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邪神の箱庭

 イメージするのはカノーレ師匠の戦う姿。


「しゃオラッ!」


 飛び上がった私は敵の顔面をちからいっぱいひっぱたく。


 それがどうした、とばかりにキング・グリズリーが腕を大きく振りかぶる。


「その隙は……デケえんじゃない?」


 すかさず大熊の股下に滑り込む。裏を取った!


「ふわたろう!」


 掛け声とともに飛び上がると、巨躯をよじ登り、頭部を掴む。


 キング・グリズリーは鬱陶しそうに体を揺らして私を振りほどこうとする。


 しかし、無駄だ。


 木の幹の陰から飛び出したふわたろうが、全速力で巨体に迫る。


 瞬く間に肉薄した白い流体が、熊の背中に頭から突っ込む。ふわたろうの頭部に生えた立派なツノが、敵の腹部を貫いた。


「終わりね」


 この瞬間が好きだ。勝利が確定し、自分の生存が確定するこの瞬間────私は確かにいまここに立っている、生きているのだということを実感する。


「まあ、殺したのは私じゃなくて、君だけどね。ふわたろう」


 私なんて、ふわたろうがいなければ永遠に殺され続けていただけだっただろう。


「しかし、あの時のキング・グリズリーが今や弱く見えるわね」


 天敵を前にした小兎のように震え、逃げることしかできなかったあの頃の自分を思い出す。


 わたしは、間違いなく強くなっている。


「あのころと比べて私が戦えるようになったとか、そういうわけではないけど」


 逃げる、というのも一つの生存戦略だと学んだ。いくらぼこぼこにされても、殺されかけても、最後に立っていればそれでいい。自然の中では生き延びた者が勝者だ。


 けれど、いつまでも殺し合いにおいての決定力がないままだと良くないだろう。いざという時、自分で活路を開くための武器は何かと必要だ。


「なにか、私でもキング・グリズリーみたいな強敵を倒す方法はないかな。」


 カノーレ師匠に教わった解体方法で、今日の晩御飯という戦利品を得る。その場で枝を拾い、火を起こす。肉を枝に突き刺して、じっくりと火にあぶっていく。


 この際、肉の匂いにつられてモンスターがやってくることがあるので注意が必要である。


 しかし、基本的にはモンスターたちは火を嫌がるので、火を見たら逃げていく。なのでがっつりとした戦闘はあまり起きない。


 巨木の中腹に開いた穴の中に戻る。ここがナイアたちの寝床となっている。今はもう居住者がいない鳥の巣穴だった場所を有効利用させてもらっていた。


『お困りかい?』


「げ、今日もまた覗き見?」


『"覗き見"とは人聞きが悪いな。私が作った世界なのだから、私が君たちの活躍を見ることは、何も問題がないだろう?』


「その理屈だと、大工さんなら作った家に住む人たちのプライベートを覗き見してもいいってことになるんじゃない?」


『理屈が飛躍しているよ。その家の所有者は、あくまでその家に住む人たちが持っているんじゃないかい。大工さんは、その家の所有者ではないわけだ。その点、私はこの"邪神の箱庭"の所有者といえるだろう。まったくもって問題がないよ』


 言い負かされた私は、返す言葉に窮して黙りこくった。


『おっと、仮にもレディーに対して言い過ぎてしまったかな?』


 なんともうざったい奴だ。


 ん? というか、"邪神の箱庭"?


「その"邪神の箱庭"っていうのはこの世界の名前なの?」


『そうさ。フォローになるかは分からないが、私は人が言うところの神だからね。だから私に言い負かされたからといって気にしないことだ。』


 邪神……なるほどそれで。私はようやく得心がいった。コイツがこの世界を作ったというのが正しいのであれば、それは神以外にはありえないだろう。


 私が死んだとき、死ぬ前に戻れるということも疑問だった。たしかタイム・リープとか言っていたか。それもこの"邪神の箱庭"と呼ばれる世界を創造した神の権能のひとつなのだろう。


 その日はふわたろうと共に、さきほど作った串焼き肉や取ってきた木の実を食べて寝た。













 

あらすじをきちんと書きました。

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