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一話

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 しとしとと雨が降る、梅雨真っ只中の六月二十六日金曜日。誰もいない放課後の教室で、俺は幼馴染のミオナに告白した。俺の「ずっと好きでした」という思いに「私も」とミオナは返してくれた。

 こうして、雨宮(あまみや)アキトと峰晴(みねはる)ミオナは付き合うことになった。




「あー!やばい!幸せすぎる……」


 枕に顔をうずめながら、思わず叫んでしまう。狭いベッドの上でゴロゴロと転がりすぎて落下してしまう。痛みなどは感じない。それほどにミオナと付き合えたという今日の出来事は嬉しいものだった。


「ようやくか……」


 ミオナとは五歳からの付き合いだ。家が隣同士で家族ぐるみで付き合いがある。小学校、中学校、そして高校二年生の今に至るまでずっと一緒に過ごしてきた。

 気づいたら、俺はミオナのことが好きになっていた。これだけ長い間一緒にいれば当然のことだろう。

 ミオナも俺のことを、なんとなく意識しているのはわかっていた。だけど、確証もないし、もし違っていたら関係が壊れてしまう。それだけは避けたかった。

 あと1歩が踏み出せない距離感のまま高校に入った時、危機感を覚えた。ミオナは高校に入って他の人からも好意を寄せられることが多くなった。

 元からおっとりとした雰囲気で可愛かったのだが、成長するにつれてそこに大人っぽさが加わり、さらに可愛くなった。黒髪の清楚な感じで、性格は控えめで優しい。男だと好きな人も多いのは仕方がない。

 いろんな人から告白されたという話はよく聞いた。どれも断っていたけど、内心では焦っていた。

 このままではいつかミオナは他の誰かと付き合うのではないか?そう思ってついに告白を実行したのが今日だった。無事にミオナからも良い返事をもらえた今、俺は有頂天だった。


 帰り道は二人で帰った。付き合ったからというわけではなく、これはいつものことだ。それなのに今日は特別なように感じられる。いや付き合いたてなのだから特別なのだろう。いつもと違って、会話は途切れ途切れで、たまに目が合うとすぐに逸らして、照れているのがお互い伝わっているけど、そんな時間が楽しくて。


 【NINE】を開いて、家に着いた後のミオナから来たメッセージを見返してみる。


ミオナ〈改めて、よろしくね!ってなんか照れちゃうけど(〃▽〃)〉


 嬉しすぎる。ニヤつきを抑えられない。

 その日は喜びにエネルギーを消費しすぎたので寝ることにする。

 明日は休みだし、デートでも誘ってみようかな?さすがにいきなりすぎるかな?

 とにかく、これからの俺の高校生活は素晴らしいものになることを確信しながら眠りにつくのであった。





「ちょっと!いつまで寝てんのよ!早く起きなさい!」


 朝っぱらからうるさいな…。


「休みの日くらいもう少し寝かしてくれよ……」


 寝ボケた目をうっすら開けると、母が立っていた。予定がない時は起こされたことがないのに、どうしたんだ?


「何寝ボケてんの?早く起きないと学校遅刻するよ!」


「何言ってんだよ、母さん。今日は土曜日だぜ?」


 どうやら学校があると勘違いしているらしい。俺は再び目を閉じようとする。


「あんたこそ何言ってんの?ほら、早く起きなさい」


 無理やり布団を引っぺがされる。今日の母さんは少しボケているみたいだ。少し苛立ったので強めに「いい加減にしてくれ!」と言ったら、その倍の強さで「確認しなさい!」と返って来た。

 いい迷惑だ、と思いつつもスマホの画面を一応確認してみる。


8:00 6月26日 金曜日


「え?」


 俺は目を疑った。バグか?


「何曜日だった?」


「きんようび……」


「わかったら早く準備しな。ミオナちゃんには先に行ってもらうからね」


 そう言って母は出ていった。俺はまだ混乱していた。

 六月二十六日金曜日、俺がミオナに告白した日。それなのに今日がその日?俺が日にちを間違えていた?いや、そんなはずはない。ずっと前から告白を計画してこの日にすると決めたんだ、間違えるはずがない…。そうだ!【NINE】に履歴が残っているはず!

 急いで確認してみる。


ミオナ〈寝坊したんだって?アキトのお母さんから先に行っていいって言われた

    から先に行くから。遅れないようにね。〉


 先程届いたこのメッセージが最新のものだった。その上をいくら確認しても、昨日あれほどニヤニヤしながら見ていたメッセージは見つからなかった。


 どうなってるんだ?俺がおかしいのか?

 とりあえず今日が金曜ということと現在時刻が8:00だということだけわかったので、急いで準備して家を出ることにした。





 全力疾走の甲斐あって、ギリギリ遅刻は免れた。

 ハァハァと息を切らし、汗を拭きとろうとしたのだが、急いでいたのでハンカチを忘れてしまった。

 「ない、ない」とバタバタしていると、横からすっと、ハンカチを渡すように手が伸びる。


「はい、これ。間に合ってよかったね」


 その手はミオナのものだった。


「あ、ああ、ありがと。でも使っていいのか?」


 ミオナの綺麗なハンカチを俺の汗で汚してしまうのはさすがに躊躇ってしまう。


「いいよ別に。アキトなら」


 優しく微笑むミオナは煌めくエフェクトがかかっているように見える。

 皆さん、天使はここにいました。

 「では遠慮なく」と受け取って汗を拭く。


「遅れた理由は寝坊?」


「まあそうなんだけど……」


「どうせ夜更かしでもしてたんでしょ?駄目だよ?ちゃんと寝ないと」


「まったくその通りなんだけど……。なあ、昨日のこと覚えてるか?放課後の……教室でのこと……」


「覚えてるけど……。教室?昨日は真っ直ぐ家に帰ったよね?」


 え?


「そ、そうだっけ?昨日…なんか大事な話しなかったっけ?」


「んー……。そんな大事な話したかな?ごめん…忘れちゃった。何の話だっけ?」


「そんな……昨日の―――」


 キーンコーンカーンコーンと始業のチャイムと同時に「はい席に着けー」と先生が入って来た。


「時間だから戻るね」


 席に戻るミオナの背中は、なんだか遠く感じた。

ということでこれからボチボチ投稿していきます!

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