第五十一話「階層主戦(5)」
迫りくる巨大な氷の斧を目の前に、ロメリアさんは赤炎を構える。
すると、刃からはこれまで見たことがないほどの高濃度の炎が噴出し、二回り大きな赤き両の刃と化した。
「真正面から」
ぐっと両の手に力を込め。
「ぶった斬る!!!」
恐れることなく、その場に堂々と。
絶対に斬れるという自信があるかのように、変化した赤炎を―――振るった。
「はっはっはっはっは!! そのままぶっ潰れちまえ!!」
ぶつかり合う炎と氷。
属性の相性ならば、ロメリアさんが有利。だが、それは普通の相手ならばの話。クリントが振り下ろした巨大な氷の斧は、ロメリアさんの炎など効いていないかのように健在だ。
「こっちも忘れちゃいねぇぞ!!」
と、また足元から鋭利な岩が突き出てくる。
「ロウガ! シャルを護るんだ!」
別行動となったシャルをロウガが、その爪で護る。
僕は僕でエネルギ―の刃で切り裂きながら、クリントへと近づいていく。
「くう!! こりゃあ、きっついねぇ……!!」
ロメリアさんが苦悶の表情を見せる。
押し負けているんだ。
あれほどの巨体からの一撃を受け止めていること自体凄いことだ。彼女を信じて飛び出したゆえに、もう大分距離が離れてしまった。
「止まるんじゃないよ!!!」
一瞬の思考。
それがロメリアさんの一言で止まる。
「はい!!」
そうだ。ロメリアさんを信じて、僕達は進むのみ。
「てなわけで―――燃え上がれ!! 猛ろ!! 赤炎!!!」
感じる。ロメリアさんの熱い闘志を。
「焼き斬れなぁ!!!」
「こ、こいつ!?」
ずっと巨大な氷の斧を振り下ろしていたクリントだったが、ロメリアさんにより武器を破壊され、バランスを崩した。
棒状の部分を手放し、膝を突く。
「今だ!」
「はい!」
その隙を、僕達は見逃さない。
「断罪の光剣よ!! 〈ルミナス・ブレイド〉!!!」
まずは、シャルの攻撃。
これまで以上の膨大な光が複数の刀剣となりて、クリントへと飛んでいく。腕に、足に、体に。次々に突き刺さっていく。
「この!!」
「させません! 封じよ!!」
体に光の刀剣が突き刺さりながらも、反撃せんとするクリントだったが、光の刀剣から鎖が生成され、身動きを封じた。
「アースさん!!」
ここで必ず決める。僕は、魔力を最大限にまで高める。
それに呼応するかのように、ロウガからエネルギーが溢れ出した。
「ロウガ!! これを使え!!」
高めた魔力を込めたエネルギーの刃を、僕は空中へと投げる。
それを受け取ったロウガは、魔力を吸収し、光を纏った。
「いっけー!! ロウガ!! ハヤテ!!」
全てを託した。ティナの叫びに、ロウガは翼を広げ、目の前の巨悪へと突貫した。
「させるかよぉ!!!」
しかし、そのままやられるほど相手は甘くはない。
魔法障壁を展開し、ロウガの動きを止める。
その間に、体を動かし、シャルが生成した光の鎖を引き千切ろうとする。
「はっはっはっは!! ここまで俺を追い込んだことは素直に褒めてやるよ! だがなぁ……最後に勝つのは俺だぁ!!!」
ひとつ、またひとつと光の鎖が引き千切れていく。
シャルもなんとかクリントの動きを止めんと頑張っているが、それでも止まらない。
「この」
そこへ、ティナが僕のフードから飛び出す。
「さっさと倒れなさい!!!」
刹那。
ティナの体が光り輝く。
「ティナ?」
「ほえ?」
自分でもわけがわからないとばかりに、声を漏らす。
「な、なんだぁ!?」
が、クリントの焦りの声に視線をすぐ戻す。
そこには、一回り、いや二回りも大きなエネルギーを放出させ、光の獣となったロウガの姿があった。
「こいつ、急に力が……!?」
光の鎖を引き千切ることを放棄し、魔法障壁へ集中するも、ロウガは止まらない。
「なんだかよくわからないけど、決めちゃえ!!!」
「ふざ、けんなぁ!!!」
光の獣は、魔法障壁を砕き、ついに……アイアンゴーレムと融合したクリントの体に穴を空けた。




