弾けたサイダー
久しぶりに、サイダーを買った。蓋を開けると、パンッと小気味良い音が弾けて消える。ぐいっと一気に流し込むと、胸の奥がチクチクと痛んでむせた。
君を色で例えるなら、青色だ。どれだけ手を伸ばしても届きそうにない、抜けるような夏空の青色。
陽の光の粒を透かしたきらきらした目と、包み込むようなあたたかい笑顔。それが向けられる度に体中を熱が駆け廻り、火照った頭がぼんやりする感覚を覚えた。
君がいつも飲んでいたサイダー。一口をねだれなくて、ふたりで乾杯して飲んだ。ひんやりと刺激的なそれを無理やり流し込んで、喉まで湧き上がった欲張りな言葉を度々胸の奥に押し込んだものだった。
浮かんできては光って弾ける思い出から、目に映る光景を手元のサイダーへと切り替える。もう一口流し込むと、胸を刺すあの刺激はいつからか弾け飛んでいた。代わりに舌にまとわりついた甘さは、どうやってもとれやしなかった。
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