第九話「魔物討伐で洞窟へ」
シャルと別れた後、僕とティナは冒険者ギルドで薬草採取の依頼の報告をし、次なる依頼を受注した。
僕が新たに召喚したロウガの戦力チェックのために、魔物討伐の依頼を。
これから冒険者として活動をしていくうえで、召喚士として、ロウガのことをもっとよく知る必要がある。
僕が受注したのは、ゴブリンの討伐。
ティランズから南にずっと向かったところに洞窟がある。そこにゴブリンが溢れかえっているとのこと。
調査員が確認しただけでも、十数体は居るらしい。
ゴブリンは、一体ずつならばそこまでの脅威ではない。しかし、集団で、更に場所が悪いと途端に脅威度が増す。
今回のようなケースのように。
下級冒険者の依頼だが、その中でも難しい部類だ。
「うぅ……ゴブリンかぁ。私、あいつら嫌いなのよね」
ティナはロウガの頭の上で深いため息を漏らす。
「ロウガ。ちゃんと私達を護ってよね?」
そう言いながら、ロウガの頭を撫でる。
ロウガは何も反応を示さないが、大丈夫だろう。僕はそう思う。
「ごめん、ティナ。もし無理だったら」
「なに馬鹿言ってるのよ。確かに、ゴブリンのことは嫌いだけど。私だって、アースの仲間なんだから! それに、私の〈ブースト〉がなかったら、ロウガだって大変でしょ?」
など強がっているけど、声が震えている。
「ははは。確かに」
「ふふん! でしょ? アースもロウガも、私が居ないとダメダメなんだから!」
こうして、僕達は目的地である洞窟まで他愛のない話が続いた。
目的地の洞窟に着いたのは、大体三十分ほどかかった。
「ここだ」
洞窟に辿り着いた僕達は、まず出入り口付近を見渡した。
「そ、外には居ないみたいね」
ひょこっと、ロウガの後ろから顔を覗かせながらティナは言う。彼女の言う通り、洞窟の外にはゴブリン達はいないようだ。
今は、だけど。
「けど、ついさっきまで外には出ていたようだね」
出入り口付近の地面を見ると、複数の足跡が残っていた。まだ新しい。外で何かをした後、洞窟へ戻っていったんだろう。
「……」
「ティナ」
「だ、大丈夫よ。行きましょう!」
ロウガが先頭で、僕がその後ろ。ティナは真ん中という隊列で洞窟へと入っていく。
「わっ!? ろ、ロウガが」
すると、ロウガのエネルギー結晶部分が輝きだした。ちなみに、ロウガのエネルギー結晶は、胸、両手、両足についており、いい具合に光量で洞窟内を照らしている。
「どうやら、これは必要ないようだね」
洞窟の暗闇を照らすために持ってきた魔力ランプを背負っていたバックに取りつける。中に魔石が入っていて、魔力を注ぐことで明かりを灯す道具だ。
装着する魔石の大きさによって光量が変わるようになっている。
とはいえ、戦闘が始まったら、ロウガが離れる。
その時のためにいつでも使えるよう準備はしておこう。