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トーク画面の上部にあるアナウンス部分。そこに記載されている日程と集合場所と今いる場所を照らし合わせた。
現在時刻は集合時間から20分も過ぎていて、トーク画面には30分前に遅れると言う自分の謝罪コメントとスタンプ。そして店に集まっているという友人たちのメッセージが複数来ている。
聞き覚えのある懐かしい車内アナウンスが響いてきたので顔を上げて、電車が止まるのを待つ。がたんと音を立ててから扉が開くと自分は数人の乗客より遅れて電車から降りた。
他の降車した人たちと共に階段を上り、田舎の駅よりかはそこまで狭くもなく、都会の駅と比べればかなり狭い改札口を潜り抜ける。
数年前に改装工事が行われたらしいこの地元の駅は、特に内装ががらりと変わったわけでもなく、綺麗になった程度で、雨漏りの跡が残っていた天井やひび割れた壁が綺麗に無くなっていた。
ただ以前は売れているのか分からない古びた書店と安くて速いことで評判の床屋があったはずの場所には、高級品が並ぶスーパー、誰もが知っているようなケーキ屋。そして都心でしか見たことないおにぎり屋ができていた。
改札を出てから左に曲がりもう一回左に曲がる。
店が立ち並ぶ屋外の通路を真っ直ぐ歩き、エスカレーターを下ると昔の面影がある。だが大分変わってしまった場所が広がっていた。
夕方、駅の北口。建物が西日を遮っており一足先に夜の気配を感じた。
土曜日だからか出入りする人はまばらで、奇抜な色をした髪色の学生とすれ違った。自分の知っているバンドのタオルが首からかけられていたからライブの帰りかもしれない。
最近の音楽を流しているイヤホンをしたまま駅を出て道のりに真っ直ぐに歩く。
北口からの道はロータリーがある西口東口のような広々とした道ではない分、車も一方通行でほとんどが歩行者と自転車しか通らない裏道だ。
だがこの時間は客のかき入れ時だから、どこもかしこも食べ物の良い匂いが盛れ出している。
成人式から5年経ち、「同窓会をしよう」と久しぶりに中学の同級生から声をかけられたので参加することにした。
開催場所は昔から遠目で見たことはあるものの入ったことはない居酒屋だった。
最後地元に来たのは大学時代、成人式以来だが当時は式には参加したものの用事があったためすぐに帰宅したから、ゆっくり当時の同級生と話をするのは何年振りだろうか。中々会わないから、見ても分からないかもしれない。
中学時代、自分はいわゆる陰キャと呼ばれる部類に入っていたのだが、片田舎の学校ということもあり、小学生の時から見知った仲間が半分くらいいたから特段仲は悪くなかったと思う。
参加する人数は自分含めて13人。丁度卒業して10年くらい経つのだ。大人になればそういうこともあるだろう。むしろ良く集まったものだ。
店の前に立ち、横開きの扉に少しだけ躊躇してから手をかけて右に引くとがらがらと音を立てた。
「あ、おせーよ!」
「ごめんごめん」
すぐ横の座敷の方ではすでに集まっているメンバーで飲み始めていたようで、幹事を務めている当時の友人である小川が声をかけてくれた。休日でありながら店の中は自分達しかいない。
空いている座布団をぽんぽんと叩き自分をここに座るように促す。
「中村久しぶりだな」
「人いないけど貸し切ったの?」
「流石にこの人数でそこまでしねえよ。ビールでいい?」
「最初だけな」
自分が座ったところでまた幹事の音頭で皆が一斉に視線が向く。
乾杯と一斉にグラスがカチンと鳴り響いた。