表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Endless Story~終わりなき物語~  作者: あっさむ
とある英雄の末路
1/4

1

 以前短編で出しました、「とある英雄の末路」の世界を連載版として書いてみました。

「とある英雄の末路」は3話ほど続きますが、ストーリーや設定の追加など色々と加筆修正をしているので一度読んで頂いた方でも楽しんでいただけるかと思います。

その後はまた別の視点や別主人公でも話を進めていきたいと思います。


まだまだ拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。

 そのゲームのβテスターの第2弾に選ばれたのは僕が中学三年生の春のことだった。


 世界ではVRやAIなどの技術が目覚ましく発展し、ゲームはコントローラーを操作する時代から、自分がその身をもってリアルな体験する時代へと大きく移り変わっていた。その中でも一番注目を集めているのがこの“ Endless Story”で、何百倍という倍率を勝ち抜いてβテスターに選ばれた時は神様に心底感謝した。



  Endless Storyはいわゆる『剣と魔法の世界』というやつで、冒険者としてやってきたプレイヤー達が強力なNPC(現地人)他のプレイヤー(仲間)と一緒にクエストを進めて世界を旅するというのが大まかな流れになっている。旅の途中で発生するクエストやストーリーはそれこそ無限大にあると言われていて、まさにEndless Story―終わりなき物語─というタイトルがピッタリだ。

 クエストやストーリーの量もさることながら、多彩なスキルや様々なタイプに派生する職業、それに付随する武器·防具·従魔達、本物と遜色の無い圧倒的なグラフィックなど特筆すべき点は尽きないけれど、一番の売りはNPCの多様性とそのシステムだった。



 従来のゲームでのNPCは決められた場所に立って、決められたセリフ(定型文)を言うだけの存在だった。しかしこのゲームでのNPCは()()()()()。 特殊なAIを搭載されている影響で彼らは情緒豊かに会話をし、自らの意思で移動をしたり結婚をしたりする。独自で考えたクエストやイベントを発生させることもあるという。ストーリーの関係上なのか、従来形のNPCもいるらしいがそれは本当にごくまれだ。


 そんなNPCと仲良くなったり、冒険に同行してもらう為には()()()をある程度稼がないといけない。会話をして顔見知りになることも勿論大事だが、()()()()()()()()()()()などが非常に重要になると公式サイトに載っていた。



 僕はゲームを少しでも有利になるように公式の事前情報や眉唾物の情報も含めて沢山の情報を集めていた。その中で少し気になったのが、βテスター第1弾のプレイヤーの中に消息不明の人が何人かいるという掲示板での書き込みだった。

 しかしその書き込みは“信憑性に欠ける”として深く追及されることなく流されていったし、僕もゲームを実際にプレイする頃にはすっかりとそのことを忘れていた。



────────

──────

────



 初めてゲームにログインすると、自分のアバターと職業を決める選択の部屋にやってきた。アバターは現実世界の姿と大きく外れることができない仕組みになっていたので、残念に思いつつも髪色を赤く、身長を少しだけ高くするだけにした。

 

 職業は今後の冒険に大きく影響するからと色々と悩んだ結果、魔法系統ではなく物理系統の『剣士見習い』にすることにした。見習いは初期の職業には必ずついていて、そこから先は職業のレベルや自身の行動で名称が変わっていく、らしい。どんな風に変化をするのかも楽しみの一つだ。


 また、このゲームは現実の世界よりも時間を加速させていて、現実の4時間がゲームの1日になる。

こうやって設定をしている間にもほかのβテスターは先に進んでいるかもしれない―。そんな焦りはあったけれど、最初の段階で自分でスキルや武器を使う感覚に慣れておくのも悪くはないはずと思い、スキルや体の動かし方についてのチュートリアルを済ませた。


 やり残したことや試してみたいことが無い事を確認して、【始まりの街に転移しますか】というメッセージの前に立つ。いよいよ冒険が始まるのかとワクワクしながら迷わず【OK】の選択肢を押すと光に包まれてその場から姿を消した。



────────

──────

────



 光がまぶしくて思わず閉じていた目を開くと、そこは街ではなく見慣れない神殿の目の前だった。

人の気配がまるでなくしんと静まり返った建物は、厳かというよりもどこか言いようのない不気味さがあって少しだけ身震いがした。


「ここどこ?まさか特殊イベント? 

 でも何か踏むような事したかなぁ····」


 考えても特殊な事をした覚えもなく、何かストーリーのようなものが進む様子も無かった。どうしたらいいのか分からず途方に暮れていたけれど、ここでただ立っているだけでは何にもならないと、ゆっくりと神殿の中に進んでいくことにした。



 白を基調とした神殿は長い歴史を感じさせる佇まいなのに、驚くくらい綺麗で埃一つ無い。中は一本道の分かりやすい構造になっていて、光源が見当たらないのになぜか眩しい位に明るかった。

 体感で約15分程で最奥にある扉までたどり着くことができたけれど、その間に戦闘も罠も何もなく僕はどこか拍子抜けしたような気持ちでいた。

 でも、この先は何かある。今までとは違う雰囲気を感じ、いわゆるボス部屋だろうと推測する。


「とりあえず、できるとこまでやってみよう」


 恐る恐る扉を開けると、祭壇のようなものがポツンと中央にある殺風景な空間が広がっていた。周囲を警戒しながら祭壇に近づき、手を触れてみると水色の光が部屋いっぱいに広がった。僕は思わず顔を腕で覆いながら後ずさりしてしまう。

 光が落ち着きゆっくりと腕を降ろしてみると、さっきまで僕以外誰も居なかったはずなのに祭壇の上に優雅に座っている女の子がいた。



 彼女は水色の長い髪をポニーテールにしていて、丈の長い白い半袖のワンピースを着ている。たぶん年は僕と同じ14.5歳ぐらい。ぱっちりとした黒い瞳が印象的で、優しそうな顔でほほ笑んでいる。僕が今まで見た中で、文句なしに一番可愛い女の子だった。


 その姿に見惚れていたのと、いきなりの展開についていけず僕が彼女を呆然と見つめたまま何も言えずにいた。状況を察してくれたのか、彼女は少しだけ困ったような顔をして祭壇から降り、目の前まで来て話し掛けてくれた。


「初めまして。選ばれし『英雄』様。私は水の女神、サーラと申します。

 これから貴方様をサポートさせて頂きますので何卒よろしくお願いいたします」


 水の女神サーラはそう言って僕を見てまたニッコリと笑ってくれた。

 しかし僕はまだ職業的には『剣士見習い』でとてもじゃないけど『英雄』なんかじゃない。慌ててそれを伝えると、サーラは次のように説明をしてくれた。



 この場所は英雄の器のあるものしか来れないようになっている。そしてここに到達した人が、旅を通して『英雄』になれるようにサポートすることを『創造神』から使命を受け、眠りについた。そして気の遠くなるような時間が流れ、僕がこの神殿に最初にやってきたと。



「こんな序盤でレアそうなクエストとサポートNPCに出会えるなんてラッキー!

 これから一緒に頑張ろうね、サーラ!」


「勿論です。精一杯サポートさせて頂きますね」



────────

──────

────



【水の女神サーラと出会いました。

 職業が『剣士見習い』から『英雄の卵』に変化しました。

 水の女神サーラがサポートNPCとしてPTに入ります】


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ