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「なあ、今何してるの」


 と小川から聞かれる。


「印刷系の仕事してる」

「へえ。にしてもお前ほとんど変わんねえな。眼鏡かけてないけど」

「それ褒めてる?」


 自分は見た目については良くも悪くも変化がなかった。昔から老け顔と言われていたから顔立ちの変化もそこまでない。

 見渡せばどこか面影のある顔ばかりだったが、やはり雰囲気はがらりと変わっていた。仕事が成功したヤツ、夢を追っているヤツ、家業を継いだヤツ。

 10年経てばそれくらい普通なのだろうが、やはり寂しいものがある。


「でも良かったよ女子も北村が呼んできてくれたから」

「へえ、よく捕まえたな」

「ほら北村、前川と結婚したから」

「えっマジで?」


 思わず席の向こうにいるに座っている北村を見ると北村と目が合う。


「俺のこと呼んだ?」

「呼んでない呼んでない」


 「大輔お呼びでないってよ」と周辺の人間も笑った。

 アレだよと北村が指さす方をみれば確かに女子の中で唯一左手の薬指に指輪を付けている女性がいた。あれが前川らしい。いや結婚してるから彼女も北村か。

 まだ25歳だろうに。この時代では少々早い結婚だ。

 当時は付き合っていなかったはずだが、まさか進展してゴールインするなんて思わなかった。多分本人らも思っていなかったかもしれない。


 前川を見た時、一瞬視線が引き寄せられた女性がいた。室内なのに色が薄めのサングラスをかけていたから顔の判別ができなかった。誰だろうか。


「女子の所行ってくるわ」

「合コンじゃねえんだぞ。俺も行くけど」


 お前も行くんかい。なんて内心ツッコミを入れる。

 酒が回り始めたタイミングで何人かは席が入れ替わった。このノリは学生時代を思い出す。

 自分の隣にいた小川も席を離れてしまったせいで自分は少しだけ孤立したまま一人酒と食事をつまんでいた。


「隣良い?」

「あー、いいよ」


 声をかけられ、自分のグラスを持って小川のいた自分の左側の席に座る。

 室内なのにサングラスをかけた女子。座る間際暗めの長い髪を耳に掛けた時何個か開いていたピアスが色っぽかった。


「あーごめん、女子の顔変わりすぎて誰だか分かんないんだけど……誰?」

「堀だよ。久しぶりだね中村」


『中村ってなんで名前は(かおる)なのに女っぽくないの?』

『名前のことは指摘して欲しくないんだけど』

『…………そうか』


 名字だけの自己紹介で中学時代の記憶が一気に蘇った。堀綾香。

 当時自分が所属していた天文部にいた唯一の女子で、黒髪のボブヘアで大きな猫目が印象的だった。

 そして何より自分の初恋の人だった。


ようやく初恋の人と再会!

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