愛すべき・最底辺の作品
さっき、とある公募の一次選考の結果が届いた。
当たって砕けた、と言うよりも当たる前から砕けていた。
実力不足と口で言ってはみるものの、具体的な策が何一つわからない。
ただ闇雲に文章を書き連ねて、お世辞に言ってもらう『面白いよ』という反応を求めて、四苦八苦する。
それで良いのだろうか?
それに意味などあるのだろうか?
自問自答ばかり繰り広げて、私は筆を置いた。
「はぁ、私、何を目指してたんだっけ?」
香苗はため息を一つ。二つ、いや三つだったか。
とにかくその落選の結果に納得ができずに呆然と時を過ごしていた。
「何がいけなかったの? 面白いって思ったのに、何が……」
自作を読み返そうとパソコンを開いた。
開いたはいいが、いざ自分の小説が掲載されているページを見ると、その小説はまるで面白いものではなかった。
【選考に落ちたダメな作品】
脳が、自分が先ほどまで誇っていた文字の羅列を否定してくる。
「そんな事、ないよ」
「がんばって書いたじゃん」
「無意味だった訳じゃない」
どんな言葉をかけて見ても、香苗はもうその作品を読み返すことが出来なくなった。
香苗は小説の削除ボタンを、いとも簡単に押した。
カチッという乾いた音と共に香苗が紡いだ10万字が露と消える。
【さようなら、愛すべき、最底辺の作品】
生みの親なのに。
他人からの烙印で。
自分の為の小説を。
自分で卑下して消し去った。
けれども、香苗は気が付いていた。
本当に消し去るべきものは、この作品なんかじゃない事を。
愛すべき・最底辺の作品……それは……
「私」