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海を越えた梢の花とウィルバートン家の呪い  作者: 高台苺苺
第一章 梢の花は海を越えて富豪と家出
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第4話 美女と対峙

 由華里のマフィア発言にゲラゲラ笑うアニカ達に由華里は怒り心頭で「失礼だわ!!」と怒った。


 途端に、アニカ達ががきりっとした真面目な顔になり、笑ったことを一斉に謝罪。

 そして、先程とは打って変わって真面目な態度で由華里に発言を否定した。


『あなたは物凄い勘違いをされています。彼は一企業家で、マフイアでも変態でもありません』


 突然のドイツ語で喋るアニカに、由華里はびっくりした。

 何故いきなりドイツ語?ドイツ語圏の方なのかしら?

 戸惑いながも、慌ててドイツ語を頭の中で総動員して返答する。


『ええっと…その一企業家が、なぜ?私をここに拘束するの?』


『それは、彼が貴女を気に入ったからですわ。間違いなく!』


『は?』


 ぞっとしたように腕で身を守るように絡めて言う由華里に、今度は慌てて英語で否定してきた


『いえいえい違います。また真勘違いしています。そういう意味でなく、人格的、性格的に気に入ったということです。我々は彼があんなに楽しそうにされているのを初めて見ましたから。

 それと!先に言っておきますが、私達は完璧なる雇用関係ですので、その点も!誤解されませんように』


 きりっと言うアニカに由華里は目を瞬いた。


『気に入った?私達、車内で喧嘩ばかりしていたけど?』


 あり得ないと苦笑する由華里に、アニカは目を輝かせた。


『彼と喧嘩をしていたのですか!?まあ!!素晴らしいじゃないですか!』


「は?」


 思わず素で日本語で返した由華里とアニカの間に微妙な空気が流れた。


 喧嘩が素晴らしい?聞き間違い?


 それとも自分のドイツ語が変だったのかしら?


 首をかしげながら、由華里は疑問を問う。


『私達は数時間前に出会ったばかりです。話も喧嘩ばかりで、木暮さんがアメリカ人で、O市の知人を訪ねた後で、道に迷ったとかそのくらいですよ?

 私も名前と父の勤務先を喋ったくらいです。なのに!!何故、彼は私の家族構成に動向まで把握しているのです?変じゃない!おかしいわよ!」


『そうでしょうか?』

 と、アニカは銀糸のボブを美しく傾げた。

 そして、白い革のトートバックからタブレットを取り出すと、ぱぱぱぱぱ!と操作して、由華里の前に出した。そこには由華里の父親のネット上のデーターが羅列されていた。


―今の時代は情報収集が常識です。


 フランス語!?この人、今度はフランス語を話している!?


 由華里はフランス語を喋るアニカに仰天した顔を上げた。何故また言語を変えたの!?

 愕然とした顔を上げる由華里に、何か?と、にこにこ笑うアニカに、はあと嘆息してフランス語を頭の中で総動員した。


―なんでもないです。続けてください。


―ありがとうございます。続けます。

 あなたのお名前がユカリ・ヒラノ。お父様の勤務先がM商社。ネットに検索をかければ直ぐに平野泰蔵専務にたどり着けます。平野専務は著名な方ですからね。

 あなたの事はネット上ではヒットしませんでしたが、国内外で平野専務の秘書の一人として同行されている写真等が多数でてきました。


 由華里は仰天した。

 確かに父の後ろで控える自分の写真が数枚、画像で羅列されていた。


―ええええ!何これ!


―納得いただけましたか?


―ええ…父と私は…。でも!!母は?母が今日歌舞伎座に行っているのはどうして知り得たの?


 アニカはまたぱぱぱぱとタブレットを操作し、由華里に渡した。


―これ!!高畑さんのSNS!?


 華代の友人である高畑恵子のSNSに、華代を含める友人達の様々な写真とともに、歌舞伎座で観劇を楽しむ様子がUPされていた。


―そうです。お母様の名前は平野泰蔵氏の検索で同時に出ます。そのお名前を検索した結果、この方のSNSがでました。意外と自分以外のSNSで自分の行動が晒されている事は多いんですよ?

 ですので、我グループでも仕事関係上のSNS情報は公式以外は禁止です。


―うちの…いえ、父の会社もそうです。規則としては認識していましてけど、こうしてみると禁止されるを実感しました。まさか…こんな風に母の行動が知れてしまうなんて、驚きだわ。


―相手に悪意はなくとも、情報を利用する側に悪意があれば、公開されている情報をどう利用されるかのリスクを考えねばなりませんからね。と、言うことでご理解いただけましたでしょうか?


 由華里は頷いた。納得できる。


―アニカ・オーウエンさんは優秀な秘書なんですね。


 はて?と、アニカはまた銀糸のボブを美しく傾げた。


―私は秘書ではありません。ブレーンです。

―ブレーン?

―ええ。わが企業は彼をトップにして、私を含めた4人のブレーンがいます。それぞれが専門分野と言うか得意分野を担当しており、その下に更に部下に当たる者達、部署がありという構造でしょうか?もっと詳しく話すと長くなりますが?


―あはははは。ありがとう。とにかく木暮さんは随分と大きな企業を経営されているということね?凄いですね。


―ありがとうございます。ところで、そろそろもう名前で呼び合いませんか?

―は?


 由華里はぽかんとした。唐突すぎる。

 なんだか母親の華代に似ている強引さだなと苦笑し、まあいいかと由華里は思った。

 だって、アニカは好きなタイプだ。一緒にいて居心地のオーラの人はそうそういない。言語をころころ変える変な癖があるけど、今のところは対応できるから問題ないし。


 由華里はにこりと輝く笑顔を向けて頷いた。


―ありがとう。では、私の事は由華里で。

―嬉しいです!!日本での友人第一号です!私はアニカで!!


 ぱああああ!とまるで輝くダイヤモンドのようにアニカが笑い、その眩しさに由華里は目を瞬いた。


 眩しい…。


『では由華里!アー…木暮様がお戻りになるまで色々お話しましょう!!ああ!その前に、先ほどのご友人の話云々ですけど…本日のご予定は?』


 由華里は紅茶を吹き出しそうになった。

 今度はイタリア語だ!!何故イタリア語!!?


『アニカ…悪いけど…私はイタリア語は不得意なの…』


 アニカはにっこりと笑う。


『私もです』


『うそばっかり。言語習得が得意なんですね。何語喋れるんですか』

 

 指折り数えてアニカは5と、指を広げた。


『スウエーデン語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語です!日本語も由華里と友人になりましたので勉強しますわ』


『凄いわね。木暮さんもそれくらい喋れるの?』


 アニカは少し考え頷いた。


―ええ。5~6か国語は話せますね。日本語は得意ですよ。恩人で友人の方が日本人でお一人いるので。ところで、今日の予定です。予定はないのですよね?


 会話言語が英語に戻り、由華里はほっとした。


―ハイハイ。そうです。友人の話は嘘というかカモフラージュです。

―何故?


―話せば長いけど、そういう理由をつけないと、家を簡単には出れないからです。

―まさか家出?


 由華里はうーんと唸る。


―自分的には自立です。両親は私を自立させる気は全くないのですけど、私は自立して一人で生活をしてみたいの。もうアパートメントは契約してあるし、職場も決まっているの。


―用意周到ですね。で?今日はそのアパートメントに?


―いいえ。アパートメントは明後日からの契約なの。タイミング的に今日家を出るのがベストだったので勢いででてきたから、今日は駅の反対側にあるビジネスホテルに宿泊する予定です。7時までにチェックインすればいいので…そうね6時半くらいまでは、お喋りにお付き合いできますよ。木暮さんの帰宅までは待てないけど。


―まあ!!嬉しいです!


 そういうことで、出会ってすぐの二人は意気投合し、楽しく他愛ないお喋りを始めた。

 なんだかおかしな事になったなあと、由華里は苦笑しながら。

何時の間にかアニカペースに巻き込まれ、アニカと意気投合している由華里。アニカはさりげない(?)会話の中で由華里の能力を推し量ります。危機感ゼロの由華里がペラペラプライベートを喋りまくりでアニカは情報たっぷりでにんまりです。楽しんでいたただけると嬉しいです!

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