第十三話「違和感」
時は少し遡り、アースがロックワームと戦闘をしている時間帯。
チャール達、勇者パーティーは新たな仲間であるクリントとの連携を確かめるために闇のダンジョン周辺に生息する魔物と戦闘を繰り広げていた。
闇のダンジョン周辺には、闇のダンジョンから漏れ出た瘴気の影響で凶暴化した魔物達で溢れかえっている。
並みの戦闘力では、苦戦を強いられるだろう。だが、チャール達は余裕で倒していたため、今回も余裕だろうと赴いたのだが……。
「くっ!? な、なんだ……なんだこの体の違和感は!」
いつものように魔物を倒そうとしているチャールだったが、体に違和感を感じていた。ティナがいなくなり、自分自身で強化魔法をかけた。
ティナが使っていた〈ブースト〉より上の強化魔法〈ハイブースト〉をだ。
本来ならば、ティナの時よりも格段に動きがよくなっているはずだ。
だというのに……。
「なんで!!」
「お、おい! 本当に〈ハイブースト〉をかけてるのか? チャール!!」
仲間のマーシャとブライも〈ハイブースト〉をかけてもらっているが、チャール同様いつもより動きが悪いことに違和感を感じていた。
「かけてるっての!! おらぁ!!!」
仲間の言い分を聞きながらも、チャールは魔物へ向けて剣を振るう。
違和感がありながらも、魔物は倒せた。
しかし、いつも以上に苦戦を強いられたことにもやもやした気持ちになる。
「さ、さすが勇者パーティーですね。僕の出番はなかったなぁ」
そんな中、新しく仲間に加わったばかりのクリントだけは、呑気にチャール達を褒める。無理もない。クリントは、初めて彼らの動きを見たのだから。
違和感、など感じるはずもない。
「……」
しかし、そんな中で一人だけ、違和感についての答えを知っている者が居た。
(やっぱり、ティナちゃんの強化魔法は普通じゃない)
聖女シャルだった。
彼女も、チャールから〈ハイブースト〉をかけてもらったが、ティナから〈ブースト〉をかけてもらった時よりも格段に動きが悪いと感じた。
剣の勇者だから、魔法が本職より不得意だから、という理由では片付けられないほどに。
「チャールさん」
「な、なんだ? シャル」
「あなたも違和感を感じているはずです。明らかに動きが悪かったことに」
明らかに苛立っているチャールは、シャルの言葉に更に苛立つが、ぐっと堪えそっぽを向く。
「し、知らねぇよ。た、たまたまだ!」
「そ、そうよ!」
「今までは下級の〈ブースト〉ばかりかけられてたからな。上級の〈ハイブースト〉の強化に体が合ってなかっただけだろ」
「そ、それよ!!」
そうだ、そうだと自分達に言い聞かせ、チャール達は次なる敵を求めて奥へと進んで行く。
「クリント! 何してる! 早く来い! 今回は、お前の力を見るためなんだぞ!!」
「は、はい! すぐ行きます!!」
そんな彼らの態度を、姿を見て、シャルは目を細めた。