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「こんにちは魔王ちゃん! 今日も良い天気だね!」
「・・・それ嫌味?」
またしても突然として玉座の出現して満面の笑顔を向ける人間の男、勇者に魔王は汚物を見るような視線を向ける。
「おぉ・・その鋭い視線! クセになる!!」
「キモイ、クサい、ムカつく、死ね」
「暴言ありがとうございます!!」
「・・・」
頭痛がする。
この勇者が私の前に現れるようになってから特にひどい。
何を言ってもポジティブに捉える勇者に私は嫌悪感を拭えないでいた。
「ところで、さっきの事の返答だけど」
「なに? キモイのこと?」
「それは撤回してくれると嬉しいな~」
「安心して? 絶・対! ――にしない」
「わぁ、初めて君の笑顔が見れて嬉しいな~。 今度は殺意なしでお願いします! じゃなくて」
「・・あぁ、嫌味の所?」
「そうそう。 別に嫌味で天気いいとか言ったわけじゃないからね? 今日は本当に雲一つない良い天気なんですよ。 だからデートしない?」
「デートはしない・・けど、そう。 今日は良い天気なのね」
玉座の間にある窓を眺めると、そこにはゴロゴロと鳴る雷と真っ黒な雲が空を覆っていた。
「魔界は一年中真っ黒な雲で空を覆われている。 そのせいで土地も水も衛生面が保てず狂暴化する同族や魔獣共が増殖するばかり。 それを知った上でそんな挨拶をしてくるのだから嫌味と捉えてもおかしくないんじゃない?」
「・・・その通りだな。 申し訳ない。 こちらの配慮が足りなかった」
勇者は珍しくも落ち込んだ表情を向けて深々と頭を下げる。
「別にいいわよ。 それよりもキモイから早く帰って。 仕事の邪魔」
「ひどいな~。 デート誘いにきたのに~」
「行かないって言ってるでしょ。 本当に邪魔だからここで殺されるか消えるかして」
「ううう。 悲しい・・・ボクはただ魔王ちゃんとデートしたかっただけなのに・・・」
「・・・・はぁぁぁぁ鬱陶しいわねメソメソと。 じゃあ今日中の仕事を終わらしてくれるならデートの1つでもやってもいいわ」
「マジで!? よっしゃあああああ! 何でも来いやぁぁぁあああッ!!!」
「うるさ・・じゃあそうねぇ・・・」
この日、勇者は二度目となる魔王の笑顔を見る事となる。
その笑顔は勿論、別の側面を含めた笑みではあるが勇者はそんな事微塵も気にしていない。