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第17話『揺れる心』

・:・:・:登:場:人:物:・:・:・:・

松尾リク(主人公)

本木君(本木雅弘さん風)

奈摘さん(小川奈摘さん風)

筒井君(筒井道隆さん風)

智子ちゃん(田畑智子さん風)

・:・:・:・:・:・:・:・:・:・:・






 私の長期出張のせいで、

四六時中いっつも一緒にいた二人が離れ離れになって、

それで急に愛しさが募ったのだろうか…


 あれほど結婚なんて考えてないと言っていた本木君が、

プロポーズ。




 逢えない時間が愛育てる…

そんなところなのだろうか。



 とにかく私の帰国後、

急展開した私と本木君。








 結婚は当分考えずに30歳位までは仕事一筋で…

と決意していた私だったのに。


 本木君とずっと大事に付合っていきたいと思っていたから。


 結婚に躊躇をみせることで今の二人を壊すのは嫌だったから。


 別れたくはなかったから。


 そして彼が今のまんまでいいと言ってくれたから。



 それらが二度目の結婚を決めた理由だった。

この人となら、やっていけるんじゃないか、

そう思った。





 本木君がジューンブライドがいいと言い出して、

十三ヶ月後の六月に結婚しようということになり、

プロポーズの一週間くらい後、

彼の御両親に逢った。

そしてそのさらに数日後、私の母にも。



 私と本木君とが出会ってまだ半年しか経っていない事、

そして、

私が布施と修羅場の末にやっと別れてから

たった一年経っていなかった事、

それで私の母は開口一番、本木君にこう言った。




「ちょっと気が早過ぎるんじゃないですか?」



「…」



「私は結婚は本人どうしの問題だと思うので、

別に反対したりはしませんが、

もう少し良く考えたほうがいいと思いますけど。」





 今思えば、あれは彼に言っているようにみせかけて、

私に向かって言ってたんだろうな。

アンタ、懲りてないの?

って。






 布施との結婚に失敗して、結婚に懲りていた私。




 布施との結婚は特殊だったんだといえばそうなのだろうけれど、

それとは別に、

結婚生活そのものも、私にとっては向いていない、

そう感じていたのでした。


 仕事、やりたい事が山ほどあって、

時間がいくらあっても足りない!

そう感じていた私にとって、

結婚している事によって奪われる時間が苦痛だった。

全ての時間を自由に使いたい私にとって

結婚は重荷でしかない。



 だから、今の自分は結婚なんてすべきじゃないと思った。





 もっとずっと大人になって、

他の事にも時間を割く気持ちの余裕が出来て、

それから…

と思っていたのに、

また結婚を決めてしまった…



 本木君との結婚に踏み切った理由は、

もう一つ、

彼をとても愛していた事。

布施との結婚に愛はなかったけれど、

本木君と私は愛しあっていた。

その違いは大きい!

大きいはず。






 私は彼が本当に大好きだった。



 彼はとても無邪気な少年のような人で、

それでいてきちんと大人だったし、

何より私は彼の、

ひたむきに走る姿が好きだった。

尊敬に近いものを感じていた。


 誰から言われるでもないのに

毎日毎日、

トレーニングを続ける彼を本当にすごいと思った。





 どんなに明け方まで深酒しようとも、休まない彼。

早朝の10km〜15kmのランニング、

夜はジムでウエイトトレーニング…


 スキー旅行に行っても休まない。

ちゃんと早朝ひとりで起きて雪道を10〜15km走ってくる。

夜の筋トレも旅行中であっても絶対に欠かさない。





 夢中になってる姿を素敵だと思ったし、

苦しいトレーニングをずっと続ける精神力の強さに

憧れすら抱いた。

私も精神力のタフなほうだと思うけれど、

とてもかなわない。

とても生き生きとしている彼。



 不器用で、まっすぐな愛をむけてくれるそんな彼。

私と本木君は、どこか似たもの同士でもあった。


 変わってるとか偏屈とか思われがちなAB型、

彼もおんなじAB型だったからか、

なんだかとっても

自然でいられる気がしていた。





 とにかく友達が多い人だった。

たくさんの仲間にいっつも囲まれていて、 

本木君を通じて私もたくさんの友達に囲まれているようになった。



 私たちはそんな仲間たちからも

ラブラブ過ぎて気持ち悪いと冷やかされる程、

本当に仲が良かった。




 だけど、

ちょっとしたトラブルがあった。



 女がらみのトラブル。







 本木君にはどうも私と出会ったのと同じ頃、

ちょうど付合いかけていた女が他にいたようだ。


 その彼女、奈摘さん。

彼女とイイカンジになりかけていた頃だったのに、

私と出会って私と付き合うことになり、

奈摘さんとは結局、

中途半端な友達以上のまんまに…





 私も彼女に何度か友達として会っていたのだけれど、

まったくの友達という事ではなく、

実はどうもそういう事情のある女だと知った。






 本木君が自分の家を友達に譲って、

自分が家無しになってしまい、私の家に一ヶ月居候したあの件、

友達というのは実は奈摘さんだったのだ。


 なんでただの友達(しかも女友達)に、

自分が住処を失ってまで、そこまでするんだろうかと、

あの時から疑問は感じていたのだけれど、

そういう訳ありの女だったのだ。






 私と付合い始めてからも、

何度か彼女と呑みに行ったりしていたようで、

いろんな話が仲間から聞こえてくる…


 呑みにいって彼女が酔いつぶれ、

彼女を送ってそのまま彼女の家に泊まった、

ということも耳に入った。





「それで?どうしたの?」




 平然と笑いながら、彼に尋ねると、

連れて帰っただけだと言う。



「家の前で別れたの?」



「いや…」




「じゃあ玄関に入ったの?」



「うん。まあ。だって泥酔してて歩けないから…」




「泥酔してて歩けなかったけど、

玄関で自分で靴脱いで部屋に歩いて行ったの?彼女。」



「いや、靴脱げなくて歩けないから…」



「靴脱がせて部屋に連れて入ったの?」



「まあ…」



「抱きかかえて部屋に押し込んでそのまま帰ったりしないよね?普通。」



「うん、あ、歩けないから…」




「だよね、ベッドに連れて行ったんだ。」




「うん…」



「そのままベッドに寝かせたままじゃ服もクシャクシャになるね。」




「それは、でも、あの、彼女が着替えるのを手伝っただけで…」





 恋人未満のイイカンジになってた女が

酔っぱらってベッドで着替えるのを、

手伝っただけで本当に終わったのだろうか。

そういうシチュエーションでも理性の塊な人も居る。

けど、

本木君はどちらかというと、

<据え膳食わぬは男の恥>

だと思っているタイプだった。



 おそらく不貞はあったのだろう…


 でも結局この件は、

泊まった事を認めたものの、

着替えを手伝っただけ、

という事でグレーな判決のまま。








 その後のこと。


「今日は高校の陸上部の先輩らと呑みに行くから…」

と本木君が言うので会えない夜があった。



 いつも一緒だったし、一人でいる夜は滅多になかったので

この機会にと、私も用事で実家に。

用事がすんで、単車での帰り道、

本木君の携帯に電話してみた。


 どんな友達のところにも私を一緒に連れていって、

友達に私を見せびらかすような本木君だったから、

近くにいるなら顔を出そうかなと思った。




「どこで呑んでるの?」



「○×にいるんだけど、もうそろそろお開きって言ってる所だから…

また明日電話するよ。」



「そっか。じゃまた明日ね。」





 そして、帰ろうと単車を走らせ始めた。



 ふと、なぜか気になった。




 私は進路を変え、

本木君がいるという○×という店に向かった。








 そこに着いて店の扉を開けようとドアノブに手を掛けた時、

なんだか胸騒ぎがした。

その扉を開けてはいけないような予感がした。




 それで扉を開けずにもう一度本木君に電話を…




「本木君? まだ○×にいる?」



「え?ああ…まぁ、いるけど…、一体どうしたの?なんかあった?」



「うん、別に…、あのさ、ちょっと顔出そうかと思って…。行っていい?」



「えっっ?!」



「もう前にいるんだけど…」



「うそっ!えっ?!まじ? あ、ちょ、ちょっと待って…」





 喜ぶ驚き方とは明かに違ってた。




 店の窓から覗くと、

慌てる彼と、

奈摘さんの姿がみえた。





 ウソついてたんだ。この人。




 別にただ食事して呑んでただけだし、

ただの友達だし、

変に誤解させて心配掛けないように

「陸上部の先輩と…」

ってことにしただけで悪気はないし…




 本木君がそう弁明したのを聞いたあと、

「帰る。」

と私は一人でバイクを走らせ帰宅。


 すると、

帰宅を見計らったように、

奈摘さんから電話…

本木君と同じ事を弁明する彼女。



 彼女からの電話は、なぜか無性にに屈辱的で

腹が立った。




 


 友達だから食事して呑んでただけだよね、確かにね。

でもわざわざウソついて隠して…

最初電話した時、

「また明日電話するね」って言ったよね。

今夜はどうするつもりだったの?

私の邪魔がなければまた二人でお泊まりするつもりだったわけ?


 そういうことだよね?










 そんなトラブルもありつつ、

だけど、

根本的には本木君は私にとても誠実だったし、

その誠実さを私は信頼していたから、

大きなトラブルはなかった。


 ここぞというところでは誠意に満ちた愛があった、

それだけを私はとことん信じていた。

くだらない嘘はついても、

私の大きな信頼を裏切る人ではないと。



 その<誠実さと信頼>が彼との絆でした。









 本木君と出会ってからこの半年の間、

楽しく日々を過ごしていた私は、

あの筒井君への想いを少しは忘れられているような、

そんな気もしていた。


 夢のように筒井君のプロポーズが消え、

彼が智子ちゃんの元に戻ってしまって以来、

筒井君とは一度も会っていなかった。


 N.Yから私が葉書を一枚送った以外には、

何の接点も無くなっていた。

そう、

接点を残しておきたい一心で

葉書を送ったようなものだった。




 私がプロポーズを二つ返事で受けなかったら、

その時は必ず智子ちゃんに戻るという、その約束どおりに、

彼女の元へ戻るしかなかった筒井君に、

(私を忘れないで)

(私は貴方とやり直したかったのよ)

(”いつか戻る”という私達の約束は終わってないと信じてる)

そんな気持ちを伝えたかった。

一言も文字にはしなかったけれど。







 本木君との結婚が具体的に決まって行く。

日取り、式場、仲人さん、結納…

布施の時とは違う。

本格的に公に、大々的に結婚が決まって行く。



 当然、筒井君のことが頭をよぎった。


 本木君のプロポーズに対して私は、

本木君と今すぐ別れるのが嫌で結婚を渋る訳にはいかず、

反射的にそのまま、YESと言うしか出来なかった。



(でも…、私は筒井君といつかやり直すと心に決めていたのに。

一体どうしたらいいのだろう…)






 筒井君が彼女の元に戻ったあの時、

永かった私と筒井君の関係は終わってしまったんだ。


 終わったとは認めたくはなかったけれど、

私の青春のすべてをかけたこの恋は、

もう終わってしまったのだと、

言い聞かせようとした。



 そうするしかこの矛盾・葛藤を整理するすべは無かった。






 心に他の人がまだ住み着いている。


 迷いや矛盾・葛藤を、

揉み消そうとしながら、

どんどん進んで行ってしまう道筋に、

そのまま押し流されて、

後戻り出来るところはとっくに過ぎて来てしまっていた。





 それでも、

後戻りすべきならば、

勇気を出して戻らねばならない。


 それが、

当事者でいるときには分からないのだ。

出来ないのだ。


第18話『親というもの…』へ続く

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