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楽しい。



「行く」


 戦斧(バトルアックス)を担いでボスモンスター、巨大単眼巨人へと立ち向かう。


———今ならば、問題なく振るえる。


 速度を上げる。私の本気の速度だ。巨人どもの認識を置き去りにして、空へと跳躍する。狙うは、足元に群れる有象無象ども。今はもう、的でしかない。


 薪を割るように、殺す。


…楽しい。


 こうして、斧を振り下ろす、この瞬間が。


———楽しい。


 振り下ろす。


———楽しい。

———楽しい。

———楽しい。


———楽しい。楽しい。楽しい。楽しい。


———ひっじょ〜うに楽しい!!!!!


 頭蓋の中心を捉えた戦斧の刃が、確実に狙った場所に食い込んだとき。

 爆発的な喜びが、私の脳内を席巻する。


 好きだ。この感覚がたまらなく好きだ。狂おしいほどに愛している。


 なんだもう終わりか。そんな感傷に浸る間もなく、メインディッシュへと殺意を向ける。


 跳躍。降下。破壊。

 全ての動作は流れるように行われた。


 肉を断ち切る感触が、その図体に比例して長く続いたのは、ナイアの報酬系を甚だ刺激した。まさしく狂戦妃の復活を告げる福音の鐘を聞いているかの如く、恍惚とした表情で返り血のシャワーを浴びながら、決して絶えることのない落下の勢いに任せて少女はその嗤いを真紅の液のベールに隠す。


 引き締まった筋組織が、丈夫な骨格が、私の楽しみにささやかな抵抗をする。


 けれど、無駄だよ。それすらもスパイスとして受容できてしまう。


 誰も私を止められないし。もう、止まらない。


 着地と同時に、斧が地面を割った。


「やばい、モンスター縦に割るの、やめられないかも…」


———よ〜し、決めた!

 私、巨人殺し(ジャイアントキリング)専門になります!







 ナイアの凶行に、老婆は打ち震えた。


 殺戮を楽しむこと。それはこの世界において強者となるための絶対条件である。


 老婆は想う。それゆえに、自分は真の意味で強者とは呼べない。強者側に分類されている自負はある。しかし、ついぞ殺戮を楽しむ気持ちは芽生えなかった。


 死は、常に自分の周りで渦を巻いていた。されど、その現象が死であるということ以上の意味を、老婆は今まで見出すことができなかった。


 しかし、この少女は、ナイアはどうだろうか。すでに殺戮を楽しむ領域にきている。この齢で、幾ばくの命を屠り、また幾度の死線を踏んだのだろうか。


 殺戮を愛し、また殺戮に愛されている。


 もうこの少女は、戦いでしか己の生を実感できないのでは…?


 老婆は嘆くと同時に、感謝した。


 もしこの力が、国家のために振るわれたとしたら———。






 地鳴りと土煙と共に、巨大単眼巨人の住処であった遺跡が砕け、地下から次の階層への階段を擁した構造物が()り出してきた。


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