第六話「聖女ちゃんと遭遇」
「待て!」
やはり呼び止められた。
門の前に立っていた二人の兵士が警戒心を高めながら僕を……いや、ロウガを見ている。
「アースくん。その鎧の者は誰だ」
僕より少し上の青年兵士が優しく問いかけてくる。
「僕が召喚したロウガです」
「君が? なるほど。君は召喚士だったね」
「しかし、珍しいデザインの鎧だ。中は人、なのか?」
次は、初老の男性兵士が問いかけてくる。
「いえ、中に人は居ません」
「どういうことだ? まさかアンデット系の魔物か?」
召喚士は魔物を召喚し使役する者達も居る。そして、彼が言いたいのはアンデット系の魔物―――リビングアーマーやデュラハンなどのことを示しているのだろう。
「違うわ。ロウガは魔物でもないのよ」
と、ティナがロウガの頭の上に腰掛けたまま言う。
「ロボット、という存在らしいんです」
「ロボット? 聞いたことがないな」
「俺もです。ただ、そのロボットという存在はこことは違う世界。つまり異界から呼び出された存在というのであるなら、納得はいきます」
「だな」
とりあえずは良好と言ったところか。
「そのロボットという存在は危険ではないのかな?」
「大丈夫です」
僕は、二人の目を見詰めながらハッキリと言う。
「まあ、勇者パーティーのメンバーである君の言うことだ。信じよう」
「あ、いやそれは」
「ん? どうかしたのかな?」
隠すこともない。それにいつかバレることだ。
なので、僕は二人に真実を告げた。
「そう、だったのか」
「うーん。まあ、勇者様の言い分もわからなくもないが……」
僕が追放されたことを知った二人は、どう言ったらいいかわからずといった反応だ。
「ふん! 私は、まだ怒ってるんだから! アースが気にしてないって言ってもね!」
「しかし、追放された理由が戦力不足だったのなら、今なら戻れるんじゃないのか?」
そう言って初老の男性兵士は、ロウガを見る。
「確かにそうですね。そのロウガというロボットは」
「強いわ!!」
「……とりあえず、街に入ったら絶対目立つと思うから」
「召喚士として責任を持つように」
二人は、塞いでいた道を開けてくれる。
「わかりました」
ふう……なんとか街に入れた。
「アースさん!!!」
するとすぐ聞き覚えのある声が耳に届く。
「うわ!?」
「な、なんだ!?」
遠くから物凄い勢いでこちらへ走ってくる少女が居た。あまりの速さに、街の住人達は何事だ!? と通り過ぎて行く彼女を見る。
「や、やあ。シャル」
「はい! あなたのシャルです!!」
僕の目の前で急停止したシャルは、走ってくる時の険しい形相から一変し幼い子供のように可愛らしい笑顔に変わった。
「で、出たわね!」
いつものように、ティナは僕とシャルの間に入ってくる。明らかに威嚇している。だが、そんな威嚇など効いていないかのように、シャルは笑顔を向ける。
「あっ、ティナちゃん。ふふ、今日も可愛いね」
「あ、あんたに可愛いなんて言われても嬉しくないわ!」
「えー? なんでー? あら? そちらの方は?」
「と、とりあえず場所を移そう。ね? シャル」
ただでさえロウガが目立っているというのに。そこへシャルまで来ると倍増する。さっきは別の意味で目立っていたからな。
「はい! あなたとならどこにでも!!」
「アースは、私が護るんだから!!」
……どこで行こうかな。