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彼女に弱者は似合わない  作者: 藍川 潤
5/5

ミファレシアは脱力した



「君こそ怪我はしていないか?」


再度問われて、一瞬呆けていたのをハッとして慌ててこたえるミファレシア。


「いえっ、はい。怪我などしておりませんわ!」


うっかりしていたのはこちらだし、しかもお召し物が少し汚れてしまっているわ!!ど、どうしま・・


「そうかい、ならよかった」


よくはないです!!と言いそうになるのをこらえて、とりあえず周囲がなんだなんだとみてくるのを回避するために相手の許可を得ずに腕をつかんで、ミファレシアたちはカフェテリアをそのまま出て行ってしまった。


※※※



「うん、火傷も軽症のようだし大丈夫だと思うよ」


「ありがとうございますわ、それでは失礼します」


大急ぎで医務室に連れて行き、ちょうどお茶を飲んでた医師に診てもらってホッと一息をいれるミファレシア。隣には、着替えた煉瓦色の髪の男性が立っていた。


「お召し物の損害費用はこちらにご請求ください。先ほどは本当に申し訳ございませんでした」


そう言って、カードを両手で差し出す。

ミファレシアが経営している店が表記されていて、商人連中が〝名刺″と呼ぶものだ。


一応、ミファレシアは自分で起業している。父親に投資してもらってはいたが、それも半年前から黒字を出せるようになっていた。学生でありながら、起業家としてのミファレシアを知るものは数少なく、学生で知っているのはマリアとその婚約者どのぐらいである。


「・・・」


しげしげとカードを見つめる男性に


「それでは、こちらで失礼します。私、ちょっと探し物をしなくてはいけないので・・」


「探し物?」


「えぇ、実はー」


ミファレシアはどうやら自分が考えてるいるよりも参っていたらしい。いつもは他人に事情をぶちまけることはしない彼女にしてはうっかり話してしまった。


「ーというわけで、あれこれ考え事をしていたところでした。本当に申し訳ございませんでした」


ハッと思い出して再度謝罪すると


「謝罪は一度受け取ったから構わないよ。それより君の悩み事を解決できるものがあるのだがどうかな?」


はい?



――――カラーン、カラーン


「おや、昼休みが終わったようだ。それでは、また後日。こちらから連絡するのでそのときにお見せしよう」


「え、あの・・」


と、あまりの展開の速さにさすがのミファレシアも状況についていけず言葉をだそうとするのも、相手はこちらからクルリと背を向けてそのまま歩き出してしまった。



「選択しさえ与えてもらえなかったわ・・・」


呆然としつつも自分も講義室に向かわねばと歩き始めると、眼前に先ほどの人物が廊下の真ん中に突っ立っていて何をしているのかと思えば、こちらに気づいた様子でこう口を開いた。




「すまないが、第2研究室はどこに行けばいいのだろうか?」







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