第8話『同棲時代・再会』
※実話小説なので、そのまま書いていますが、
未成年の飲酒は法律で禁じられています。
私の過去の過ちであり大変反省しています。
絶対に真似しないで下さい。
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松尾リク(主人公)
筒井君(筒井道隆さん風)
ユースケ君(ユースケサンタマリアさん風)
葛山君(葛山信吾さん風)
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最愛の筒井君と、将来を誓い合ったまま別れたのが六月終わり。
四歳年上の葛山君と付き合い始めていたのがその二か月ほど前、G.W頃。
筒井君は実家だったし受験生だったから
いつでも、いつまでも、一緒に過ごすという訳にはいかなかった。
でも葛山君は会社の独身寮に住んでいて自由だったし、
私は独り暮らしだったから、
二人でいっつも、いつまででも一緒に過ごしていられた。
もっと一緒に居たい、寂しい、
そう思ってるのに帰ってしまう人よりも、
もっと一緒に居たいと思えばいくらでもそばに居て
寂しくなんてさせない人、
そのことが余計に彼にハマってしまう原因でもあったように思う。
五月に知り合ってデートを重ね、
六月になる頃には、だんだん彼が私の家に泊ることが多くなり、
そのうち着替えだとか何かと葛山君の物が私の家の中に増えてきて…
「一緒に住んじゃおうか。」
彼の口からそんな言葉がポロっと出るようになった。
それが最大の落し穴だった。
大人ぶってても実は子供だった19の私は、
そうでなくても葛山君との毎日に浮かれていて舞い上がっていたから、
<一緒に暮らす>ことを<結婚>を切り出されたかのように
イメージしてしまっていた。
葛山君が私との結婚を考えているのだと
思い込んでしまったのだった。
19歳同士の恋愛の中では
<結婚>はリアリティが無い先の事でしかなかったが、
私にとって社会人で23歳の彼はとても大人の世界の人に見えて、
結婚もリアルな事のように思えたのだ。
<結婚>というものに訳もわからずやたらと憧れる時期が
女の子にはありがちで、
19の私の頭の中は
どんどん<結婚>が膨らんで膨らんで、
突進していた。
七月になって葛山君が私の家に引っ越してきた。
彼と一緒に暮らす事を
私はまるで結婚することのように感じていた。
彼との二人暮らしはまるで当時のトレンディドラマのように
お洒落で甘い生活…。
私はすっかり酔いしれていた。
朝食はフランスパンにヨーグルト、フルーツ…
二人一緒に家を出て出勤、
夜は早く帰った方が作る。
時には仕事帰りに待ち合わせて食事に、呑みに出掛けた。
ただこれだけでも
19の私は<お洒落で甘い大人な生活>だと舞い上がれた。
彼はアパレルメーカーの営業だったから私の勤めるデパートにも
仕事でよく来ていたし、逢引きは簡単だった。
二人でワインを買って帰り、
部屋を暗めの間接照明にしてジャズを聴きながらくつろぎ、
カフェバーの雰囲気を部屋でも…
そしてSEXをした。
SEXの相性があまりにも良かったということも
離れられなくなった原因のひとつなのかもしれない。
別に彼はSEX好きという風ではなかったし、
その淡泊な感じが私には心地よかった。
でもいざSEXとなるととても激しく、そして
とってもやさしく私の身体のすみずみまでを愛してくれた。
休みの日には二人で食料品を買出しにいき、
レンタルビデオ店に行って、
のんびりと家で映画を観たり…
(当時はまだ家庭用ビデオデッキがそれほど普及していなくて、
若い独り暮しでビデオデッキを持ってる人は少なかったから、
カウチポテトでビデオ鑑賞ってのが、
なんだかお洒落な過ごし方だった時代。)
時にはドライブに出掛けたり…
とにかく幼稚な私にはドラマの中にいるようで、
毎日を浮かれた気分。
本当に浮かれて暮らしていた。
けれど、あれほど愛しあって、
最後まで捨て切れなかった筒井君のことを
すぐに忘れてしまえた訳ではなかった。
それまでの三年間の生活のベースに常にあった彼を
簡単に忘れられる訳がなかった。
私がそうであるように筒井君も同じだった。
時々こっそり筒井君と会っていた。
ある時、葛山君が昔の彼女に誘われて
コンサートに行くことになった。
「信用してるし、構わないから行っておいでよ。」
物わかりの良い大人ぶって言った私は、
同じ日に筒井君とデートし、筒井君と寝た。
そんなこともあった。
当時流行っていたトレンディドラマに
「男女7人秋物語」、「同・級・生」というのがあって、
そのストーリーの主人公に自分の姿を重ねてみていた。
別れて別の人といるけれど、
別れた恋人のことを強く想う主人公…
そんな自分に酔っていた。
バカだった。
そうして私はハタチになった。
葛山君からとてもお洒落で素敵なネックレスを
誕生日にプレゼントされて、
その時、
急に去年の19の誕生日のことを思い出し、たまらなくなった…
バイト時代に付き合っていたユースケ君。
19の誕生日に彼にもらったピアスを大切にしていた。
とても愛していたのに同時進行だったという苦しさから
想いを残したまま別れてしまった彼。
ハタチを迎える数カ月前、
七月の半ば頃から駅のホームや電車の中でバッタリ二〜三度会って、
一言二言どぎまぎと挨拶を交したことがあった。
嫌な顔したり無視したりしないでいてくれることが私の心を救った。
彼がバイトに入っているという日に、
思いきって店に行ってみた。
あの別れの手紙を書いてから、
「リクの事ちゃんと忘れたいから店にはしばらく顔を出さないで欲しい。」
と言われたこともあった。
だから店に行くのは本当はとても怖かった。
理不尽な別れを言った私のこと怒っているかもしれないし…
店に行くと、偶然にもちょうど彼はバイト上がりの時間。
「じゃあ、せっかく来たんだし、一緒にお茶でもするか?」
そう言ってくれて、
久しぶりに少し話すことが出来た。
とりあえず嫌な顔しないで会ってくれるので、
なんだかとっても嬉しくて、
逢いたくてしょうがないと思うようになっていた。
逢ってもっと話したいことがいっぱいある。
あんな別れのままで終わりたくない。
そうして思い悩み続けたあげく、
ついに思いきって彼に電話をすることにした。
彼の就職のことも気になっていたし、
話してみて、また逢ってくれそうなら逢いたいなと思って、
電話を掛けた…
断わられるのを覚悟で、
「また逢いたいんだけど。」
と言ってみた。
私の心配をよそに優しくOKしてくれたユースケ君。
別れて半年以上ぶりにデート出来ることになった。
映画を観て、
食事して、
川辺に座ってずっと話していた。
一年前、いきなり理不尽な手紙ひとつで
「好きだけと別れましょう」
なんて言って去った女に、
また急にしゃしゃり出て来られて
迷惑に思ってるのかな?とか
色々考えながらドギマギしたけれど、
とっても温かく会って話をしてくれて、
わだかまりもなく、あの頃の事も笑いまじりにたくさん話してくれた。
とてもとても嬉しかった。
私が愛したユースケ君そのままで変わらず接してくれて。
ますます”これっきりにしたくない”という想いが募った。
「就職が決まったら大阪に行く。」
そう聞いたので余計に、
このまま逢えなくなるなんて嫌!
まだ離れてしまいたくない!
という気持ちでいっぱいになった。
十月になって、
同棲中の葛山君が仕事の都合で
寮に帰る日が多くなっていた時期があった。
私はどうしてもユースケ君にもう一度逢いたくて、
しょうがなかった。
ユースケ君は私の家のすぐそばの大学に通っていて、
近所の喫茶店でバイトしていたから
偶然バッタリ会う事もあったのだけれど、
春がきたら卒業して大阪に行ってしまう…
もうきっとバッタリ逢う事もない。
きっと一生逢えなくなってしまう。
どうしてももっと逢っておきたくて、
何度も大学のそばで偶然を装い待ち伏せてみたりした。
そう簡単には偶然は起こらず、
何時間も待ちぼうけってことが続いた…
そんな事を何日かして、
ある日やっと彼の姿をみつけることが出来た。
<またかよ!>って、いいかげん迷惑そうな顔されても
仕方がないと覚悟してはいた。
でもそこにはあの頃の、
<しょうがない奴だなあ>
って笑ったあの優しい笑顔があった。
その顔を見て私は彼の胸に飛び込みたい気持ちになった。
話しながら駅までしばらく一緒に歩いて…
たまたまやってた縁日の夜店。
私が縁日大好き!って言ってたのを覚えててくれたのか、
「寄ってくか?」
と、さり気なく誘ってくれるユースケ君。
お祭りの中で遊んで、お茶して、
そして私を家まで送り届けてくれた。
家の前で私が別れ難い顔をしていると、
また<しょうがない奴だなあ>というあの笑顔で、
「じゃ、コーヒーでもいれてくれるのか?」
と言ってくれる。
とても嬉しかった。
「でも、俺は帰るぞ、もう昔とは違うんだからな。
電話貸してもらったら帰るから。」
当時ちょうど携帯電話が初めて発売になったばかり。
電話を携帯って何?って、驚いてCM見てたくらいの頃だったから、
まだ誰もヤクザ風の人ですら
携帯電話は持っていなかった時代だったのです。
葛山君の居ない部屋に上がってもらってコーヒーを入れ、
ゆっくり飲みながら一緒に少しくつろいだ。
あの頃に戻ったような時間だった。
私のこと仕事のこと、身体のこと心配してくれる。
「相変わらずおまえは…」
と、私のこと良く良く解ってくれて、優しく気遣ってくれる。
そんな優しくつつんでくれる人だから、
私の気紛れに笑って付き合ってくれていたのかもしれない。
「もう昔とはちがう。」
ユースケ君のその言葉が
私の胸につき刺さってズキンと音を立てた。
「おまえのこと許してやった俺ってなんて心が広いんだろ〜」
冗談まじりに彼が笑う。
切なくて胸がしめつけられる想いがした。
昔、彼が夢中になってた木製のパズル、
「懐かしいなあ。」
そう言ってまた遊び始めるユースケ君。
あーでもないこーでもないと、くつろぎながら遊ぶ。
帰る時間が来てもバズルは完成しなくて、
「持って帰ったら怒る?」
と彼。
パズルを渡して別れた。
またそれで逢えると想って嬉しくて。
数日後、
彼が完成したパズルを持って家にきてくれた。
まさか電話もなく家に突然来るなんて予想外だった。
嬉しかったけれど…、
チャイムが鳴ったその時、
家には同棲中の葛山君が帰ってきていたのだ。
玄関先で、そそくさと受け取るしかなかった。
これきりになってしまうのか…
そう思った次の瞬間。
「あのさ、この前部屋にあった絵を借りたいんだけど、ダメかな?」
私が趣味で描いて飾ってた絵のことだった。
サークルのポスターのデザインに使いたいから貸してほしいという。
私はまたもう一度逢いたい一心で絵を持って帰ってもらった。
思えばあの時、パズルにしても絵にしても、
持って帰ったりしたのは、彼もまたそれをきっかけに逢おうと、
またやり直そうと思っていてくれたのではないか、
なんて思うのはあまりにも図々し過ぎるだろうか…。
数日後、
絵を返しに来てくれた時もやはり突然で、
部屋には葛山君がいた。
玄関先でコソコソと手短なやりとりで終わらざるを得なくなり、
結局それきりユースケ君とは接点がなくなってしまった。
それが彼との最後だった。
心を残したまま二度と逢えない人となってしまった。
だから10年経っても20年経っても…、
今でもふと恋しく思い出すのだろう。
もしもあの時、絵を返しに来てくれた時、
葛山君が部屋にいなかったら…
私とユースケ君はまた始まっていたのだろうか。
葛山君と別れて、ユースケ君とやり直していたら、
私はそのあと辛い目にあわずに済んだのだろうか。
そのあとの人生の波がすべて変わっていただろうけれど、
人生に<タラレバ>なんてない。
第9話『失恋』へ続く
まっすぐな恋をした時代を経て、主人公リクは段々と変わって行ってしまう。
ただまっすぐに恋していただけのハズだったのに、過ちを犯しながら傷付き、
どんどん汚れていく。そしていつしか地獄へ…。
本当は誰よりも<愛>に生きたいのに。リクに真実の愛はみつけられるのか…




