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原作の本当は

とりあえず第一部の〆に持っていきます

(あれ…?)


ふとアリゼが意識を取り戻すと、木の天井が見える。

しかもなぜか、ふかふかとした上質のベットで寝ているようだった。

顔を横に傾けると、そこに居たのは──



「目が覚めたか」

何故か隣に居たのは、ヨエルだった。


「医者!医者を早く!」

そう叫ぶと、回りのメイドらしき人達がバタバタと動き出す。



「あの…ここは……?」

「王家の所有する別荘の一つだ。色々聞きたいが後にしよう。まずは診察が先だ」


ヨエルは泣きそうな顔で、アリゼの頭を撫でている。

「良かった……」と消え入りそうに呟いた声に、アリゼも泣きそうになった。



その後、医師の簡単な診察があった。

足に怪我していたが…歩きすぎによる足の肉離れとマメが潰れた程度の軽い怪我だった。

きちんと受け答えもでき、体も動き、スープなど軽い物も食べれたので異常無しとなった。

ちなみに丸一日、寝ていたらしい。



ほっと一息つくと、ヨエルとアリゼだけが部屋に残された。


「あの、ところで何故あなたが……と言うか、なぜ私はここに……」

「うーん、まずは聞きたいことが山程あるが、とりあえずあの舞踏会の夜から説明しようか」



あの夜──あの舞踏会まで話は遡る。

宰相との面会を終えた三人、ヨエル、クロビス、サロナは一緒に会場入りをしたらしい。そしてアリゼを探していたところ、具合が悪くディエゴと休んでいるという情報が入った。


その後クロビスに、会場の従者が『アリゼから』とメモを渡したらしい。

それが『体調が戻らないのでベッティーニ辺境伯の所で休む』と言うような内容だったが……それを見たクロビスは、かなり騒いだそうだ。



「これはアリゼの字じゃない!字が全く違う!」と。


(シ、シスコンが役に立った……!)

正直クロビスのシスコン具合にガッツポーズを送りたい。



その後王都のベッティーニ辺境伯屋敷に人を派遣するが、既にもぬけの殻。

どうしようかクロビスとヨエルが言い合ってると、それを見ていたサロナは、国王にこの出来事を進言。

すると国王は軍の派遣を決め、大規模な捜索が開始。あの中継地点の屋敷が怪しいと睨まれて、軍はあの屋敷に詰めかけたそう。そこで脱走劇が判明し、アリゼを捜索することになった。

そして不自然に上がる狼煙を見たその軍の捜索隊がアリゼを発見そうだ。

そして王家が所有する場所では一番近かったここに、サロナの権限もあり運び込まれた、とのことだ。



「元々ディエゴ卿はかなりマークされていたらしい。どうやら石炭をストルティーに密輸している疑惑があったらしい。これを機に強制捜査に乗りだし、ようやく明るみに出た。これは国の資源をストルティーに売り渡していたという立派な犯罪だ。

しかも今回判明したのはそれだけでない」


「何ですか?」


「ベッティーニの領地内に、ストルティー帝国のインリア制圧拠点としての場所を提供していたらしい」



驚くことに、ストルティー帝国の軍の拠点だけでなく、インリアの捕虜の収容所の場所としても土地を提供していたことが発見されたそうだ。


マキシム達がアングラード公爵領の飛び地である南の領地にたどり着いたのは、隣接するそこからの脱走だろうという推測だった。



今現在、クロビスがベッティーニの領地や屋敷に詳しいということで、軍の辺境伯領捜索に協力しているらしい。

「アリゼを見守る!」と鼻息巻いていたが、国王からの依頼はさすがに断れず、泣く泣く辺境まで行っているそうだ。



「他国の軍の拠点を許可するとはストルティーに寝返ったと同等の意味を持つ。ディエゴ卿の爵位剥奪も時間の問題かもな」

ヨエルはそう呟いた。「そもそもうちの国はインリア独立に賛成派だ」とも付け加えて。



「そうですか…」

まさかあの脂肪の塊が……とアリゼは驚いた。


なるほど。あの原作のからくりがこんなところで明かされるとは、とも。

ヨエルとクロビスの逃避行の先にあるのは──ストルティーの人質という結末で、そうなるとあの物語の先にあるものは……案外バッドエンドだったのかも知れない。



「……しかし、なぜこんな無茶をした!」


急に声を荒げたヨエルだったが──目から涙が溢れている。

あなたが無事で良かった。そう呟き、大粒の涙がとめどなく溢れている。



「あそこから逃げ出したと聞いた時、もう会えないことを覚悟していた。あの深い森の中、見つかるわけはないと思った……」


肩を震わせるヨエルは、随分と小さく見えてしまう。


──また私は、一人にさせるところだった。

アリゼはヨエルをベットに引き寄せ、ぎゅっと抱き締めた。




「あの人は、私を自分のモノにしようとしてました。本来なら油断させて隙をつけばいいでしょう。でもしたくはなかった……どうしても、一番滑稽な方法で欺きたかった。それに、あなた以外の人に………触れられたくなかったんです」


アリゼは覚悟を決めて、そっとヨエルの頬に口付けする。

そして真っ直ぐに、見つめた。


「私はあなたが好きです。一刻も早くこれを伝えたかった」


一瞬ヨエルは目を見開いたが──再び大粒の涙が頬を伝う。



「ありがとう」

そう言って今度はヨエルから──アリゼの唇に、ついばむような優しいキスが落とされた。

唇を離すと、二人は見つめ合い、微笑み合う。



「今日はここまでにしよう。ゆっくりおやすみ」


アリゼはその先を少しだけ期待してしまったが、ヨエルによって強制的にベットに寝かせられてしまう。

優しく頭を撫でられたアリゼは、ふんわりと夢見心地のまま、本当に夢の中へと入っていった。


次で一部の〆です

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