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第四十七話「階層主戦」

「あたしは、あの鎧を担当するよ」

「わかりました。じゃあ、ロウガはレッドキャップゴブリンを」

「作戦会議をしてる場合かってんだ!!」


 クリントが叫ぶと、スカルウィッチが杖を構え氷の槍を一度に七本生成した。あれは、氷属性の中級魔法〈アイシクル・ランス〉か。

 

「ハヤテ! 撃ち落とせ!!」


 容赦なくこちらに撃ち込まれた氷の槍だったが、ハヤテがエネルギー弾で全て撃ち砕いた。


「やるじゃねぇか! だが、まだまだ!!」


 生体センサーを展開していた僕は、こちらに近づいてくる敵を捉えていた。


「ロウガ! レッドキャップゴブリンを!!」


 僕が指示を出すと、ロウガは素早く反応し背後から襲い掛かって来たレッドキャップゴブリンを弾き飛ばした。


「いいね、いいねぇ!! 楽しくなってきたぜ!!」


 気分が高揚したクリントは、杖を地面に叩きつける。

 すると、無数の召喚陣が出現し、ゴブリンが大量に召喚された。


「うげっ!?」


 ざっと見ただけでも、三十体は召喚されている。ゴブリンとはいえ、普通に考えてあれだけ一気に召喚するなんてありえない。

 さすが魔族と言ったところか。


「まだまだ出るぜぇ!!」


 ゴブリンに続き、空中に召喚陣が出現。

 そこから蜂のような魔物が召喚される。


「ポイズン・ビーか」

「正解!! 毒にお気をつけをってなぁ!!」


 ポイズン・ビーとは、昆虫系の魔物で素早い動きに加え、毒が厄介だ。


「数を増やしたところで!」


 召喚されたゴブリンとポイズン・ビーが動く動くよりも早く攻撃行動に移る。

 

「〈シャイニング・レイン〉!!!」


 クリント達の頭上に展開された無数の魔法陣から光の雨が降り注ぐ。それにより、ゴブリンとポイズン・ビー達が次々に倒されていく。

 しかし、半数は攻撃を逃れ、散り散りになる。

 クリントは……魔力障壁で防いでいた。


「殺意マシマシですねぇ、聖女様!!」

「すみません、アースさん。倒しきれませんでした」

「いや、十分だよ。ハヤテ! 小型を一掃するんだ!」

「無視しないでくれませんかねぇ!!」


 もうシャルは大丈夫。

 クリントの見え透いた挑発にはのらないだろう。今は、ただただクリントを倒すことだけに集中している。


「そらぁ!」


 ロメリアさんは、離れたところで鎧の魔物と一騎打ちをしている。今のところは、ロメリアさんの方が優勢のようだけど……何か嫌な感じが消えない。

 クリントが召喚する魔物は、僕達が知っている魔物とは見た目こそ同じだけど、魔界という異世界の存在だ。僕達が知っている魔物と違う行動をとるかもしれない。


 そして、別の場所ではロウガがレッドキャップゴブリンと一騎打ちをしている。レッドキャップゴブリンは、ゴブリンの中でも特殊な個体。

 その強さは、中級一位に匹敵すると言われている。ここまでの戦い、ロメリアさんやロウガはほとんど苦戦することなく魔物達を倒してきた。

 だけど、今は……。


「いやぁ、召喚士ってのは特別な存在だが、召喚したら何もすることがねぇよなぁ」


 周囲の状況を把握し、次の行動を考えているとクリントがまるで世間話でもするかのように喋り始めた。


「剣士なら一心不乱に剣を振るえばいい。魔法使いなら魔法を使えばいい。弓使いなら矢を射ればいい。回復術士は、回復と支援を。けど、召喚士はどうよ? 召喚したら棒立ち。いやぁ、楽だけど勘違いされちまうよなぁ」


 勘違い、か。確かに、召喚士は自分では戦わずに、代わりに戦ってくれる存在を召喚する。

 一応魔法使いと同じような位置づけだけど、クリントの言うように特別な存在だ。

 なにせ、別世界から生物を、物質を召喚するのだから。

 それゆえに、他の職業と違って数が圧倒的に少ない。生物を召喚する召喚士ともなれば、更に少ない。


「だからよぉ、めがね。俺は、てめぇを少しは認めてるんだぜ? 特別な存在の中でも、更に特別。ぶっちゃけ、あのへっぽこ勇者パーティーとの戦いより楽しんでる」

「……」


 何かの作戦? こうやって会話をすることで、油断させるつもりか? 噂だと、魔族の中には言葉に魔力を込めることで、相手を惑わす術を使う者が居るとか。


「〈火炎衝〉!!」

「お?」


 刹那。

 僕達の目の前に炎の衝撃波が通り抜けて行く。よく見ると、鎧の魔物が壁際まで吹き飛ばされていた。


「確かに、アースは特別なんだろうね。けど、あたし達のことを忘れるんじゃないよ、魔族」

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