違和感もある。

なぜ人がいないはずなのにこんなに綺麗に商品が並んでいるのだろうか。

まるで誰かが整理しているような綺麗さを保っている。

隣でカートを手に取りはしゃいでいる風斗が見えた。

まるでカートを乗り物かのように扱っている。

「子供だな。」

一人呟く。

僕も風斗についていき、自分たちが欲しいものを片っ端からかごの中に入れていく。

「これも、これもこれも!」

みるみるうちにかごはいっぱいになった。

お菓子、カップラーメン、ジュース、そしておもちゃのランドセル。

ぺっぽが入り口から動こうとしない。

僕たちはカゴに詰め終わったのでぺっぽの方へ向かった。

カゴを乗り物のように扱う風斗はまるで子供そのものだ。

「これからどうする?」

風斗に聞いてみる。

かごの中にパンパンに詰めたお菓子やジュースたちを全て僕たちのカバンに入れることは不可能である。

かといって山を登るのにカートごと持っていくのは流石に厳しいだろう。

「おい、綾人。俺これ入れてないぞ。」

風斗がそう言って手に持っていたのはおもちゃのランドセルだった。

青くて、小さい。


風斗がかごの中に入れるはずはない。

だが僕も入れた覚えはない。

もしかして誰かがかごの中に入れたのか?

そんなことが頭によぎるがそれはあまり考えれなかった。

流石にカゴに入れるような距離だと僕たちが気づくだろう。

「まあいいか。俺がこれ持ってくわ。」

風斗がそう言ってポケットにランドセルを突っ込む。

「もしかしたら何かの役に立つかもしれないだろ?」

そんな気味の悪いものポケットに入れるなんてすごい度胸だな。


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