回復薬が使われた理由
時間を昨日、勇者一行が村長の家を去った頃に戻そう。
「あなた、本当にすみません。私が怪我をしたばっかりに…」
顔を真っ青にして謝る妻に、村長は慰めの言葉をかける事しかできなかった。
「何を言ってるんだ。薬を使わなければ、お前もお腹の中の子供も助からなかったんだ」
「でも、私が怪我をしなければ、回復薬を勇者様にお渡しできたのに」
そう。回復薬が街から運ばれたのは、村長の奥さんに使う為だったのだ。
「偶然さ。お前は何も悪くないし、悪く考える必要なんてこれっぽっちもない。
さ、勇者様たちと会うなんて緊張したろ?少し休んでくると良い」
そう言って、寝室に向かう妻を見送りながら村長は呟いた。
「あの時は魔族にだって感謝したくらいなのにな…」
時間はもう少し前にさかのぼる。
「すみません、あなた。私はもう駄目みたいです」
すこし前に怪我をした妻は回復が思わしくなく、そう遠くないうちに死ぬだろうと思われていた。
回復薬を使えば助かるだろうが、この村に薬なんてものがあるはずも無い。
街まで買いに行けば手に入るだろうが、往復している間に妻は死ぬかもしれないと思うと
側から離れたくはない。
「お前の嫁は死にそうらしいな」
「だ、誰だ!」
「俺か?魔族だよ」
「ぎゃあああああああああああああああああああっ!」
「おいおい、そんなに驚くなよ。人が来るぜ?」
「お、お助け…」
「ああ、別にお前を殺そうとかそんなんじゃない。良い話を持ってきたんだよ」
「ま、ま、ぞくの、は、はな、し、な」
「最後まで聞けば嫁は助かるかもしれないぜ?」
「な、な、に」
「びびってろくに口もきけねえのかよ…。まあいいか、とりあえず用件だけ言うぜ。俺の頼みは
俺の代りに街へ行って魔力回復薬を買ってきて欲しいんだ。受けてくれるんだったら、俺達の魔法でお前を街の近くまで運んでやろう。」
「な、な、んだ」
「ちゃんと買えたなら、帰りも送ってやろう。そうだな、行きと合わせて一日あれば帰ってこれるようにしてやる。どうだ?」
「だ、だ、から」
「あー頭も回ってねえのか…しょうがねえ、ちょいと魔法使うか。≪落ち着け≫」
「あ、ああ。ちょっと落ち着いたぜ」
「よーし、少しは話ができるようになったな。さっきまで俺がしてた話、理解できてるか?」
「い、いや」
「やっぱ駄目か。もう一度言うぜ。俺の代りに街で魔力回復薬を買ってきてくれ。報酬として幾らかの金と、街の近くまで魔法で運んでやる。これで理解したか?」
「ああ、分かった」
つまりこの話を受ければ街と村を早く往復できる。少しの間なら妻はもつだろう。
「よし、その話受けた。」
「あの話を受けなければ、どうなっていたんだろうな…」
そう思いながら村長は眠りについた。
翌朝起きると妻の姿が見当たらず、ようやく見つけた時には首をつって死んでいたのだった…。




