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アングラード領へ往訪

──そして一週間もしないうちに。


アリゼとクロビスは、王都に近いアングラード公爵領の屋敷を訪れていた。クロビスとヨエルが連絡を取り合い、早くも例の技術者の見学に伺えることになったらしい。

ちなみに公爵領は王都からでも日帰りできるような距離にある。



「ようこそいらっしゃいました」

屋敷の玄関で、ヨエルが二人を迎え入れた。


「ご招待いただきありがとうございます、アングラード公爵」

「クロビスこそ、ようこそお越しいただきました……アリゼ!」


クロビスに挨拶もそこそこに、ヨエルはアリゼの手を握る。


「この日をどれだけ待ち望んだことか。ようやくあなたとお会いできる」


ようやく、ってまだ数日なんですが……と突っ込みたいが、アリゼはキラキラした主人公オーラに圧倒されて何も言えない。

真っ直ぐに見つめる顔が眩しすぎる。眩しいけど……あまりにも綺麗な瞳に、釘付けになって見てしまう。



「公爵、さっさと参りましょうか?」


無理矢理二人に割り入るクロビスは、繋がれた手を引き離す。


(た、助かった……!)

とアリゼは正直安堵しているが。


「ははは、せっかちですね。では参りましょうか」

割り込まれたことにも動じず、笑顔を崩さないヨエル。

そのまま離れるかと思いきや、アリゼ髪に手を伸ばして一筋掬うと──キスを落とす。

あまりにもさりげなさすぎてポカンとした数秒後……されたことの意味を理解して、アリゼの顔は赤面していく。

いくらなんでも、堂々とやりすぎだ……!と身悶える。



「そちらに馬車を用意しておりますので、案内いたします」

ヨエルは何事も無かったような顔で二人を案内する。

赤面で放心状態のアリゼ、とその間に挟まれているのは眉間に皺を寄せたクロビス。



三者三様の表情が混じりあいカオス。

頼む、頼むから……平穏に終わりますように。

アリゼはひたすらそれだけを願うことにした。





(おお、すごい……)


アリゼが見つめるその先には、木製の機織機が整列して並べられている。

機織機の柱は天井近くまで高さがあり、大量の束ねられた糸が垂らされている。まるで部屋のような機織機だ。

そして機織機の最上部には、足踏みの音と共にグルグル回る長い紙も。

これがあの模様のパターンか、とクロビスと二人で釘付けになって見ている。


それらはリズミカルに足のペダルが踏まれると、それに呼応するように動いていく。

そして織られていく布を見ていると、ただ足で機織機を踏むという操作のみで模様が刻まれた生地ができていっている。

話には聞いていたが……この世界基準だと相当な技術力の高さが伺える。



「お二人ともいかがでしょうか?」

「「…すごいですね」」


ヨエルの問いかけに、アリゼとクロビスの返事がシンクロする。顔を見合わせて苦笑いすると、それを見たヨエルもクスリと笑った。

でもたった口角を上げるだけなのに……なんというかヨエルには主人公らしい優雅さが滲み出ている。



「これでもまだ改良途中なんですよ。 今は石炭で動くものを開発中なんです」

「石炭ですか?」

「そうです。石炭の力を利用して足踏みではなく自動で動くものを開発中なんです。今はあまり石炭の採掘が思わしくないのですか、何とか権利を駆使して確保できました」


さらっと言うが、職権乱用だよなぁと二人は苦笑い。石炭は最近確保が難しいものの一つだったりする。


「よければ開発室にご案内します。ギルベール家の皆様だけ、特別に」


そうしてクスリと笑うヨエル。

アリゼ達は案内されるまま建物を出て、隣の小さな棟まで案内された。

キリがいいところで切ったので文字数少なめです。続きます。

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