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処刑装置

「それでは皆様がたの自己紹介と最低限のルールを共有できましたので、この屋敷の特殊性についてご説明させていただきましょう」


 ザカリアの言葉に、ナイアが聞き返す。


「特殊性?」


「はい、大広間にございます、石板がはめられた台座に書かれていたことですが、わたくしの口から簡潔にご説明いたします。この屋敷は、ダンジョンの一部として、とある機能を有しております。」


 もったいぶるザカリアの二の句を待つ一同。


「その機能、というのが、次の階層への扉という役割であるようです。先ほども申し上げましたが、その詳しい説明は、先ほど皆さまがたが通られた大広間の中心にございます、台座に刻まれております。」


 そうして動き出し、廊下への扉の前でこちらへ、と手でジェスチャーするザカリア。どうやら全員をより分かり易いように台座の方へ案内し、説明を行いたいようだった。


 一同は説明を受けるため、大広間へ足を運ぶ。相変わらず冒険者たちはホールの奥の方で談笑しているようだ。談笑しながらもこちらの方に意識を向けているのは、さすがの情報収集への姿勢というべきだろうか。


ナイアは視界の端、もっと詳しく言えば天井の方に何やら黒いものを見つけ、違和感と共に天井へ視線を向ける。


大広間の中央にある台座の天井からは、黒く、それでいて光沢のある何かが天井絵の中から突き出している。あまりにも場違いで、神話を題材にしたものであろう荘厳な天井絵とはミスマッチなそれ。


しかし、不思議なことに、天井絵の方はその、よく見れば真ん中の窪んだ筒のような突起の存在を脅かす意図はないと言わんばかりに、わざわざそれとの境界の部分にだけ模様で隔たりを作っている。


そればかりか、羽の生えた幼い人の姿をした存在━━━天使たちが、まるで天井絵の中心にある、その漆黒の突起の方を向きながら、あまつさえそれに笑顔で手のひらを向けている。まるでそれを讃えるかのように、まるでそれが彼らにとっての神であるかのように。


しかし、ナイアが注目する天井の黒い突起物への言及はないままに、天井とは逆の地面側の台座━━━それにに手を向けて、これが何であるのかを示そうと口を開く執事ザカリア。


「こちらの台座が魔道具【公平なる裁定】でございます。起動後、それぞれの客間にございます水晶にて登録を行ってもらい、全部で五組のチームが出そろいましたところで、ゲームが開始される、そういうふうに台座には書かれておりますね。」


「ゲーム?」


間髪入れず、ナイアがそう尋ねる。


「はい。こちらのゲームに勝利したチームは、次の階層へと進む権利を与えられる。そういったことが書かれております。」


「なるほど。ゲームに勝利すると、次の階層へ行ける。そして、その資格は勝ち残った1チームにしか与えられない……」


 冒険者たちの中で、もっとも存在感のある男がずいと前に出てきて、そうこぼした。おそらく冒険者グループのリーダー的存在だろう。今の今までずっと静かに奥の方で耳をそばだてていたのが、いきなり話に混ざろうとは、どういった風の吹き回しだろうか。


それに、その表情は苦虫をかみつぶしたようなものであり、ナイアにはなぜ今の話でそういう顔をするのか理解できなかった。


「━━━━なんとも悪趣味で、残酷な……ダンジョンらしい」


 もうひとり、何かを察したらしいハンスが物憂げな表情でそう(こぼ)す。


 それを見て、婆さんも何かに気が付いたようだ。空気が張り詰めるのを感じ、遠巻きにこちらを見ていた騎士風の集団たちも談笑をやめ、鋭い視線をこちらに向けていた。


 ナイアはいまいち分からなかったが、空気がぴりついているのを感じたので「どういうこと?」と聞くのはやめておいた。その間、ふわたろうは絵画の縁をカジカジして嚙んだ跡を付けていた。


「先に進めるのは、生き残った1チームのみ。なんともシンプルで、悪辣な趣向じゃないか」


 ウェリシアは、やや演技がかったようにして場をまとめる。それに便乗するかたちでザカリアが続けた。


「皆さん、お判りいただけたでしょう。先の階層へ進む唯1つのチームを決めるのが、この装置。」


 ごくり、と誰かが唾をのむ音が聞こえた。


「その機能は━━━━処刑装置でございます。」


誰も、何も言わなかった。言えなかった。そのショッキングな内容に対する静寂というリアクションは、ふわたろうが、揺らして戯れていた絵画を派手に地面に落として静寂を引き裂くまで続いた。そして婆さんは静かにブチ切れて、白く巨大な兎をひっぱたきに向かった。


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