第一夜・起床
翌朝、ホールの騒がしさで目が覚める。何事かと思い、階段を下りて、人混みをなす冒険者・騎士たちの中へと分け入る。
「ザカリア……さん?」
そこにあったのは、執事ザカリアの亡骸。そして、そのそばで静かにすすり泣くウェリシアの姿であった。
一体、この状況はどういうことだろうか。近くに早起きの婆さんがいたので捕まえる。
「婆さん、これ。ザカリアさんは殺されたってことでいいんだよね?」
「ナイア、口を慎みな。ここではだれが聞いてるかわからないんだ」
『誰が』?……ああ、犯人が聞いていたら次の標的にされるかもしれないってことを言いたいのか。
それならそれで、返り討ちにすればいいだけだし、探す手間が省けて助かるんだけど。
『一体だれがこんなひどいことを……』
ふわふわの毛玉が現れ、それと同時に人混みがサッと割れる。そして、わずかにひそひそと何かをささやく音が聞こえた。
曰く、あの魔獣の仕業なんじゃないのか。人間の犯行を先に疑うよりは、まずあの魔獣を疑うべきだろ。そんな言葉が静かに飛び交っていた。
なるほど。人間同士で疑いあえば、それこそダンジョン内のご法度である仲間割れのようなことになってしまいかねない、か……。
しかしふわたろうが疑われているこの現状はまずい。なんとかしなくてはならないだろう。
「みんな。その魔獣は犯人ではないよ。犯人は、人間だ」
そう言ったのは、いつのまにか事件現場の中心、すなわちザカリアの骸の近くに腰を低くし、その背中にじっくりと視線を落とす少年―――ハンスであった。




