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私はいま史上最強の私

「これで、最後……」


 私が人面熊を倒せるようになるまでに悠久とも感じられる時間が流れた。しかしそれは私の中では、という注釈が付く。あくまで現実世界の時間はそこまで進んでいない。


 人面を額に張り付けた大熊。なんとも憎らしい相手だ。コイツは、実は熊の身体の方を攻撃してもそこまでのダメージは与えられなかった。というか、熊の顔面にへばりついたあの邪神の顔。それこそが、この人面熊を強くしている本体ともいうべき代物だったのだ。


 つまり、邪神の顔面を攻撃することで破壊。その後熊本体を叩けば"顔"からの生命力の供給はなくなり、熊は途端に弱くなる。


 これに気付いてからは邪神顔をひたすらたたき続ける戦法にシフトし、一点に攻撃力を集約する戦闘方式を再び用いるようになった。それに最適な武器といえば斧であった。いまの私はもとの戦闘スタイルに近い。


 くしくも最初から私は人面大熊に対して有効な手段を持っていたわけだが、経験不足や膂力不足からあまりその強みを活かせていなかった。


 しかし、もうあの頃の私ではない。私はいま史上最強の私なのだ。そして、これからも史上最強を更新し続ける。


 左手で斧を掴み、右手に斧を添える。


 材質は石製。邪神の身体から生み出されたものだ。


 大熊の人面をかち割るのはカンタンだ。まずヒビを入れるのに最適な角度がある。その角度に大斧を振り下ろし、少し顔面にめり込ませる。そこからは余裕だ。コンコンと柄を叩くだけでどんどんヒビは大きくなり、刃はさらにめり込み、必ずある一点で顔面が爆散する。どうやら熊の顔面に硬い素材で出来た邪神の仮面のようなものが埋め込まれているらしく、そこを突破してしまえば刃を叩きつけるなり殴打して脳震盪を起こさせるなり、他の手段で胴体を戦闘不能にすることも可能だ。


 それをする前に爆散した邪神の顔面が熊の脳みそを内側から破壊することもあるのだが、それが起きればラッキーというところだろうか。これに頼りきると顔面をたたき割られ、半分死にかけの大熊がヤケクソになって暴れだし、攻撃してくる場合があるので注意が必要だ。ちなみに何度か殺られた……


 邪神の顔を持ったキング・グリズリー、単に大熊とか人面大熊とか呼んでいた私ではあるが、便宜上"顔"持ちとでも表現しておこう。


 こいつらを攻撃し続けていたそのあいだ、観察して気が付いたことがある。顔持ちたちは時折何かを守るような素振りを見せた。それは、ここから先は通さないぞという意志であったり、確実にここで足止めをするという意志であったり。ともかく私をこの先に通すまいとする意志が行動となって表れていた。皮肉なことに、私はこいつらが何かを守ろうとしていると気が付いたからこそ、顔持ちたちがふさいでいる進路などから判断してどの方向にその守りたいものがあるのか見当が付いてしまったのだが……


 しかし、本当にそちらへ進んでいいものなのだろうか、私は躊躇している。なにか良くない、不快ななにか。おぼろげに感じられるがしかし関わったら確実に破滅を予知できるような、そんな邪悪な存在感。なにかまずいものがこの先にある。


 私は藪をつついて蛇を出す必要があるのか悩んでいた。しかし、うすうす私は気づいていた。人面大熊と戦っている時だけは、なぜか邪神が念話してこないのだ。そこが不審だった。きっと邪神にとって触れられたくないなにかがそこにあるのだろう。あるいは邪神にとって致命的な何かなのかもしれない。しかしまあ邪神にとってもへらへらと遊んでいられない事情があるのだと思うと、私はなぜか邪神に対して少し親しみが湧いた。といってもヤツを必ず殺すという決意に揺らぎはないが。




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