道中
婆さんがかつて仕事をしていたという場所への道すがら、聞いておきたかったことをいくつか聞いた。
今は聖暦243年。なんと私が邪神に囚われてからというもの、三年しか経っていなかったらしい。厳密に言えば、私は何度も死んで時間を繰り返していたので、三年という時間はあくまで私が繰り返してきた時間の、ほんの一部でしかない。しかし、あの日々が、苦痛に満ちた永遠とも思える時間の連続が僅か三年間という短いスケールで語られるのはなんだかおもしろくない気持ちがした。
しかし、三年か。
三年の間、街のみんなはどうしていたのかな。お父さん、友達、そして師匠であるカノーレ神父にも会いたい。とりあえずは、百年とか経ってなくて良かったな。再会も許されずに人の寿命の期間を超える時間を移動させられたら邪神を呪ってやるところだった。
それと、今向かっている目的地について、なかなか婆さんは喋らなかったのだが、どうせ到着したら知れることなのだから何故隠す必要があるのかと問うと、すんなり教えてくれた。婆さんが仕事をしていたという場所、それは教皇庁のお膝元、全ての信仰の中心地である王都オウゼンタだった。王都のドブさらい、と聞くと、ゲッティローグとは違ってなにか特別なものがドブに紛れているのではないかと思ってしまう。
道中、マーダー・ウルフの群れやバッフォル・ボアからの襲撃に見舞われるも、なんなく撃退して順調に進むことが出来た。意外だったのが、婆さんは普通に戦える側の人間だった。弱弱しい見た目からは想像できないぐらいに俊敏に、そして無駄のない動きで的確に急所を攻撃していた。といってもやはり年齢には勝てないのか、戦いの後はだるそうにしているし、態度もこころなしか冷たいので疲れているんだなと思い、そっとすることにした。
焚火の前で、パチパチと揺れる火がぼやけ始める。なんだか私も眠くなってきたかな。
婆さんに作ってもらったバッフォル・ボアのスープは美味しかった。肉汁と山菜、そしてキノコの風味が混ざり合う、野生と自然を両方感じさせる豊かで奥深い味わいは、一朝一夕の経験では身につかない技術の為す所だろう。さすが、宿屋の主人……




