第4話『過ちの始まり』
※実話小説なので、そのまま書いていますが、
未成年の飲酒は法律で禁じられています。
私の過去の過ちであり大変反省しています。
絶対に真似しないで下さい。
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松尾リク(主人公)
筒井君(筒井道隆さん風)
窪塚君(窪塚洋介さん風)
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高校を卒業して、それぞれ別々の新しい生活が始まった。
私は独り暮らしを始め、
朝から晩まで毎日バイトして
生計をたてながら勉強という宅浪生。
筒井君は予備校通いの生活。
高校時代は毎日必ずいっつも一緒にいたのが当然ながら一変した。
あれほどいつも一緒にくっついていた私たちが。
私はとある喫茶店でバイトしはじめた。
入ってすぐにスタッフの皆に、
「彼氏いるの?」
とか聞かれた。
私はただなんとなく初対面の人たちにプライベートな事を話すのが
なんか抵抗あって、照れ臭いような気もして、適当に
「いや、そんな別に…、いないですよ、そんなの」
と誤魔化して答えていた。
18歳の最年少の新人バイト、彼氏無し!
となると、
スタッフの男の子たちは当然チヤホヤしてくれた。
当時の私にはそれは予期せぬことだった。
ただ単に言いにくくて彼氏がいることを言えなかっただけなのに、
日に日に、もう今さら彼氏がいるとは言いだせない状態になってしまってた。
当時の私はまだその辺り、引込み事案な所があったのだ。
だからってどうって事もないだろうと、
もうそのまま放っておく事にした。
筒井君とは私のバイトが早く終わる日に、
待ち合わせて映画に行ったり、
一人暮らしの私の家でゆっくり過ごしたり…
高校時代ほどは逢えないけれど、変わらず真っ直ぐに愛しあっていた。
なにしろ二人は将来を設計し、誓いあっていたのだから。
生涯二人で生きていく、その道筋を二人で色々と描いていた。
自分で言うのも変な話しだけれど、
バイト先のスタッフの間で、
私はどちらかというと評判が良いようだった。
男の子にも、女の子にも。
男の子にはよく
「終わってからどっか行こう!」
と誘われる事があった。
大抵は冗談言って、笑ってかわしていたけど、
もともと<究極の断われない性格>の私だったので、
たまにお茶くらいは付き合ったりすることもあった。
私のバイトは早朝モーニングタイムから夕方までが主で、
朝7時から11時までは厨房係一人と客席係りの私だけ。
11時から客席係りがもう一人増え、夕方5時にはさらにスタッフが増える。
というシフト勤務だった。
朝は厨房にいる男の子と毎日二人きり。
彼はどうも私に気があるらしくしょっちゅう私を誘ってきた。
悪い気はしなかったけれど、
彼氏がいることを言い出せないままの私は
だんだん困ってしまっていた。
その男の子、窪塚君は私と同じ18歳。
あまりに誘ってくるので断りづらくて、
何度かお茶くらいは付き合ったりもしていた。
それほど悪い印象も無かったし。
ある日、やっぱり強引に窪塚君に誘われて小デートとなってしまい、
食事して、呑みに…。
そして困った事になった。
窪塚君が突然、
「やば!終電なくなってる!」
と言うのです。
(昭和62年春。ネットカフェとかそういうの、まだ無い時代です。)
「あ〜あ、うっかりしたな。どっか泊まってかなきゃ…
お願い!絶対なんもしないから一緒に入るだけでいいからホテルついてきて!頼む!」
「そんなの困る!行けない!一人で行きなよ!」
と流石の<断れない症>の私も、こればっかりは何度も断った。
窪塚君は、
「俺を信用しろよお〜、そういうセコイ事する男じゃないって!
一人じゃ入れてくんないんだぜ、あーゆー所って…。だから頼むよ!な!」
そんな押し問答を一時間程繰り返して、
結局、強引な窪塚君に押し切られ、
ついて行くことになってしまった。
部屋に入ってすぐ私は、
「窪塚君、ベッドに寝なよ。私はソファで寝るから。」
と離れたソファに横に陣取った。
窪塚君がベッドで静かになったあとも、
眠れる訳もなくただソッポ向いてソファで横になっていた。
しばらくして窪塚君が、
「やっぱそんなんじゃ眠れないだろ、なんにもしないって言ってんだから、
広いこっちで寝ろよ。俺は端っこに離れてるからさ。信用しろってば。」
私は、
「その手には乗らない!」
窪塚君は、
「いい加減信用しろ!っつーか自意識過剰だぜ、怒るぞ!」
またそんな押し問答が続き、
結局根負けして私と窪塚君はベッドの端と端に背を向け合って眠った。
お酒を飲んでたのであっと言う間に少し眠りに落ちて、
明け方になってふと意識が戻りかけた。
ボンヤリ夢うつつの状態の中で、
「あー良かった。何事もなくて…」
そうしてまたウトウトと、睡魔に引きずり込まれていった。
なんだか疲れてすごく朦朧としていた。
その時、夢なのか現実なのか良く解らない混乱の中、
窪塚君が私に襲いかかってきた。
彼は初めからそのつもりだったのか、
それとも理性をもちきれなくなって気が変わったのか、
よく分からないけれど、
もうその時には止められない状態だった。
私は朦朧としながらも当然抵抗した。
逃げようとした。
けれど、抵抗しきれなくなった。
窪塚君のせいだけではなく、
私が抵抗しきることが出来なかった。
その時なぜ私は抵抗しきれなかったのか、
何を思ったのか、
訳がわからない状態だったけれど、
とにかく正論で語れない私の中の一面を
自分でも初めてみた衝撃的な瞬間だった。
好奇心?なんだか分からない妙な気持ちだ。
必死に抵抗していたハズなのに、
途中から窪塚君に身を任せてしまっている自分がいたのだ。
説明出来ない自分の行動。
認めたくない自分の衝動。
#
翌日、私は死んでしまいたい気持ちだった。
これは悪夢なんだと思いたかった。
けれど夢なんかじゃない。
とんでもない事をしてしまった…
もう頭がどうかなりそうだった。
筒井君を裏切ったという恐ろしい事実と、
私の中にいるもう一人の奇妙な私をみてしまった事。
どれも認めたくない!
けれどどれも事実。
大人になった今なら、もしもこんな相談を受けたら、
まず絶対にこのことは言わずに自分の中に徹底的に封印すべきだと、
それが愛だと、アドバイスするかもしれないけれど、
この時の私は本当にもうどうしていいか分からず、パニックだった。
とことん純粋で真っ直ぐな私と筒井君との愛に、
どんな小さな嘘も、些細な隠し事も、
ひとつたりとも有り得ないことだった。
筒井君と逢った。
目を合わせられないどころか、顔を見せられない。
うなだれて下を向くしか出来ない。
口もきけない。
ダラダラと異常に涙が出るばかり。
筒井君は当然、
「いったいどうした?」
と尋ねる。
ただ事で無い事は察しているだろうけど、
こんな酷い事、
絶対に彼の頭にはみじんも浮かんでいないだろう。
これを話したら、すべて終わってしまうかもしれない。
私の人生そのものともいえる愛が壊れてしまう。
けれど、隠しておくわけにはいかないと思った。
命よりも大事だと誓い逢った二人の愛。
その愛に嘘は絶対につけないと思った。
きちんと話して過ちだった事を伝える。
それしか考えられなかった。
事の一部始終を聞かされた筒井君は、
ずっと地面をみつめていた。
何も言わず、
微動だにせず、
石になったようにただ地面をみつめていた。
憤りに震えているような、
哀しみに打ちひしがれているような、
まるで脳を撃ち抜かれたように呆然と。
人間のあんな絶望的な表情はあれ以来いまだに見たことがない。
今でもあのときの筒井君の表情は脳裏に焼き付いて離れない。
信じられないことに、筒井君と私は終わらなかった。
筒井君は私の想いを受け止めてくれたのだ。
何が起きても一生を共にと誓ったのだから、
壊れたりはしない、すべて乗り越えていくんだと。
私たちは奇蹟的に一命をとりとめた、という感じだった。
でも、この事件が私たちに与えた影響は
意外に(いや当然に)とても根が深かったのだった。
筒井君にとっても、私にとっても。
この傷の後遺症が、すぐに現れ始めた…
第5話『過ちの後の秘密の恋』へ続く
まっすぐな恋をした高校時代を経て、主人公リクは段々と変わって行ってしまう。
ただまっすぐに恋していただけのハズだったのに、過ちを犯しながら傷付き、
どんどん汚れていく。そしていつしか地獄へ…。
本当は誰よりも<愛>に生きたいのに。リクに真実の愛はみつけられるのか…




