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出発しようとしたら

窃盗団が捕まったことで大盛り上がりとなった街でたっぷり休息した俺達は、そろそろ出発しようという事になったので、準備のために食料や装備品それに回復薬を調達しようとしたのが。


「どうしてこんな物しかないのよ!この体力回復薬も魔力回復薬もほとんど水みたいな粗悪品じゃない!」

「す、すいません!本当にこれしかないんです!」

街で回復薬を買うために入った店全てでこの有様だ。

「だからどうしてだって聞いてるでしょ!」

「は、はい!そ、それは全部窃盗団が悪いんです!」

「はあ?」

店主の話を聞くと、なんでも窃盗団が高級なものからほとんど価値の無いような物まで、ありとあらゆる回復薬を盗んだそうだ。

「盗まれたなら、新しく作ったのはないの?」

「そ、それが…」

薬だけならまだしも、高級なものからほとんど価値の無いような物まで、ありとあらゆる回復薬の原料までも盗んだそうだ。

「なんですって…」

それに怒った街の人々が、総力をあげて件の窃盗団を捕まえたというのが今回の裏事情らしい。

「本当に申し訳ありません…」

この状況で満足に商売しろというのも酷だろう。

だが、その次の言葉で予想以上に事態がおもわしくない事が判明する。

「ですので、うちの店には本当にそれだけしかありません。他の店も同じようなものでしょう。

まともなものが入ってくる日なんていつになるか分かりません」

「なんて事…」

『回復の魔法が使える人間がいれば回復薬など必要ない』と思われがちだが、そうではない。

魔法を使うにも時間がかかるし、回数制限もあるし、第一戦闘中に落ち着いて回復魔法を使える状況になるなんて事はそうそうない。

その点、飲めばすぐ効く回復薬は戦闘中に使用するには魔法よりも重要なのだ。

それが手に入らないという事は、行動にかなりの制限がつくことと同義である。

どうしたものかと考えていると、わずかな光がさした。

「幸いと言ってはなんですが、盗まれる前にここから先の村へ何本か送りました。もしかしたら何本か残っているかもしれません」

「そう!ありがとう!」



「という訳で、薬を買う事は出来なかったわ。でも、この先の村に急いで行けば少し手に入るかもしれない!」

「それなら安心ですね」

「それまでの間は、私がその分頑張って回復魔法を使いますから!」

「そうだな、いまはそれしかないな。なるべく早くその回復薬が運ばれたという村に行って、分けてもらえないか頼もう。早く行けばそれだけ残ってる可能性がある」

「それしかありませんね」

「途中はなるべく戦わずに、戦っても負傷しないように最初から全力で行こう」

「はい!」





「魔王様、勇者を監視させている者から連絡がありました」

「なんと言ってきた」

「『勇者出発す。計画どおり』と」

「そうか。ではそのまま進んでもらおう」

「はっ」

「それから、あの店主にはちゃんと褒美をやっておけよ」

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