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海を越えた梢の花とウィルバートン家の呪い  作者: 高台苺苺
第一章 梢の花は海を越えて富豪と家出
46/90

第46話 追記:ちょっと先の話し 

少し先の、パパとママになった二人が第1章の時期を思い出している会話です。

相変わらずの二人と、アーネスト奢りのディナーはどうなるのでしょうか?


次は、結婚式騒動の話しです。


 すやすや眠る子供達の寝顔を幸せそうに見ながら、由華里は一人一人にキスをしていく。

 

 この子達も何時かは大きくなって、好きな人を見つけて大恋愛をして…幸せな家庭を築いていくのねと感慨深げに思いながら。


「由華里さん、いい加減貴女も寝ないと、お腹の子供にも触りますよ?」


 アーネストの声に由華里はハイハイと言いながら、子供部屋の電気をそれぞれ消しながら、自分達の寝室の方に戻って行った。大きなお腹を押さえながら。その様子を寝室の方から見守っていたアーネストは、ハラハラとしたように駆け寄った。


「走らないで!今日も何度もマーク達に叫ばれたじゃないですか!貴方は一体何人産んだらその言葉を分かってくださるんですか?」


「もう!大丈夫だから!転んだりしないわよ?」


「転ぶのも心配ですが、貴女は出産で2回死にかけたんです。忘れたのですか?」


「しつこいわねえ!今回は順調だって!Dr達も言っているじゃない!木暮のそういうギャアギャア五月蠅いのが、一番ストレスなの!ねえ?」


 そう優しく由華里はお腹の子供に話しかけ、お腹を愛おしげに撫でる。そして、にっこり笑ってアーネストを見上げて微笑む。


「それに約束したじゃない?私は死なないわよって?事実、何度も死に掛けたけど死ななかったわよ?ね?」


「ええ、ええ、貴女の運の強さには本当に感服します。しますが!何度も言いますが!2回!出産で死に掛けたんですよ!?こちらの心配も考慮してください!」


「してるわよ!だからこうして今回も大人しく屋敷にいるんじゃない。本当はちょっとヴァルストフルスランに…」


「何かいいましかた?」


「…言わないわよ。ちょっと息抜きに海外いきたいなーと」


「由華里さん!!」


 あはははははと由華里はおかしそうに笑い、アーネストの首に抱き着いた。


「木暮は何年経っても心配性ねぇ?私は大丈夫だから。この子も絶対無事に産んで見せるから、安心して」


 はあ…とアーネストは嘆息し、由華里を優しく抱き寄せるとベットに押しこんだ。


「ねえねえ、さっき子供達の寝顔を見ながら思い出していたんだけど…あのね?木暮はあの時、ホントは私を自由にしただのなんだの言っていたけど、あれ、ウソでしょ?」


 由華里の横で、アーネストは「は?」と怪訝な顔をし、「ああ!」とおかしそうに笑った。


「ウソではありません。本当に貴女を自由にしてさしあげたんですよ」


「でも、ウィル達の婚約発表とかあり得ないスピードだったじゃない?もしも私がOKしなかったらどーするつもりだったの?」


「言いましたよ?彼等は私の優秀なブレーンなのだと。彼等はあの時点で勝算ありと踏んで計画を進めたのでしょう」


「木暮はホントに知らなかったの?」


「確かに貴女と出会って直ぐに、貴女をアメリカに連れて行く手筈、婚約発表などの準備の指示は出していました。ですが、帰国前日の件で…全てキャンセルの指示していましたから。あれは完璧に彼等のスタンドプレーです」


「ふーん」


 ちらりとアーネストは疑わしげに自分を見る由華里を見た。


「疑っていますね」


「うん。木暮ってば策士でうそつきじゃない」


「随分な言い様ですね」


「事実でしょ?」


「反論はしません」


「ほらね!」


「でも、あの時は…本当に貴女の幸せの為に…貴女の手を離したのですよ。私とこうしてウィルバートンの名を背負い、いらぬ苦しみの中で生きるより…ごく普通の女性としての幸せの中で生きるのが…貴女の幸せだと思った。この世界は貴女の笑顔を瞬く間に消すことが怖かった。ですが…」


「ですが?」


 アーネストはおかしそうに笑うと、ポンポンと由華里の背中を叩いて上掛けを肩の上まで掛ける。


「体に障りますから、話しはまた次回にしましょう」


 すっと上掛けから手を伸ばして、由華里はアーネストの耳を掴んで引っ張った。


「いいなさいよ」


「何をですか?」


「言い掛けた事。ですが、何?本当はやっぱり私を自由にするつもりなんか無かったんじゃないの?」


 暫し無言が続き、二人は薄い闇の中で見つめあっていた。


「由華里さん」


「なあに?」


「貴女が絡む理由はなんですか?」


 由華里は少し目を逸らして薄い闇が広がる窓を見上げた。


「なんだろう?きっとまた何か引っかかっているのね」


「ややこしい事になる前に、言って下さい」


「うーん…そうね…多分、もしもあの時アニカが迎えに来なかったら、木暮はホントに私を置いてアメリカに帰っちゃったのかな?とか。誰かが動いてくれなければ動かない程、そんな程度だったのかな?とか」


「何がです?」


「…あの時、私を自由にだのなんだの体裁のいいこと言っていたけど、それくらいで諦めちゃう程度の物だったのね~~私との結婚~とかね」


 由華里はむっつりとしている。やれやれとアーネストは苦笑した。


「いいでしょう。ではまず。一つ訂正をしておきます。帰国前夜までは確かに私は貴女の幸せの為に、貴女との結婚を諦める事にしました。貴女がウィルバートンの名に殺されるくらいなら、どこかで生きていてほしいと願ったのも事実です」


「うん」


「ですが、翌朝には考えを改めました」


「え?」


「確かに貴女が仰る通りに私は貴女を妻にする為に、貴女を進退窮まらない状態に追い込んで、結婚にOKを言わせる為にも様々な策略を巡らしていました。なにせ貴女は、全く私の気持どころか自分の気持にすら気づこうともしない、超が付く以上の鈍感と言うかなんというか。ですから、色々と四方から堀を埋める為に手を回していました。帰国前日にキャスーン叔母様が来日したのもそれです」


「はいっ?」


「キャスーン叔母様はウィルバートン存続の為にも私を早く結婚させたがっていましたからね。ですから大喜びで援護射撃に来日して下さると踏んでいました」


「キャスーン叔母様はアンナとの結婚を本当は望んでいたんじゃないの?」


 アーネストの眉間にぴきっと皺が寄った。


「アンナの事は全くあり得ない次元の話だと!今!ここで!もう一度ねちねち説教しましょうか?」


「ごめん」


「とにかく、翌朝、私は自分の考えを改めました。この私が一目ぼれした相手ですよ?そして見境なく貴女を、しかも鈍感で全くこちらの気持を無視する貴女を手に入れる為に馬鹿みたいに躍起になったのですよ?この私がです!!私の判断能力は常に間違ってはいない。ならば貴女の存在はウィルバートンの為にも必ず有益となると思ったからです」


「なんですって!?」


「話を最後まで聞きなさい。大体、貴女が私以外の男と幸せになれる将来を想像することができなかった。貴女は私の側に居てこそ、輝き幸せになれるのだと悟ったのです。ただの平凡な男に貴女を幸せになどできる筈もない!」


「すっごい自信過剰!!」


「黙って聞きなさい。とにかく私は自分の考えの浅はかさを反省し、直ぐに実行に移しました。貴方が梃子でも自分の気持に気付こうとせずに動かないのであれば、貴女が動くように仕向けるだけ。ですから当初の目的通りに事を進ませるつもりでいました」


「え?」


「何の為に貴女を私のホテルに連れて来たと思うのです?何の為に貴女を散々公式の場に連れ回したと思っているのです。その手の写真なら腐る程手元にあった。ですがあの時点で既に帰国が決まっていましたからね。まあ多少のタイムロスはあろうが、遅くは無い。帰国してから現状を整理して確実にその情報を流せばいい。それで?その情報が流れた後に、誰が?貴女と?結婚したいとなどと言い出す度胸のある奴がいますでしょうか?」


 由華里は暫く考えて言った。そんな馬鹿、一人しかいない。


「…田口さんがいる」


 途端にアーネストの眉間に皺が寄った。


「……よくもその名前を私の前で出しましたね?」


 ちゃっ!とアーネストは携帯を取り出すとどこかにコールしだした。


「なにするの!?」


 起き上がり携帯を取り上げようとする由華里を押さえつけて、アーネストは淡々と田口崇史の近況を情報課から聞き取りきった。


「しつこい!!まだ田口さんをどーこーしようとか思っているの!?エジプトの件で彼を徹底的に更迭したんじゃないの!?」


「彼は全然堪えていないし理解していません。貴女が彼の名前を出すと言う事は、なんらかの前触れであることが多い。不愉快な事は早急に手を打つに限ります。その名は二度と出さないでください」


「執念深い!」


「そうですよ?私は執念深く嫉妬深くあきらめが悪い」


「うわ~~~私、やっぱりとんでもない男と結婚しちゃったんだわ!!」


「そのとんでもない男と結婚してもう10年になりますし、子供も何人いると思っているのです」


 アーネストは由華里を抱き寄せ、大きなお腹に優しく手を添えた。もう臨月に入るそのお腹は暖かな鼓動に満ちている。由華里も手を添え、優しく微笑んだ。


「私、結構、産んだわよね?ウィルバートン家のギネスに乗っちゃうくらい産んでない?」


「そうですね…確かに貴女は多産の身体なのでしょうが…まあ…私との相性もいいのでしょうよ」


 自信満々で言うアーネストに、由華里は良く言うわ!とおかしそうに笑う。


「2回死にかけたけどね」


「そうです!ですから今回も順調だからとたかをくくっていないで、きちんとDrやラーナやマーサ達の言う事を聞いていないと!コンスタンスを産んだ時の様な事はもう懲り懲りです!」


「あれは少し特殊だったとDr達も言っていたじゃない」


「今回もそうでないとは言い切れない!」


「心配性なんだから」


「何とでもいいなさい。とにかくあんな思いは二度とゴメンです。」


「でもこの間の出産は物凄くスムーズだったわよ」


「それこそ、あれは特殊じゃないですか!」


「今回もいい感じだと思うの」


「その自信はどこから来るのですか?」


「カン?」


「はあ?」


「木暮と初めて会った時も、貴方の後ろにある得体の知れないモノがものすごーーーく怖かったけど、でも平気なきがしたから結婚したんじゃない、私。それとおんなじ。今回も大丈夫な気がする」


「その言葉!今までの出産で毎回言っていますよ!?」


「そお?」


「そうです!とにかく今夜は寝なさい!!でないと、明日の健診でDr達から外出許可を貰えませんよ?いいんですか?」


 それはイヤだと渋々由華里は目を閉じた。静かになった由華里の横顔を見て、ヤレヤレとアーネストも布団の中に身体をおさめた。


「あのね」


「寝なさい!!」


「私達、何の話をしていたんだっけ?」


 はああああああ…とアーネストは深くため息を着くと、いきなり由華里を抱き寄せて深いキスをした。そのキスに面食らいバタバタしているうちにのぼせ上った由華里は、くらくらと目を閉じた。やっと大人しくなった由華里のお腹を気遣いながら抱き寄せ、アーネストは優しく言った。


「初めて出会った時から、私は貴女に夢中だと言う話しですよ」


 そして二人は可笑しそうに笑いあいながら目を閉じた。







「…そういえば思い出しました…」


「え?寝るんじゃないの?木暮?」


「私の奢りのディナーが、まだでしたね」


 はあああ…と、今度は由華里が深いため息を着いた。


「やっぱりそれ!一生!言う気なんじゃない!!!」



 End



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