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領主の娘ですが旅にでます。  作者: 藤和
第1章
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学園2

やって来た衛兵に山賊たちを引き渡して、

それからはこれといったトラブルは無く王都に着いた。

王都についてまずは住む寮に向かい寮母さんに挨拶した。寮母さんはほんわかした見た目だけど護衛にいた魔法師の女性の荒事にも対処できるっていうような気配?みたいなのが感じられた。


「今日からお世話になります。ティア・クレインハイトと申します。」


「ここの女子寮の寮監を務めています。ソレアと申します。これからよろしくお願いしますね。ところで、ティアさん荷物はこれだけですか?」


ソレアさんは私の持つ小さめの鞄を見てそう聞いてくる。


「これは魔法鞄なので容量は見た目以上ですし、他にも魔道具の中に収納してある荷物もあります。」


そう答えるとソレアさんは


「魔法鞄に収納の魔道具ですか。なるほどそれならばその鞄一つですみますね。」


驚きつつ私が小さい鞄一つで来た理由に納得したようだ。


(この鞄自作なことを教えたらひっくり返りそうね。)


私がそう考えている間にも話しは進んで


「これがあなたの部屋の鍵よ。無くしたらお金かかるから失くさないようにね。」


鍵を渡された私は部屋へ向かった。


部屋は4畳半くらいでその中にクローゼット、ベッド、机と椅子があった。


(部屋の大きさは普通ね。日当たりもいいし、クローゼットの大きさもちょうどいい。うん。文句ない部屋ね。)


部屋に納得しながら荷物を取り出して整理する。


整理整頓が終わればあとは暇である。2日後に最初の実力を見る試験があるが筆記に関しては私にとっては内容がすごく簡単だから問題ない。魔法は全適正が最大なのでどの魔法使っても高い成績が出せるだろう。問題はどの魔法を使うかである。馬車の中でも考えていたけどなかなか決まらない。


(試験形式は10メートル離れた場所にある的に向かって魔法を撃つというもの。10メートルくらいなら普通に狙えるし、どれにしよう。)


ティクルを幻想の箱庭から出して抱きしめつつ試験で使う魔法を考える。


候補として

焔鼬 炎を鼬の姿にして操る

赤熱の抱擁 相手の周りの温度を高温にする

炎王 自身を炎でできた巨人の上半身で覆って内部から巨人を操作する

万雷 無数の雷を周囲の敵に落とす。

雷来弓 雷の弓矢を射て矢が刺さった場所付近に雷を落とす。

雷虎 雷を虎の姿にして操る

雷帝 自身を雷でできた巨人の上半身で覆って内部から巨人を操作する

竜巻 目標の所に竜巻をおこす

風牙 風でできた牙で目標を砕く

風鷹 風を鷹の姿にして操る

風王 自身を風でできた巨人の上半身で覆って内部から巨人を操作する

とかかなぁ。


(うーーん。万雷はもともと範囲攻撃用だから今回は合わないかな。炎王、雷帝、風王は近くにいる人も巻き込みそうだし。となると焔鼬、雷来弓、雷虎、竜巻、風鷹といったところかなぁ。まあ後は他の子のを見ながら考えよっと。)


試験に使う魔法について考えるのはここまでにしてティクルの毛並みを堪能する。


文明が低下してしまった今、普通10歳であれば多くて3つくらいしか魔法は使えない。そのため限られた魔法の中で一番得意なものを選ぶ。そんな彼らにこの悩みを言おうものなら馬鹿にされたと怒りそうである。


そんなこと気にもしていないティアはティクルと戯れながら王都での初日を過ごした。


2日がたち、学園への入学と実力試験の日となった。


入学式は教員と入学生と少人数の親だけで行われ、だいぶ質素なものだった。学園長の長い話も無く楽だったけど。


式が終われば次は実力試験である。まず始めは筆記試験。教室で試験の説明を受けて試験が始まる。内容は地理、歴史、算数でどれもクレインハイト領では8歳くらいの商家や魔工技師の子であれば解けるようなものばかりだった。もちろん私も余裕で解けた。試験終了時間より早く終わってしまい暇になった私は魔道具の構想を練って時間をつぶした。


次は実技、初めは運動能力の測定、運動は中庭や何故作ったのか分からない地下のトレーニングルームを使っていたから運動神経には自信がある。本気でやったら全測定種目でぶっちぎりのトップに立った。


最後は魔法の試験一人一人魔法を撃っていくが

「炎よ、我が前に集いて敵を撃て ファイヤーボール」

「水よ、敵を打ち抜け ウォーターショット」

「風よ、吹き荒れ敵を切り裂け ウインドボール」


あまり役立ってる様には見えない詠唱に使用した魔力に対して威力の低すぎる魔法。

(魔力量に対して威力が弱いなぁ。魔力の魔法への変換効率が悪い。ほとんど無駄になってるじゃん。あんなに魔力こめなくてもちゃんと変換できてりゃ倍の威力が出せるのに。イメージ不足だね。)


案の定10人ほど魔法を撃ったのに的には一切傷が付いていない。


「次、ローザ・フラインスウッド。」


私の前の子が呼ばれた。ローザと呼ばれた子は試験官のところへ行き、的へ魔法を打つ。


「炎よ、集え我が前に、火球となりて我が敵を撃て ファイヤーボール」


(まだ無駄があるけどかなり魔力変換効率がいい。魔法も安定しているし、あれならあの的の魔力障壁くらいは割れそうね。)


火球は窓に向かって飛び、的にかけられていた魔法障壁を割って的を焦がして消滅した。


「魔法障壁を割るとは素晴らしいな。もしかしたら卒業までに的を壊せるかもしれないな。」


(あの子、これから次第ではかなりの使い手になりそう。)


戻って来る彼女を見ながらそう考えていると


「次、ティア・クレインハイト。」


私の番になったので試験官のところへ行く。


「その位置からあそこにある的に向かって魔法を撃ってくれ。」


そう言われて的を見る。的は木の丸太を魔法で強化したものの様だ。

私は左手を前に出して魔法を発動させていく。

まずは左手から雷の弓を作り出す。それを見た試験官の驚く気配がする。

右手に矢を作り番る。弓を引きしぼり矢を放つ。

矢が一度も壊れていない的に突き刺さったのを見て後ろを向く。途中的に矢が刺さったのを見てさらに驚いている試験官の姿が見えた。


「雷来弓」


魔法の名前を呟いたと同時に的の上空から雷が落ち的を黒焦げにした。


魔法を撃った生徒に対して一言伝えていた試験官が何も話さないから試験官の方を見ると


「・・・」


どうやら驚きすぎて口が開いたまま黒焦げになった的を見て動かなくなっていた。また他の生徒の方も言葉が出ない様で全員固まっていた。


(やっぱりこうなったかぁ)


このままでは試験が終わらないので試験官を再起させる。


「あのー。」


試験官に声をかけるとハッとして


「まさか的を破壊できるとは凄いな。」


その言葉を聞いて待機場所に戻る。


「それじゃあ次、」


この後も試験が続けられたが的を傷つけれたのは二人だけだった。



------------------------------------------

私、ローザ・フラインスウッドはフラインスウッド子爵家の次女として生まれた。フラインスウッド子爵家は王都から離れた場所に領地を持つ裕福とは言えないが貧乏とも言えない家である。

私の姉は優秀だった。教えられた事はすぐに理解することが出来た。

そんな姉に私はよく比べられた。周りの人は姉は出来がいいのにとか何故そんなことすら出来ないのかって散々言われた。

そんな私が姉より才能があったのは魔法だった。私は火と雷の属性に適性があり、同じ属性に適性があった姉より適正値は上だった。でも褒められるのは姉で私の方は姉と魔法の教師だけしか見てくれなかった。

誰も私自身を見てくれない。私の努力を見てくれない。そんな家が私は嫌いだった。


姉は領地を継ぐために上級学園に入学することになったけど継ぐものがない私は二人も上級学園に入学させる金が無いこともあり、下級学園に入学することになった。

私にはちょうど良かった。女の子が下級学園を卒業した後は商家に嫁ぐか冒険者となるか親の決めた知らない貴族の妾になるかの三択になる。どれを選んでもあの家からは出られるのだから。

少しでもいい条件を手にする為私は学園内で上位の成績が取れるよう努力した。特に魔法は毎日魔力がからになる寸前まで使い続けた。

そして学園に入学する日になり、実力試験を受けた。筆記は今まで勉強してきた甲斐があり問題なく解けた。

運動能力は暇があったら運動してた為上位に入る事はできた。

そして魔法の試験

私はかなり自信があった。一人一人魔法を的に向かって打っていく。

私の番になった。私が使うのは一番練習したファイヤーボールの魔法。

落ち着いて的を見る。


「炎よ、集え我が前に、火球となりて我が敵を撃て ファイヤーボール」


これまでの中で一番のファイヤーボールだった。私の魔法は魔力障壁を割って的に焦げ目をつけることが出来た。


「魔法障壁を割るとは素晴らしいな。もしかしたら卒業までに的を壊せるかもしれないな。」


魔法の教師だった人以外に初めて褒められた。それが嬉しかった。


「次、ティア・クレインハイト。」


私が戻ると次の子が呼ばれた。ティア・クレインハイト、クレインハイト侯爵家の子で運動能力試験で周りと大きな差をつけて一番の成績を残した子。普通ならこんな下級学園に入れられるはずがないその子がどんな魔法を使うのか。私はすごく興味があった。そんな余裕は魔法の発動とともに消え去った。


彼女の魔法は圧倒的だった。雷の弓矢を作り出し、それで魔法障壁ごと的を射抜き、最後に雷で的を黒焦げにした。

私たちのような無駄が無く、物凄く美しい魔法だった。

私はその魔法に見惚れた。そして憧れた。私もあんな風に魔法が撃てるようになりたいと思うようになった。


(目指すはあんな風な魔法ね)


この日空っぽだった私に一つの目標が出来た。

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