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第八話「新たな仲間は、魔物召喚士」

 アースを追放し、シャルが宿を出て行った後。

 チャール達は、予め呼んでいた新たな仲間を迎えに来ていた。


「まったく、何なのよ! シャルの奴!!」


 その途中、宿での出来事を思い出しながらマーシャは怒っていた。


「落ち着けマーシャ。シャルの奴は、どうもアースのことになると冷静さを失う節がある」


 そんなマーシャを宥めるブライだったが、ブライ自身もどこかイライラしている様子だ。


「ねえ、チャール! あの女も追放しようよ!!」

「そいつは無茶って話だ。あいつがいなくなったら、回復は誰がやる? 回復薬だけじゃ足りなくなる」


 闇のダンジョンは、普通のダンジョンと違い瘴気によって力を増した魔物達で溢れている。魔力の素である魔素が、淀むと瘴気となる。

 そして、それを吸い込んだ魔物は力を増す。

 瘴気は、人にとっては毒であるが、魔物にとっては力の素なのだ。


 準備をして戦ったとしても、無傷で居られるわけじゃない。それに加えてダンジョンゆえに、普通とは違う環境で戦わなければならない。

 時には、予想だにしないことが起こる。ゆえに、回復する手段は必需。更に、回復薬は数が多くなるとかさばる。

 ゆえに、シャルのように回復術を使える者は重要な存在となる。


「でもさぁ」

「まあまあ。あいつは、聖女だ。世界を救うため、俺達勇者パーティーには必要なんだ。……それにほら」


 チャールの指差す方へ視線を向けると、アースのところへ赴いたはずのシャルが戻ってくる姿が見えた。


「間に合ったようですね」

「……よく戻って来たわね」

「私はただアースさんのところへ行くと言っただけです。パーティーから抜けたわけではありません」

「そのまま愛しのアースさんと一緒に居ても良かったのよ?」

「私もそうしたかったのですが、私は勇者パーティーの一員。使命は全うします」

「……」

「……」


 女同士のいがみ合い。

 男達は、謎の圧に口を挟めずにただただ見ているだけだった。

 すると、そこへ。


「あのー」


 少し血色の悪い男性が声をかけてきた。

 一瞬、死人かと思うほど。

 目の下にはくまがあり、少々猫背だ。手に持った杖は、まるで支え棒のように見えてしまう。黒いローブで全身を包んでおり、見えているのは顔と両の手だけ。


「うおっ!? だ、誰だお前は!!」


 突然背後から話しかけられたチャールは、つい剣を抜こうとしてしまう。


「わわわ!? お、落ち着いてください。僕はその、あなた方のパーティーに参加するために来たんです!」


 大慌てて言う男の言葉に、チャールは剣から手を放す。

 

「お、おお。そうだったか。召喚士とは聞いていたが、名前と外見は聞いてなかったからな」

「あ、いえ。こちらこそすみません。えっと、改めまして。僕の名前はクリント。召喚士です」

「えー? こいつが新しい仲間なの?」


 召喚士クリントのことを見てマーシャは明らかに嫌そうな表情をする。


「おいおい。大丈夫のか? こんな今にも倒れそうな奴で」


 ブライも、クリントをあまり受け入れている様子がない。


「あ、あはは。よく言われます。でも、決して体調が悪いとか病気だとか、そういうわけじゃないんです。普通に健康体ですから」

「そうですか。ですが、何かあれば私にお声掛けください。私の名前はシャル。このパーティーの回復役です」

「あ、これはどうも」


 最初の二人と違って礼儀正しく接してくれたシャルにクリントは、少し恥ずかしそうにぺこぺこと頭を下げる。


「んで? お前、本当なんだろうな」

「な、なにがでしょう?」


 まるで問い詰めているかのようにぐいっと来るチャールにクリントは身を引く。


「お前が、魔物召喚士だって言うことだよ」

「え? あ、はい。そうですね」


 チャールの言葉に、三人は目を見開く。


「ちょ、ちょっと! 本当なのそれ!?」

「へえ、これは良い戦力になるんじゃねぇか?」

「……」


 世界の敵と言われる魔物。

 元々魔物は、この世界には存在しなかった。今から一万年前のこと……異界からの侵略があった。それを止めたのが、初代勇者達。

 しかし、世界を救ったとしても異界からの侵略の影響は消えなかった。世界には魔素が、魔力が、魔法が、魔物が生まれた。


 一万年前に起こったことは、いいことでもあり、悪いことでもある。魔法という力を人類は得たが、同時に魔物という敵も得てしまったのだから。

 そんな魔物を、彼らにとっては倒すべき敵を、戦力にできる。


「チャールさん」

「なんだ? シャル」

 

 新たな戦力に喜んでいる中、シャルだけは険しい表情でクリントを見詰めながらチャールに耳打ちをする。


「本当に仲間にするつもりですか? 彼を」

「ああ? なんだよ。心配してんのか?」


 魔物を戦力として使える。確かに、凄いことだ。だが、もしもということがある。シャルは、そのことを気にしていた。


「大丈夫だっての。お前もいつまでも、アースのことを気にしてないで。気持ちを切り替えろよ」

「……」

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