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山姥切殺し  作者: しゅうか
本編
6/16

2.鬼女の家

※BGM 妖虫

※場所 鬼女の家【表】玄関

【長義】

てっきり怪異だらけかと思ったけど、何の気配もないね。

【南泉】

うーん。

けど、なんかすげぇ嫌な感じがするにゃ。

【長義】

そうか。

なら、警戒はしておこうかな。

【南泉】

……なぁ、山姥切長義。

【山姥切】

何かな。

【南泉】

山姥切国広が、ここに居なかったらどうすんだ。

また別の場所を探すのか?

流石に、延々と付き合う気はねぇぞ。

【山姥切】

それはありえないと思うよ。

俺はそいつを――矢切長義を信頼している。同じ山姥切だからね。

その彼が紹介してくれた術者が、ここに居ると断言した。

なら、あいつは必ずここに居る。

だから、これが最初で最後だ。

【長義】

俺に術者を紹介した覚えはないけど……。

そもそも、何故こんな危険な依頼を引き受けたのかも覚えてないし。

まぁ何にしろ、次は断るから安心していいよ。

【南泉】

頼むから、そうしてくれ。

それじゃあ、とっとと終わらせて帰ろうぜ。

※鬼女の家【表】水鏡の間へ移動

〔テキスト〕

部屋の東側半分は床が二メートルほど低くなっており、そこに水が溜められていた。

濡れた時に拭きやすくするためか、床は板張りになっている。

部屋のもう半分、西側には花瓶が飾られたサイドテーブル、リビングテーブルと椅子がある。

椅子には少女の人形が一体飾られ、リビングテーブルの上には徳利とトランプが置かれていた。

トランプは神経衰弱の形で並べられていおり、お猪口も二人分用意されていたが、少女の対戦相手はいない。

※水場を調べる


※BGM 無音

※場所 鬼女の家【ウラ】鏡の間

【???】

をい、あんた! 起きろ!

【国広】

…………ん? うーん。

〔テキスト〕

矢切国広が目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。

部屋の西側半分は二メートルほど床が低くなっており、そこに水が溜められている。

床が濡れた時に拭きやすくするためか、床は板張りになっていた。

部屋のもう半分、東側には小さなサイドテーブル、リビングテーブルと椅子がある。

サイドテーブルは本来花瓶か何かを飾るのだろうが、今は何も乗っていない。

椅子には少女の人形が二体向かい合って座っており、リビングテーブルは神経衰弱の形をしたトランプが置いてある。

そんな部屋の中で、国広と同じ顔をした男が立っていた。

ブレザーのような服の上から武具を身に着け、鉢巻を巻いている。

その肌はやや鈍色がかっており、左目がくり貫かれ大きな空洞を作っていた。

※BGM 妖虫

[?]+国広

【国広】

……あんたは?

【???】

……俺は、山姥切国広。

足利城主長尾顕長の依頼で打たれた刀で、堀川国広第一の傑作で、諏訪国の審神者 竜樹(たつき)のための刀だった。

【国広】

……すまん。

よく分からない単語が沢山出てきて、処理しきれなかったんだが。

【???】

山姥切国広。

それ以外に名を持ち合わせていない。

最も、今の俺をそう呼んでいいかは分からんが。

【国広】

俺は、矢切国広。

あんたのことは、山姥切と呼べばいいのか?

【???】

いや、それだと怒りそうな奴がいるからやめてくれ。

そうだな……キリクニでいい。

【国広】

分かった、キリクニ。

それにしてもあんた、大丈夫か?

【キリクニ】

何がだ。

【国広】

俺は過去にも、あんたと同じような、俺と同じ顔をした奴に会ったことがある。

そいつらは体が透けていたりはしたが、両目があったし、肌の色も普通だった。

けどあんたは左目がないし、肌も普通とは違う。

【キリクニ】

気にするな。

俺がそいつらとは、少し違うだけの話だ。

【国広】

それだけなら、いいが。

それで、ここは一体どこなんだ。

【キリクニ】

ここは、鬼女と呼ばれる化け物の棲家だ。

あんたは、その化け物に攫われて来たんだ。

覚えているか?

【国広】

…………そうだ。

大学の前に妙な女が立っていて、気が付いたらそいつに担がれて、運ばれて。

物凄いスピードで走ってたから、いつの間にか気を失って。

あ、もしかして、あんたも攫われてきたのか?

【キリクニ】

……ああ、随分昔にな。

【???】

にゃ、にゃんだこれ!

〔!〕+キリクニ

〔?〕+国広

【???】

これは……どこか別の場所が写っているのかな。

【???】

それより、なんなんにゃ向こう側のこの瘴気は!

こんなの、俺達でも半日持てばいい方だぞ!

【国広】

この声、南泉と長義だ!

〔…〕+キリクニ

※国広・キリクニ 水場の前に立つ

【国広】

長義! 南泉!

【山姥切】

……。

【長義】

くに……ひろ?

【南泉】

山姥切国広も居るにゃ!

をい、これって……。

【長義】

くそ、やられた!

【国広】

長義?

【長義】

……いや、なんでもないよ。

それより国広、体に異常はないか?

どこか痛んだり、不快感や違和感を感じたりはないかな。

【国広】

え? あ、ああ。大丈夫だ。

【キリクニ】

こいつは、今しばらくは大丈夫だ。

それより、お前達に頼みたいことがある。

ここから出るのを手伝ってほしい。

【山姥切】

……。

【長義】

もとより、そのつもりで来たんだよ。

それで、お前は何を掴んでいるのかな。

【キリクニ】

一応、ここから出る方法なら把握している。

お前達が居るのは、鬼女の家。その表側だ。

獲物となる人間を招くための場所になる。

対して俺達が居るのは、裏側。

所謂神域と呼ばれる場所で、実際に鬼女が住んでいるのはこちら側になる。

【キリクニ】

この表と裏は対になっていて、特に今いる水鏡の間は間取りが表と裏で全く同じなんだ。

ただ内装は少し違っているはずだ。

その内装を全く同じにした時、この水が表と裏を繋ぐ出入口になる。

具体的にどうすればいいかと言うと……とりあえず、そっちに何があるか教えてくれないか。

【長義】

椅子付きの大きいリビングテーブルが一つに、サイドテーブルが一つ。

リビングテーブルには、酒とトランプが置かれている。

片方の椅子に人形が一体座っていて、向かい側の椅子は不自然に空いてるな。

サイドテーブルの方は、花瓶が置いてある。

後は、何もないかな。

【キリクニ】

なら、お前達は人形を探してくれ。

こちらでは、人形が向かい合って座っているんだ。

俺達は、花瓶と酒を探す。

【長義】

分かった、任せておけ。

【南泉】

それにしてもお前、よくそんなことが分かったにゃ。

【キリクニ】

ああ、簡単だ。

あいつが、鬼女が教えてくれたからな。

【南泉】

何のために。

そいつの得になるようなことなんて、何もないだろ。

【キリクニ】

まぁ、俺への嫌がらせがあの化け物の趣味だからな。

あの化け物は、山姥切がここに来ることはないと思っていた。

この出口は、外の人間が居なければ使うことができない。

つまり山姥切が来なければ、俺は外に出られない。

とことん絶望的な癖して希望はあるから、完全に諦めることもできない。

絶対に出られないより、その方がたちが悪い。

どうせ、そんな風に考えたんだろう。

【山姥切】

……。

まるで、お前は俺を信じていたみたいな言い草だね。

【キリクニ】

……さぁ、どうだろうな。

【南泉】

……。

あー、その、変なこと聞いて悪かったな。

【キリクニ】

いや、気にするな。

【長義】

山姥切国広。

【キリクニ】

なんだ。

【長義】

矢切国広を頼む。

俺は、そこには行けないから。

【キリクニ】

出来る限りのことは、やってやる。

今は、それしか言ってやれない。

【長義】

それで十分だ。

では、また。

※キリクニ・国広 向かい合う。

【キリクニ】

では、行くか。

【国広】

ちょっと待ってくれ。

さっきのしばらく大丈夫って、どういう意味だ。

それに、あんたは大丈夫なのか?

【キリクニ】

ん?

ああ、ここは瘴気が濃いんだ。

霊力のない普通の人間なら、瞬く間にその瘴気に当てられてしまう。

俺は、一応付喪神だからな。

心配しなくても、あんたよりは持つさ。

【国広】

でも、俺はなんともないぞ。

【キリクニ】

あんたは、その鞄に付けた石が守ってくれている。

それでも限界はあるが、しばらくは大丈夫だ。

【国広】

鞄の石……あ、守り石!

そうか、長義が守ってくれていたのか。

【キリクニ】

長義?

【国広】

ああ、さっきあんたと話してた銀髪の方。

俺の……恋人なんだ。

この石は、長義が居ない時も俺を守れるようにって長義が。

【キリクニ】

そうか。

なら、長義とその石の為にも頑張らないとな。

〔アイテムテキスト〕

守り石

長義がくれた瑠璃色の守り石

いつも国広を守っている


※場所 鬼女の家【表】水鏡の間

※南泉・長義・山姥切 水場の前に並んでいる。

※長義 山姥切の方を向く。

【長義】

さて、山姥切長義。

後は頼んだよ。

悔しいが、俺達は今あった事を忘れてしまうだろうから。

【山姥切】

分かっているよ。

元々俺は、偽物くんを助けに来たんだからね。

今だって、それは変わらない。

〔…〕+長義

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