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15.神の剣、表彰される①

 ――王都・聖教会。


 その日の会議室は、異様な熱気に包まれていた。


「報告します! 信徒登録数、先週比で三倍に増加! 寄付金も記録更新です!」


「ま、まさか……神の奇跡か?」


「いいえ、原因は“あの方”です!」

 司祭の指が指し示すのは、一枚の新聞。

 見出しにはこうあった。


『闇の救世主、神の審判を代行す――!』


 そして記事中央には、剣を掲げる黒衣の青年――ルシエル・グレイスの姿。


「……闇の……救世主?」

「どっちなんだこれは?」


 動揺する上級司祭たちの中で、ひとりだけ瞳を輝かせている者がいた。


 聖女候補、セリア・クローヴァ。

 彼女は立ち上がり、胸に手を当てる。


「これは神の啓示です!」


「啓示?」

「はい! 神は闇をも救うと仰せなのです! そしてルシエル様は――神の剣!」


 会議室が凍りついた。


「ま、待ちなさいセリア。あの男は“闇”を名乗る危険人物だぞ。」

「いいえ! 闇を名乗りながらも、誰よりも世界を清める方です!」


 ――どこでどう歪んだら、こういう結論に至るのか。


 それでも彼女の目は真剣そのものだった。

 いや、もはや神々しさすら漂っていた。


 その瞬間、部屋の光が変わった。


 柔らかな輝きがセリアを包み、背中に淡い光輪が浮かび上がる。

 祈りの言葉が響いた。


「神よ……私は見ました。闇の中に差すあなたの光を。」


 光が収まり、誰もが息を呑む。


 ――それは、聖女の証。


「……聖なる加護、発現……?」

「彼女が“聖女”に……!」


 会議は一気に騒然となった。

 ルシエルへの歪んだ妄信は彼女を聖女へと至らしめることになった。

 セリアは微笑み、まっすぐに言い切る。


「この奇跡こそ、ルシエル様の導き。神は闇をも受け入れられたのです!」


「……なるほど。ならば――公に讃えるべきだ。」

「異論なし。」

「“神の剣”として表彰を!」


 その瞬間、全会一致で決まった。

 “聖女セリア”の正式認定と、“神の剣ルシエル”への表彰式。


 会議を終えたセリアは、祈りを捧げながら小さく呟く。


「ルシエル様……神はあなたを見ておられます。

 どうか、もう一度あの光を――共に。」


 その声は静かに、しかし確かに聖堂へと響いた。


 ――そして、光と闇の誤解はさらに深まっていくのだった。



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