第二話「ブースト! 動き出すロボット」
「へぇ、ロボットかぁ。ねえ、あんた」
まだ状況の整理がついていない中、ティナが新しい仲間を得たとばかりに笑顔でずっと直立しているロボットへと話しかける。
成人男性と同じぐらいだろうか。胸の宝石のようなものが、両腕にもついている。顔はどこか狼を思わせる形をしており、目の部分は赤く染まっている。
「ちょっと、返事ぐらいしなさいよ!」
二度話しかけるもロボットは反応しない。
「ティナ。そのロボットは喋れないんだ」
「え?」
ようやく落ち着いたところで僕は、脳内に流れ込んできた情報をティナに伝える。
「ロボットはエネルギーを充填することで動くんだ。今は、エネルギー切れで動くことすらできない状態なんだ」
「へ、へえ。えっと、つまりお腹が空いてるってことかしら?」
「そういうことかな」
少し可愛らしいたとえを聞いて笑みが零れる。そんな僕の笑みを見て、ティナは自分のたとえが少し恥ずかしかったのか。後になって恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「そ、それでエネルギーってどんなものなの?」
「どうやらここ。胸にあるエネルギー結晶に充填するみたいだ」
「……ティナ」
「なに?」
「〈ブースト〉を使って見てくれないかな?」
「え? でもあれって強化魔法だけど」
それはわかっている。だけど、流れ込んできた情報の中にティナのような姿があった。ぼやけていて本当にティナなのかはわからないけど。
もしかしたら、という可能性がある。
「……うん。やってみる」
僕の言葉に、ティナは頷きロボットの前で両手をかざす。
「〈ブースト〉!!」
すると、強化の光がロボットのエネルギー結晶へと吸い込まれていく。
「これでいいの?」
「たぶん」
流れ込んできた情報もかなり抜けているところがあった。だから、これで本当に正しいのか僕自身も半信半疑だ。
そんな不安のまま待っていると。
「う、動いた!」
「目が光ってるわね」
目が輝き動き出す。
ちなみに、このロボットの名前はロウガ。
情報通りなら、主に接近戦に特化したロボットとのこと。素早い動きで相手を翻弄し、両腕から放出されたエネルギーの爪などで切り裂く。
ロウガは、動き出したとはいえ、まるで指示を待っているかのようにその場から動かない。
「それじゃあ、さっそく戦いに行きましょう!」
「え?」
「だって、このロボットはようやく召喚できたアースの新戦力。このロボット次第で今後の活動が決まると言ってもいいわ」
確かに。ようやく召喚できた新たな戦力。召喚士として、確認しないわけにはいかない。
「じゃあ、薬草を採取しつつ森の奥に進んでみよう」
「ついでに魔物から素材を手に入れて換金しましょう!」
「というわけだから。えっと……ロウガ。一緒についてきてくれるかな?」
少し控えめに言うと、ロウガはこくりと頷く。
そして、僕達が移動を始めると後を追うように歩き出した。
「へえ、こうして動くとちょっと可愛いかも。わんちゃんみたいで」
「いや、ロウガは狼なんだけど」
「細かいことは良いの! それに狼だって犬でしょ?」
ま、まあそうなんだけど。