第十話「ゴブリン討伐途中にトラブル?」
「グギャ!」
「ひっ!?」
洞窟に入ってすぐのことだった。暗闇から一体のゴブリンが飛び掛かって来た。
しかし、それをロウガは微動だにすることもなく右腕に鉤爪を生成し切り裂いた。
「さっそく襲い掛かって来たか」
「うぅ……」
ふるふると震えながら僕にくっついているティナを宥めながら警戒心を高める。
「ロウガ。その調子で頼んだよ」
僕が言うと、ロウガはこくりと頷く。
「ティナ。怖かったら、このままでいいからね」
「あ、ありがと……」
こうして、僕達は洞窟内を進む。
途中途中で、ゴブリンが襲い掛かってくるも、ロウガはそれを容易に倒してしまう。しかも、ロウガの視界はかなり広い。
頭に流れ込んできた情報によれば、生体センサーというものが備わっているらしく、周囲に居る生命体を視界に納めることなく感知することができるとのこと。それにより、たとえ背後から襲ってこようとも誰よりも早く反応できる。
しかも、だ。
「うわ!? う、腕が」
「腕が飛んだ!?」
両腕を切り離し、飛ばすことができる。
飛ばした腕は、エネルギーを噴出し、ちゃんとロウガのところへ戻ってくる。これである程度の遠距離にも対応できる。
とはいえ、腕を飛ばすのには貯蓄されたエネルギーを噴出するため消費が激しい。
多様は避けたほうが良いだろう。
「これで、十体目か」
「確か、情報ではゴブリンは十五体以上は居たのよね?」
ゴブリンを倒しながら、洞窟を進んで行く僕達。
苦戦する場面もなく、十体のゴブリンを倒した。洞窟は、そこまで深いというわけじゃない。そろそろ行き止まりに辿り着くはずだ。
「そう聞いてる。でも、魔物は魔素があればいくらでも増える。だから、報告以上の数になっている可能性も」
「ほんと、魔物って厄介よね……」
世界に魔素が満ちている今。こうしてゴブリン達を討伐したとしても、いつかはまた新たな魔物が生まれる。とはいえ、放置するのもだめだ。
一時的とはいえ、安全を確保しなければならない。
「ロウガのエネルギー残量は……まだ大丈夫みたいだ」
ここまでそれなりにエネルギーを減らしたが、その前にティナが〈ブースト〉をかけた。ロウガはマックスまでエネルギーを補給すると、一日中動けるようだ。
まあ、それはあくまで戦闘をしなければの話だが。今回のようにエネルギーを激しく消費する行動をとればそれなりに停止が早まる。
マックスが100だったとしたら、今現在のエネルギー残量は85と言ったところ。
「早いところ、ゴブリン達を倒して洞窟を出るわよ! いけー! ロウガ!!」
ティナのようにゴブリンが嫌だから、というわけじゃないけど。いつまでも、薄暗くこんな狭いところに居ると気が滅入ってしまう。しかも、いつどこから魔物が襲ってくるか、という不安もある。
僕も早く日の光を浴びたい。
そう思いながら更に奥へ進んで行くと。
「ここは」
今までずっと人がようやく三人並んで歩けるほどの道だった。それが、急に広々とした空間へ辿り着いた。天井も高く、軽く数百人は並べるほどに。
それだけじゃない。なんだか壁の至る所に穴が空いている。
「ロウガ?」
何か嫌な予感がする。そう思った瞬間、ロウガも生体センサーで何かを感知したようで初めて身構えた。
「な、なに? 何が来るの?」
僕達の反応を見てティナも警戒心を高める。
刹那。
ゴゴゴゴ……と地鳴りのようなものが、洞窟中に響く。
「来る!」
天井を突き破り、巨大な魔物が現れた。
「ギギイイイイッ!!!」
「あ、あれは……ロックワーム!?」
数えきれない鋭い牙を剥き出しにし、奇声を上げる岩肌の幼虫のような魔物。
よく見ると、数体のゴブリンが無残な姿で牙に突き刺さっていた。