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海を越えた梢の花とウィルバートン家の呪い  作者: 高台苺苺
第一章 梢の花は海を越えて富豪と家出
28/90

第28話 無謀の代償

 契約をしたアパートメントを少しみたくて、タクシーでホテル傍から移動したが、意外と近いことがわかった。


 そして怪我をしてわかったが、意外とここは余裕のある作りのエントランスで、エレベーターホールまでの動線が楽なアタリの建物だった。


 手入れと掃除の行き届いたエレベータに乗り込み、部屋のある10階を押す。とても順調で鼻歌が出る。


 エレベーターを降り、自分の部屋までよいしょよいしょと歩く。

 こげ茶色のそこそこのデザインのドアの前に立ち、昨日貰った真新しい鍵を差し込み回す。


 ガチン!


「あれっ?」


 反対に回す。


 ガチッ!!


 開かない????


 しばし由華里は考え込み、直ぐに昨日の不動産屋の担当者に電話を掛けた。だが、担当者は別件で対応中で出れないとのことで、その電話に出た者が対応した。


 名前を告げ、契約物件名を告げ、鍵が開かない事を伝えると、暫くして彼女は怪訝な声で言った。


―そちらのお部屋は今日の午前中に御解約をなされましたよね?


「えっ!?」


―違約金として3年分の家賃相当分までお支払いただき、レンタル家具のキャンセル料、鍵の修正代もお支払していただきましたが?


 由華里は一瞬、頭の中が真っ白になった。


「え?何のことですか??誰がそんな事をしたのですか?」


 由華里の間の抜けた問いに、由華里以上に訝しむ声で受付女性は言う。


―平野 由華里様、御本人です。間違いなくご本人がご来店されて手続きをなされました。


 私!?


「いつの話しですか!?」


―ですから・・・今日の午前・・・10時頃です。覚えていらっしゃらないのですか?


 10時!?

 その頃は疲れ果ててまだぐっすりと寝ていた時間じゃない!?もしくは起きた頃!?

 え!?解約に来たと言う私は誰!?


 由華里の脳裏に涼やかな顔で笑う木暮雅人の顔が浮かんだ。


 まさか!?


「それ!来たのはプラチナブロンドの凄い美人の白人女性じゃありませんか?」


―はあ??あの…平野様は…日本人でいらっしゃいますよね?いらしたのは日本人女性ですけど…。

 あの…先ほどから変なご質問ばかりですが…失礼ですけど、あなたはどちら様ですか?


 不動産屋の女性はもう一度今日の経緯を話し、これ以上変な電話を続けるなら…と、脅し的な文言を言い出した。

 確かにこの状況では由華里が変なクレーマーと化している。

 これ以上話も情報を聞き出すのも無理だと判断し、不承不承、由華里は非礼を詫びて電話を切った。


 どういう事!?

 昨日の今日で解約?

 違約金?


 え?え?え??


 来たのは日本人女性?

 誰?

 まさかお母さん?


 いいえあり得ない!

 だって、お母さんもその時はホテルにいたのだから!


 ドッペルゲンガー!?バカバカしい!


 はっ!!

 まさかのお父さん?

 イヤイヤ、お父さんが知ったらこんな回りくどい事しないわよ!

 こんな回りくどい事をするのは…。


 由華里はぐっと唇を噛みしめ、支給されていた携帯電話を取り出し、そこに登録されているナンバーをコールした。


 2回鳴ってすぐに出てきた声は、非常に機嫌が悪かった。


―由華里さん!直ぐにホテルに戻りなさい!


 やっぱり監視を付けているんだ!!ばっ!と周囲を伺うが、誰もいない。

 でもきっといるんだわ!!


「木暮さん!私のマンションを解約しませんでしたか!?」


―しました。


 しらっと言う木暮に、ブチッとこめかみの何かが切れそうになった。


「なぜ!?」


―必要ないからです。


「貴方には必要なくても私にはあるわ!!」


―ありません。とにかく戻りなさい。今、そこにボディーガードの者達が向かっています!全く貴女と言う人は!ほんの少し目を離したすきに何をしているんですか!!大人しくしていると約束をしたのを、もう!忘れた…


「バカっ!」


 最大限の大声で叫んで、由華里は木暮が話している途中でブチッと切った。

 

 あり得ない!!

 全くの赤の他人が勝手に解約しただなんて!

 信じられないっ!!

 何を考えているの!あの人!?


 携帯電話が再び鳴った。2回コールで出た。


「何よっ!」


―他の不動産を回っても貴女の名前ではどこも契約をしてくれせんよ。ですから大人しく…


「大馬鹿野郎っ!!!」


 さらに大きな声で怒鳴ると、ガチッ!と切った。


 なんなのアイツ!

 一体何がしたいのか理解ができない!

 何の権利があって人のマンションを勝手に解約するの!?

 どうしてそんな事が出来るの!?


 これ、犯罪じゃない!?

 おかしい!

 あの人は絶対におかしいわ!!!



 由華里は頭を掻き毟りたい衝動を押さえて、とにかく落ち着いて考えよう!と、胸に手をあて深呼吸を数回した。


 とにかく、一度ここから移動をしないと。

 ここはもう、自分のマンションではないんだから不不法侵入になるから…

 そしてホテルに戻って…

 !!!(怒)

 どうせあいつは間違いなくホテルに戻ているはず!(怒)


 そう考えた途端に怒りの沸点がぶち切れた。


「何あいつ!何様!?絶対許さない!二三発殴らないと気が済まないわ!!!5発!顔がぼこぼこになるまで殴ってやる!」


 ゼエゼエ息を切らせ、由華里は戻るのは癪だが一端ホテルに戻り、木暮の申し開きを聞いて、即刻ここのマンションの解約を取り消させなくちゃとエレベーターホールの方に振り返った。


 視線の先、廊下を塞ぐように、見知らぬ白人の男性が灰色のパーカーを目深に被り立っていた。 

軽い気持ちで新居に来た由華里。が、速攻解約されていて愕然とします。犯人はアーネスト達。由華里の避難にも動じませんし、かえって無断外出した由華里を叱責し、慌てて回収しようとしています。ですが、時すでに遅し…。

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