食べ物を探そう1
飢饉が訪れるのは、実に五年ぶりのことだ。
「どいつもこいつも役人の顔色ばかり窺うのね」
五年前の飢饉では十分な食料が手に入らず、ゲッティローグでも多くの人が死んだ。それだというのに、町の住人は皆、引き下がらない税率に不満をこぼすことなく労働に勤しんでいる。
以前の恐怖を覚えていないのだろうか。その日のパンを手に入れるのにも困りつつも、なんとか食い繋いでいたあの日々を。
政府が税金を下げないことに対して文句を言ったら、お父さんは役人に知られたらどうするとかなんとか言ってくるし。気にするのはそこじゃないと思うんだけどな。
「税金を払っていても、いざという時に役人どもは助けちゃくれないのよ。私たちの食べる分だって減るのに」
それに税を取り立ててくるのは役人だけじゃない。教会にも収入の十分の一を寄付しなければならないのだ。
「役人たちに税を納め続けても、この状況が良くなるわけじゃない。みんなそんなことも分からないのね」
いや、みんなそんなことは分かっているのだ。けれど、国や神に逆らうなんて大層な真似はできないから、いままで通りに振る舞うしかない、というだけのことなのだろう。理解はしている。しかしそれを、『はいそうですか』と飲み込めるほど、私は大人じゃないのだ。
もちろん、私も武器を手に取って政府やその元締めである教会に反旗を翻そうとまでは思っていない…というかそんなことしたら殺されてしまう。だが、この危機に対して何もしないというのは違うと思うのだ。
パンの残りだって心許なくなってきた。…ということで。
「こうなりゃ自分で新しい食糧を探すしかない、か〜」
となると、まずは…食べられそうな植物を探すことから始めよう。城壁を抜けて、平野を通って森へと入る。
「うぇ〜」
茂みを割って進んでいると、虫が出るわ出るわ。とても気持ちが悪い。
「さすがに虫は食べたくないなぁ」
それから、植物を何種類か採取してみた。どれもこれも食べられそうには見えないけど、頑張れば食べられるレベルなら問題はない。
「うわマッズ」
いや、やっぱ無理。苦すぎる。それに青臭すぎ。
ぺっぺっと口の中のものを吐き出しながら、私は新たなる食材候補を探し求めた。