第二十八話「魔族の力」
アースがダンジョン調査をしている時と同じく、チャール達も闇のダンジョンを攻略していた。
途中で苦戦をする場面が何度かあったが、誰も欠けることなく階層主が居るところまで辿り着いた。
「やっと階層主のところにきたわね……あーあ、早くシャワー浴びたい!!」
「ちっ、俺としたことが……あの場面で攻撃を食らうなんて」
「皆さん。階層主に挑む前に、回復をします。それと、栄養補給もしっかりと。今、結界を張ります」
階層主の間。その扉を前にして、シャルは瘴気を阻む結界を展開する。
その後、回復魔法をかけ、持ってきた携帯食料を手に腰を下ろした。
「……ふう」
「あら? 聖女様は随分とお疲れのようですわね?」
少し離れたところにマーシャは座り、シャルへ憎まれ口を叩く。
「そうですね。今回は、いつも以上に疲れました。特にマーシャさんの護衛で」
「はあ?」
「いつもなら、アースさんが周囲警戒をしているので、安心できていましたが」
「あー、確かにあいつってば戦いで何もしないから、そういうことばかりしてたわね」
「周囲警戒も、戦いでは大事なことです」
「なによ。私は、それすらできていないって言いたいわけ?」
「いえ、別に」
もはや二人の言い争いを見慣れたチャール達は、ほとんど関与することはなくなっていた。それに、今は少しでも体力を回復しておきたい。
ここまで、予想以上に魔力と体力を削られてしまった。
「クリント! 次は、階層主だ。もう出し惜しみなんてするなよ!」
「は、はい! も、もちろんですよ!」
チャールの言葉に、クリントはびくびくしながらも笑顔で答える。ここまで、クリントは何体もの魔物を召喚してきた。
しかし、戦力になった、と言えば微妙なところだ。
決して弱くはなかった。だが、どうも出し惜しみをしているように見えて仕方がなかった。
「次は階層主なんだからね? あんたが召喚できる一番強い奴を召喚しなさいよ?」
「このままじゃお前。アースみたいに、追い出されるぜ?」
「わわわ、わかりました! 俺、頑張ります!!」
マーシャとブライの一喝も加わり、クリントはどこかやる気を出したように見える。
その後、チャール達は階層主を倒すために扉の奥へと進んだ。
相手は、ミノタウロス。
多少強かったが、チャール達は拍子抜けだと言わんばかりに倒した。瘴気で強化されているとはいえ、勇者パーティーの敵ではない。
「よし。これでこのダンジョンは攻略だ」
「あー、だる! 次はもっとさくっと攻略したいわね」
「そのためにも、まずはさっさと街に帰って英気を養わねぇとな」
「お、お疲れさまでした! 皆さん! いやぁ、さすが勇者パーティーですね」
階層主を倒せば、後は帰還するだけ。
ここまでずっと神経を研ぎ澄まし続けていたが、ようやくそれが緩められる。帰還用の転移空間を見詰めながら、チャール達は街でゆっくりすることだけを考えていた。
「―――まあでも、この程度かってところかね」
その油断が、いけなかった。
「ぐあああ!?」
「ブライ!?」
ブライの叫びが響き渡ったと思いきや、チャールの横を通り過ぎて行った。
どしゃっ! と床に叩きつけられる音。
ぴくりとも動かない仲間。
いったい何が起こったんだ? と誰もがすぐ理解できなかったが、入口に佇む召喚士を見て現実に引き戻される。
「クリントさん。あなた……」
シャルは、明らかに今までのクリントとは様子が違うことに気づき、身構える。
彼の前には、階層主であるミノタウロスと戦った時に召喚されたゴーレムが佇んでいる。もう戦いが終わったというのに、なぜクリントは送還しないのか。
「ちょっとあんた! まさかとは思うけど、ブライを吹っ飛ばしたのって」
「ああ、俺だ」
マーシャの言葉に、クリントは即答する。いつものクリントとは違うことに、マーシャはごくりと喉を鳴らす。
「クリント。お前……何をしたかわかってるんだろうな?」
剣に手を添えながらチャールは睨む。
「わかってるっての。つーか、勇者様も理解してるのか? この状況を」
「ああ。わかってるに決まってるだろうが!! この裏切りものがぁ!!」
チャールは剣を抜き去り、刃に光を宿す。
「〈光刃烈斬〉!!!」
剣の勇者に与えられた力。魔のものへ大打撃を与える光の一撃。
「おいおい……何もわかってねぇじゃねぇか!!」
上段から振り下ろされる一撃に対して、クリントはすでに召喚していたゴーレムに魔力を注ぐと、ゴーレムは、両腕を交差させ防御の構えを取る。
「ゴーレム如き!!」
本来ならば、普通のゴーレムが勇者の一撃を耐えられるわけがない。チャール自身もそれがわかっている。
が。
「なにっ!?」
「ふー! どうしちゃったのかなぁ? 勇者の一撃はその程度なのかぁ?」
ガキィン!! と鈍い音を響かせ、ゴーレムはチャールの攻撃を受け止めた。




