第十八話「ダンジョン調査」
ティランズの冒険者ギルドのマスターロメリアさんの提案に僕は乗った。
僕は、一気に下級五位から中級八位へと上がり、新しく生まれたダンジョンの調査隊に加わった。隊は、四人一組の三編成。
だが、その中で一組だけ二人になっている。それが、ロメリアさんと僕だ。
そもそもギルドマスターであるロメリアさんは上級二位という冒険者の中でも指折りの強さだ。そもそもギルドのトップに立つほどの人だ。普通じゃないのは確かだ。
そのため、編成の人数も少なくていいらしい。
僕がロメリアさんと一緒になったのは、彼女からの要請だ。
「さあ、あんた達!! 新しくできたダンジョン調査! 気合い入れて調査しろよ!!」
「おうともさ! ロメリアの姉貴!!」
「今日は、思いっきり稼いでやるぜ!!」
「ロメリアさんと一緒にダンジョンに潜れるなんて、私幸せです!!」
東の森に生まれたダンジョン。その出入り口付近で、ロメリアさんと冒険者達は叫ぶ。そんな中、僕とティナだけが少々ついていけずと言った感じだ。
「凄い人気ね、あの女」
「ティランズの住民達からは、頼れる姉貴って感じで慕われてるらしいからね」
ロメリアさんが、ティランズの冒険者ギルドのギルドマスターになってからと言うもの、そのカリスマ性と実力で血の気の多い冒険者達を全員従わせた。
それからと言うもの姉貴として慕われ、冒険者達も血の気の多いことは変わらないが、いくらかは良心的になったとかなんとか。
「おっと、その前にあたしの相棒を紹介する!! アース!!」
え? 相棒? そんな感じなの? 僕。
「あいつ……」
「と、とりあえず前に行こうか」
冒険者達の視線が突き刺さる中、僕とティナは前に。ロメリアさんの隣に移動する。
「お前達も知っていると思うが、こいつは元! 勇者パーティーのメンバー召喚士アースだ!!」
「あ、あのそんな元を強調しなくても」
「はっはっは! 悪い悪い。ともかく! アースは単身でロックワームを討伐した猛者だ! その実力を買って、あたしが直々に調査隊に誘った!! お前達もよろしくやってやれ!!」
言うことを言い終わったのか。ロメリアさんは、僕の背中を叩く。
なにか一言でも言えということだろうか?
「えー……紹介に預かりました、召喚士のアースです。そして、こっちはティナです。ロメリアさんが言った通り、というか皆さんも知っていると思いますが、僕は元勇者パーティーのメンバーです」
もう受け入れたこととはいえ、こうして話すと違うな。
「とはいえ、僕の実力は大したものではありません。僕がロックワームを倒せたのは」
と、僕はロウガを召喚した。
「このロウガとティナのおかげです」
「おお! こいつが噂の鋼鉄の狼人形か!」
「近くで見ると中々かっこいいじゃねぇか!」
「あの妖精の力も相当なものらしいな」
「ロックワームを単身で倒せるほどなのに、どうして追放されたんだろうね」
その時は、ティナしかいなかったからな。僕が追放された後に召喚できた。もし、追放される前にロウガ達を召喚できていたとしたら……いや、今はいいか。
「アース。あんたは召喚士だ。召喚士ってのは、召喚したもので戦う。そのティナって妖精の力も、ロウガって鋼鉄の狼人形の力も、あんたの力ってことさ」
「そうよ。もっと自信を持ちなさい」
ロメリアさんとティナの言葉に、僕は気持ちがふわっとした。
僕の力、か。
「今の僕は冒険者。皆! 気軽に接してくれると、その……嬉しいです!!」
う、うーん。なんだか締まらない……こういうのあんまり得意じゃないからなぁ。
「おう! 遠慮なく話しかけてやるぜ!!」
「今日の調査! ちゃんとやれよ!!」
「ロメリアさんと組めるなんて羨ましいですー!!」
「よーし! あんたら!! 気合いも入ったところで、ダンジョン調査開始だー!!」