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陽だまりの灯(ともしび)  作者: 悠々


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第 3 話:冒険の始まりと戸惑い

第 3 話:冒険の始まりと戸惑い


村を出てから三日が過ぎた。


舗装された街道を歩き続ける。

行き交う人の数も、馬車の往来も、日に日に増えていった。


そしてついに、地平線の先に巨大な壁が見えてくる。

商業都市エルネア。


レオンは足を止めた。

見上げる首が痛くなるほどの巨大な城壁。

村の柵とは比べ物にならない。


城門へと続く人の波に、レオンは気圧されていた。

色とりどりの服を着た人々。

荷を積んだ商人。

そして、レオンと同じように武具を身につけた者たちの姿も見える。


耳をつんざくような喧騒。

様々な匂いが混じり合う空気。

何もかもが、レオンの知る世界とは違っていた。


衛兵に身分証代わりの村長の紹介状を見せる。

簡単な質問をいくつか受け、レオンは初めてエルネアの地を踏んだ。


街の中は、外から見た以上の活気に満ちていた。


石畳の道がどこまでも続いている。

両脇には、見たこともない品物を並べた店がひしめき合っていた。


「すごい……」


思わず声が漏れる。

村では一番の使い手だと自負していた。

だが、この街では自分がひどく小さく感じられる。


レオンは気持ちを奮い立たせた。

今日の目的はただ一つ。

冒険者ギルドへ行くこと。


道行く人に尋ねながら、街の中心を目指す。

親切に教えてくれる人もいれば、田舎者だと見て足早に去っていく人もいた。


しばらく歩くと、ひときわ大きな建物が目に入った。

三階建ての石造りの建物。

その正面には、交差した剣と盾をかたどった大きな紋章が掲げられている。


冒険者ギルド。


レオンはごくりと喉を鳴らした。

あの銀色の冒険者も、この扉をくぐったのだろうか。


重厚な木の扉に手をかける。

ぎしり、と重い音を立てて扉が開いた。


一歩足を踏み入れると、熱気がレオンの体を包んだ。


酒と料理の匂い。

人々の話し声。

金属がぶつかり合う音。


広いホールには、屈強な冒険者たちが大勢いた。

傷だらけの鎧を着た戦士。

ローブをまとった魔術師。

軽装の弓使い。


誰もが自信に満ち溢れているように見えた。

レオンは自分が場違いな存在に思えて、少しだけ気後れする。


ホールの奥に、長いカウンターがあった。

受付だ。


レオンは意を決してカウンターへ向かった。


「あの、冒険者になりたいんですけど」


レオンの声は、喧騒の中で少し上ずっていた。


受付の女性は、にこやかに顔を上げた。

「はい、ようこそ冒訪者ギルドへ。新規登録ですね」


女性は手際よく書類を用意する。

名前や出身地、使える武器などを記入していく。


「はい、終わりました」


「ありがとうございます。では、こちらがあなたのギルドカードになります」


女性が差し出したのは、一枚の銅製のプレートだった。

レオンの名前と、Fという文字が刻まれている。


「あなたは本日より、Fランクの冒険者です。おめでとうございます」


Fランク。

一番下からのスタート。

だが、レオンの胸は高鳴っていた。


ついに、冒険者になれた。

あの憧れへの第一歩を踏み出したのだ。


「依頼はあちらの掲示板から、ご自身のランクに合ったものをお選びください」


レオンは礼を言ってカウンターを離れた。

意気揚々と、ホールの壁際に設置された巨大な掲示板へ向かう。


そこには、羊皮紙の依頼書が隙間なく貼られていた。


「すごい数だ……」


レオンは一枚一枚、依頼書に目を通していく。


『依頼:下水道の巨大ネズミ討伐』

『ランク:E』

『推奨:パーティ』


『依頼:街道荒らしのゴブリン討伐』

『ランク:E』

『推奨:パーティ』


『依頼:鉱山までの荷馬車の護衛』

『ランク:D』

『推奨:パーティ』


レオンの眉が、わずかに曇る。

ほとんどの依頼書に「パーティ推奨」の文字があった。


村にいた頃は、一人で戦うことしか考えていなかった。

自分の力を試したかった。


ようやく、Fランクでも受けられる依頼を見つける。


『依頼:ギルド倉庫の掃除』

『ランク:F』

『報酬:銀貨一枚』


『依頼:城壁周辺の薬草採取』

『ランク:F』

『報酬:銀貨二枚』


レオンは立ち尽くした。

これが、冒険者としての最初の仕事。

思い描いていたものとは、あまりにも違っていた。


周りでは、冒険者たちが仲間と笑い合いながら、高ランクの依頼について話している。

その輪に、自分は入れない。


ソロで活動するということ。

その厳しさを、レオンは登録初日にして痛感していた。


どうすればいいのか。

期待に満ちていた心に、戸惑いの影が落ちる。

レオンはただ、喧騒の中で一人、掲示板を見つめていた。

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