ふりだし?
結果は惨敗だった。
私とふわたろうは有効打を与えられず、一方的にタコ殴りにされて死んだ。
タイム・リープで戻ってきたのは一番最初の、何千、何万回と繰り返したあの瞬間。
そう。振り出しに戻ったのね。
私はいままでの努力が無駄になったのだと悟り、茫然自失として三回ほど追加でキング・グリズリーに殴られた。
「あれ?」
てっきり痛みがあって、その次に私の意識はブラックアウトするものかと思っていた。
けれど、いつまでたっても痛みは訪れない。
見れば、無意識に私の細い腕が、王の名を冠する熊の魔物の巨腕をふせいでいる。しみついた経験ゆえだろうか。
「なんだ、私。強いんじゃん」
バトルアックスが無くても、私はもうキング・グリズリーとタイマン張れるくらいには力があるらしい。
呼吸を整えると、ハッと声を上げて大熊のふところに飛び込む。
もう終わりだ。私の掌底が、キング・グリズリーの心臓を揺らす。その衝撃によって心臓は動きを止める。巨大な図体が嘘のように、小さな人形のような軽やかさで倒れた。
「邪神。見てるんだろ? お前、ひとつ嘘をついているだろう」
『ほう。言ってみたまえ』
「お前の言うタイム・リープ。これはタイム・リープなのかもしれないが、それでは私のこの強さとつじつまが合わない。」
『そうかな? もとから君はそのぐらい強かったんじゃないかな? それを引き出せていなかっただけの話ではないのかな?』
「意地の悪い。アンタがそう言うってことは、それは事実なんでしょうね。でも、私が言いたいことはそういうことじゃない。タイム・リープと言いながら、私の記憶が維持されたままなのは何? 私の筋力に関してもそう。明らかに以前の肉体パフォーマンスじゃ考えられない動きができる。これは、言い逃れできないでしょ?」
『言い逃れできないでしょ?(キリッ)なんていわれてもねえ。そんなこととっくに気が付いているものと思っていたよ。私はもう少し踏み込んだことを聞いてくるんじゃないかと思ったんだがね。どうやら期待しすぎていたようだ。これは失敬、失敬。』
「ウ、ウザすぎるぅ……」
『まあこういうことさ。私は君が死んだとき、君が死ぬ直前にさかのぼって最高のパフォーマンスが発揮できる肉体を保存し、その肉体に君の死ぬ時までの記憶を移植。最後にこの世界、"邪神の箱庭"自体を初期化して君の座標を移動させたら完了さ』
「何を言っているのか分からないわ。」
『そうか。それは君の怠慢だ。君は最初、さらなる力を望んでいた。だから私は君の望みに答えた。私のやり方が気に入らないようだが、私は出来る範囲で君の願いにこたえているつもりだ。こちらが用意できる方法は大きく分けて二つ。一つはドッペルゲンガー方式で、君のコピーを逐一作っておき、君が死んだ瞬間、直前の肉体と記憶を引き継いだ新たなナイアがサバイバルを続行するというものだった。ドッペルゲンガーが嫌だといったのは君だろう? 私は君の意向を汲んで、なるべく同時にナイアという人格が併存しないプランを用意できていると思うのだが。君を更なるステージに押し上げるプロセスを用意できていると思うのだが』
「さっきからつべこべと何をいっているのか分からない。もういい。殺す。隠れていないで出てきなさい」
『おいおい、怒らないでくれたまえ。しょうがない。どうしても私を殺したいならもっと力をつけなさい。今のナイアでは私にかすり傷ひとつ付けられないし、まだまだ精神力も足りていない。私の本質を見た瞬間、発狂してしまうだろうね。』
「石ころが何を言っているんだか。あと、あの人面クマたち、趣味が悪すぎると思う」




