アルミラージ
今回の魔物たちの侵略によってケガを負った人はたくさんいたが、死人は奇跡的に一人も出なかった。
まあ、早期にカノーレ師匠が街に帰ってきて、すぐに全部倒したことが大きいだろう。
「それもこれも神父さんのおかげです」
神父は休日に有志にむけて護身術やモンスターからうまく逃げる術などを教えていたらしい。
そのかいもあって今回全員が生き残る結果につながったのだろう。
私は教会があまり好きではなかったのでそういった情報をシャットアウトしてしまっていたが、そんな有益なことをやっていたんなら私も行くべきだった。
師匠は見たことのない大きさの鍋に魔物の肉やら野菜やらを入れると、ちゃんと量が分かって入れているのか心配になるぐらいにすばやく塩や胡椒をばらまき、そして素手でそれらを攪拌しはじめた。
師匠の腕どうなってるんだ……
衛生的には師匠の神聖魔法ですべてがお清めされているので問題ない。
「師匠最強すぎる……」
宴は盛り上がっていった。
建物が壊れていても、誰もそんなことは気にならないほどに、ただ楽しいひと時が流れていた。
そんな時、奴らが帰ってきた。
「ド辺境の田舎モンどもが……」
そう言って、現れたのが調査団の奴らだった。
薄らハゲ以外は全員無事だったらしい。
しかし薄汚れている。激戦だったのだろう。
「お前ら、ただじゃ済まさねえ! この街を神命によって異端とし、裁きの鉄槌を下す!!!」
「やばい、こいつは私が蹴り飛ばしたやつか!」
私を逆恨みしているのだろう。長剣を振りかぶって私のもとへ駆け寄ってくる。
「ウオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
これは死んだ。
私はどこか他人事のように、剣が迫ってくるのを観察していた。
グシャッ
「?」
私の目の前にいたはずの男が消えた。
「え?」
それだけでも不思議なことだが、さらに不思議なのは私の横にいる真っ白な毛並みの魔獣だろう。
その姿はウサギ。しかしウサギと違うのは、額に生えた立派なツノだろう。
そしてそのツノには先ほどの男が串刺しにされている。
「ええ……?」
私は困惑するばかりだった。
後ろで師匠が言った。
「アルミラージ……」