第六十四話「決着」
〈フル・ブースト〉は、一体化したティナが僕の中でずっと練り込んでいたエネルギーを一気に解放するもの。
通常の〈ブースト〉とは何もかもが違う。
発動すれば、練り込んだエネルギーは徐々に減っていく。
溜めれば溜めるほど、発動した時の上昇率が変化する。
その代わり、エネルギーがなくなれば、しばらく身体能力が落ちる。
「その心意気! 真正面から受け止めてやるよ!!」
勝負を仕掛けてきた僕を見て、ロメリアさんの闘気は燃え上がる。
それに呼応して、体が炎で包まれた。
「さあ、来な!!」
「言われなくとも!!」
エネルギーの翼を羽ばたかせ、僕は空を駆ける。
「後ろ!」
「いえ」
動きを予測していたのか。ロメリアさんは、背後へと攻撃を仕掛ける。
「くあっ!?」
だが、それは残像。
彼女の攻撃をした隙を狙い、真横から拳を叩きつける。
「まだまだ!!」
「ぐっ!?」
攻撃する余裕など与えない。
一撃、二撃とロメリアさんに拳を叩き込んでいく。うまい具合に、纏った炎で防御をしているようだが、完全に防御し切れていない。
「たくっ! 痛いねぇ……!!」
負けじと、反撃の拳を振り上げる。
「〈爆裂炎拳〉!!!」
「〈エルスト・ナックル〉!!!」
今度回避はしない。真向から、彼女の攻撃に受ける。
光り輝くエネルギーを纏わせた右拳を叩き込んだ。
「うわ!? しょ、衝撃が……!?」
「くっ!? なんて威力……結界にひびが!?」
渾身の一撃同士のぶつかり合い。
観客達を護るための結界にひびが入ってしまったようだ。だけど、僕達は止まらない。僕達が止まるのは、勝敗が決まった時。
「おらああああ!!!」
「いっけえええっ!!!」
互いに譲らない力と力のぶつかり合い。
衝撃は更に爆発し、ついに結界の一部が砕ける音が響く。
「聖女様。このままでは」
「危のうございます。ここは」
「いえ。私は、ここから一歩も動きません。彼らの真剣勝負の決着を、この目で見届けなければ」
このままでは観客達もそうだが、この場もヤバいかもしれない。
だけど、譲れない。
この勝負に勝つのは……。
「うおっ!?」
エネルギーはより一層輝き、流動する。
「これで、終わりだぁ!!!」
「うわあああああっ!?」
炎は弾け、僕の攻撃がロメリアさんの体に直撃する。
そのまま奥の壁へと激突し、ギリギリ意地していた結界が弾け、完全になくなった。
短くも、長く感じた真剣勝負。
「はあ……たくっ」
獣化が解けたロメリアさんは、清々しい表情で僕を見詰めていた。
静寂に包まれた空間で、彼女の笑みを見て、静かに右拳を天へと突きあげる。
「アース。お前の勝ちだ……」
刹那。
観客達が一斉に声を上げた。




