ダンジョン探索
アレックスを殺した後、格下の雑魚に後れを取ったという屈辱からむしゃくしゃしながらも、私は二層へと歩を進めていた。
なぜ二層なのか。それは、アレックスが爆破した洞窟の入り口は、もはや手の施しようがないほどに完璧に穴を塞いでいたためだ。この土砂を取り除いて通るためにはそれなりの時間と労力が必要だったが、いまのわたしにそんな余裕はなかった。
しかし私には次なる策があった。大空洞の中心部、オーガ・ジェネラルが死骸の山を築いたほど近くにぽっかりと穴が開いており、中には階段が続いている。
これだ。
私は躊躇なく階段の先、漆黒の暗闇の中に歩を進める。トンネルの出口となっている場所から一歩出て、空気が変わったことに気付く。まず温かい。日の光も再現されているのだろうか。小鳥たちは囀り、さわさわと風が葉を撫で、枝がしなる音がする。そこはまさしく森林だった。
しかしここはダンジョン。普通の森林とは違う。
まず、魔物の数が多い。そこらへんにゴブリンがいる。小動物サイズの魔獣もいることから、彼らはこうした弱いモンスターを捕食して生活しているのだろう。
ゴブリンを殺していると、その断末魔がとても耳障りに思えた。それはまるでさっき叩き潰したアレックスの、あの不快な笑い声を彷彿とさせた。
アレックス……
「まったく忌々しい奴だった」
何が恋人だ。弱みに付け込んで強いる約束に何の信頼や信用が生じるというのか。そこにあるのは形式という空虚な見てくれ、張りぼてでしかないというのに。
まあ狂人の戯言か。
そんな益体もない思考をしながら、其の片手間にゴブリンを石斧で叩き潰して進む。しばらく道なりに進むと石造りの階段が現れた。、
「おっと、もう三層か」
三層は一層の洞窟や二層の森林と違って、その植生や地形が大きく変わっていた。だだっ広い平原のような場所に、建物ほどもある巨大なキノコや植物がぽつぽつと存在している。そして、空気は赤紫色に濁ってなんとも幻想的であると同時に未知のものに対する恐怖心を掻き立てている。
モンスターはいなかった。しばらく歩いていると巨大な建造物の影が見えた。あれは何だろう。近づいていくにつれて、その全容が露になる。
形は円状で、素材は石造りの巨大な建造物。真ん中は開けた場所になっていて、そして、そのど真ん中。開けた場所の中心部に、何かいる。
これは、他のモンスターとは違う、強いモンスターなのではないだろうか。
聞いたことがある。ダンジョンには、通常のモンスターよりも強い、ボスモンスターと呼ばれる魔獣がいることを。そして、そうしたボスモンスターは階層の番人として次の階層への階段を守護していることが多い。
じっと目を凝らして観察する。それは、先ほどまで見ていたキノコのようでいて、しかしキノコでいう傘の部分を植物の花弁が構成しているような、そんな世にも珍しい形の化け物だった。
いつか倒した人面キノコのことを思い出すが、こいつはあれよりも強いに違いない。こちらに人面は付いていないようだが……




