表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/63

アルミラージの背に乗って

アルミラージは風を切って原野をすすむ。その剛柔な体躯から繰り出される力はしなやかな筋肉の力でロケットのような推進力へと変換され、爆発的なエネルギーで地面を蹴っていく。


「はやすぎ……」


私は振り落とされないようにするだけでも精一杯だ。


「なぜこの子は私を助けてくれたんだろう……」


あの時。剣を振りかぶってきた男が目の前に迫ったとき、私は「ああ、このまま死ぬんだ」……と、自分の末路に納得してしまっていた。別に、私が死んだ方がいいくらいに極悪人で、ようやくツケを払う時が来たんだ、と感じたわけではない。単に、こういう終わり方もリアルな人生なのだろうと、受け入れてしまったんだ。


別に変じゃないでしょう? 私は、キンググリズリーに襲われた時だって、そのあとに川へ飛び込んだ時だってそうすでに何度か死んでもおかしくないような経験を何度もしていた。


私が今、生きていることって、奇跡なんじゃあないか。


そう思ったら、奇跡に生かされていた私が、本来の命運を辿っていきなり死ぬことだって、有りうるんだ。そう思った。


そう思ったことは、変なことじゃないと思う。


決して、おかしなことなんかじゃない。


でも、私は考えを改めるよ。そう思ったのはたしかに変なことじゃないけど、悪いことだったって。


私は以前、ウサギを殺そうとしたことがあった。いや、結局逃がしたんだから、それは殺そうとしたことにはならないのかな。でも、ウサギなんていう、弱い生き物からすれば、いや、これはすべての動物に言えることかもしれないけれど、死というのは、いきなり来る。それがリアルなんだ。


そんな動物たちにとって、「生きている」とは、それだけで幸せなんじゃないか? 彼らにとっては、殺されないことこそ、この世界で生きる意味なんじゃないのか。


だから私はこう思うんだ。


「生きないと」


私が今まで殺してきた生き物たちの分まで。


アルミラージは「ブーン」と低い唸り声を上げた。「あまり思いつめるなよ」と、そう言っているかのようだった。


「なに? 心配してくれているの?」


二人は風を切ってすすむ。そこに道はない。青い空と緑の大地。風が少女の頬と大兎の白く柔らかい毛並みを撫でる。ただただ広大な自然が、二人の少女の感傷とアルミラージの気遣いをやさしく包んでいた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ