第十四話「新たな召喚は、鋼鉄の鳥」
早朝の散歩を終え、シャルと別れた後、部屋に戻るとティナが丁度起きようとしていた。
どこに行っていたのかと聞かれたので、シャルと一緒に散歩をしていたと素直に答えたら、一気に眠気が醒めたかのように目を見開き、なぜか掴みかかって来た。
もしかして、置いて行ったのが悪かったのかな? と思い、そのことを謝ったんだけど……なぜか更に怒らせてしまった。
彼女の機嫌は、中々直らず、朝食を食べている時も随時むくれていた。
「むう……」
朝食を食べ終え、あることを試そうと思い、宿屋の裏手へとやってきた。
「ティナ。まだ怒ってるの?」
「べっつにー」
などと言いつつも、こっちと視線を合わせてくれない。ロウガを召喚すると、頭の上にどっしりと座る。
「それで? ここで何をするの?」
「え? あ、ああ。実は、新しい召喚ができるかしれないんだ」
「それ、ほんと?」
興味を示してくれたようで、ようやくこっちに視線を向けてくた。
「この感覚……ロウガの時と似ているんだ」
そう言いながら、僕は右の手の甲を見詰める。
「じゃあ、ロウガにも仲間ができるってこと?」
「たぶんね」
僕は、さっそく意識を集中させる。
体内の流れる魔力を、右手の甲にある紋章に集中。すると、脳内にとあるイメージが浮かぶ。そうか……君が、新しい仲間なんだね。
「あっ、召喚陣が!」
ティナの言葉通り、僕の目の前に召喚陣が出現する。
「我が魔力を糧に、我と契約を結びし異界のものよ。呼びかけに応じ、我が前に現われよ!」
刹那。
右手の甲の紋章が赤く輝き、召喚陣と共鳴する。
「鋼鉄の……鳥?」
召喚されたのは、鋼鉄の鳥。
大きさは、だいたい五歳児ぐらい。体が鋼鉄という点以外で変わっているのは、背中にはある二つの筒だろう。
鋼鉄の鳥―――ハヤテを召喚した時、新たな情報が流れ込んできた。
ハヤテの背中にあるのは、ロウガが両腕を飛ばした時に使用していたエネルギーブースター。普通に両翼で飛べることもできるが、エネルギーブースターにより加速することができる。
「アース。この子は?」
ロウガから離れたティナは、ハヤテに近づく。
「ハヤテだ。ティナ。ロウガの時みたいに、エネルギーを注いでくれないかな?」
と、僕はハヤテの額にあるエネルギー結晶を見詰める。
「わかったわ。〈ブースト〉!!」
エネルギーが注がれると、ハヤテの瞳が輝く。
そして、両翼を広げ天空へと飛んだ。
「わー! 飛んだ!」
「……」
「ん? どうしたの? アース」
ぼーっとしていた僕にティナが疑問に思い問いかけてきた。
「いや、ロウガを見た時も思っていたんだけど……」
ロウガとハヤテを交互に見て、僕は素直な言葉を呟く。
「なんか、ロボットってかっこいいなぁ! って」
「……ふふ」
「な、なに?」
僕の言葉に、ティナが微笑ましそうな表情で見詰めてくる。
「だって、アース。子供っぽく目を輝かせてるんだもん」
「え? そ、そうだったの?」
自分でも気づかなかった……。
「アースにも、そういう子供っぽいところあるんだね」
「あ、あはは」
ちょっと恥ずかしい気分だけど、まあティナの機嫌もなんだか直ったみたいだし、いいかな?