第3節 お母さんのメモリー(1)
その日の夜、お母さんは家にいた、息子の林海と嫁の陶玉風と一緒に晩ご飯を食べながら、テレビドラマについて話している。興奮している途端、何かがあったように頭を振り替えてみると、暖簾の後ろからこっそりと屋内を見ているのが林平だとびっくりした。いつ来たのか?なぜ何の音もなかったのか?家に着いたのに入ってこないのがなぜなのか?
母親は三人子供がいる、すべて男で、それぞれ5歳離れている、林平は末っ子だ。
10年前にご主人は病気でなくなり、長男の林江は結婚していた、次男の林海は就職していた、林平だけは中学生だった、まだ聞きわけが良くなかった。その時からお母さんは一番心配していたのが林平のことだ。お母さんも十代のときに自分が好きなお父さんをなくした。そのつらい体験があったから、自ずから林平のことを可哀想に思っていた。父親をなくしていた林平のつらい気持ちを補うために、優しい母親は厳しい父親というキャラクターも兼ねて、林平に特別な思いやりをしていた、それはなんと言ってもやりすぎではなかった。
長男はまったくポスト旦那のようだ、顔もよく似ていて、おとなしく、やさしく、自信的で、果敢的で、責任感あり、世の中に煩わしいことが全然ないようにいつも微笑んでいると性格もお父さんとほぼ同じだ。そのような子だから、お母さんは安心しているが、特別な記憶とかもなく、長男はどうやって大人に成長してきたのかをよく覚えていないようだ。大人になった長男は共産党に入って、官僚になって、彼女ができて、新郎になって、その後孫もできたと、人生は順調だった。喜ばしい情報を聞いて、お母さんは大変喜ぶが、しばらく経ったらすっかりと忘れる。いつの間にか、林江と会うたびに、思わず旦那のことを思い出して落ち込んでくる。だから、普段お母さんはあまり林江のことを思い出さないが、長男に対して、自分の旦那をよく知っているように良くわかっている、次に何を話すか、何をするかを時々予知もできる。長男は何でもうまく対処できるから、お母さんも安心している。
次男の林海から、お母さんは自分自身のことを良くわかってきた。次男の性格はお母さんとそっくりだ。情熱にあふれ、怒りっぽく、純粋で世俗的、心が優しいが表現がきつい、時に賢く見えるが、時にはバカなことをやっちゃう…まったく矛盾の統一体で、違う人に違う態度を持っている。どうしてそうなっているのか?原因が多くあるようだが、一番の事実は虚栄心なのだ。だから、自分が何のためにやっているかをつねにわからなく、自分とあまりクラス変わらない人より良くなったらいいと思っている。中年以降になったら、その癖を見つけるようになったが、その問題は林海によく表されている。お母さんは未成年の子供を扱うように、高い声で向こうを教育している、それも昔、旦那が自分に対する態度と同じだ。
四年前、勤務先の運営利益がうまくいかず、林海は仕事を休職して商売をやり始めた。お母さんも一緒に参与した、定年退職後のつまらない時間を潰すために、もう一つ重要なのは林海を心配しているから、彼を見守りたいのだ。案外、それで林海が助かった、恥ずかしくて口に出せない話をすべてお母さんに任せている、またお母さんからアイディアを出し合ってもらいながら、説教されたりして、林海は大儲けを果たした。しかも林海は成金の癖もできていない、体が健康で、生活はどんどんよくなってきた。だから、林海は心から自分のお母さんに感謝している、自分のすべての栄誉がお母さんのおかげだと言っている。お母さんの話もよく聞いている。
林海は賑やかな環境が好きだから、就職したばかりのときに多くの友達ができ、うち仲良い女性友人もいる、林海が一番気に入たのはあるファッション好きな女の子だ。一体その子のどこが好きかわからないが、林海は狂ったように求愛していた、二人は一度付き合ったし、一緒に寝たこともある。お母さんの話しをどうしても聞かなくて、「もうあなたのことを構わないと誓う」と言われた。しかし、1年になっていないうちに、その子は他人と結婚した。
ある時期、林海はとても落ち込んでいたが、しばらく経ったらもとに戻った、少なくとも表面的にそうなっている。しかし、それから、林海の周りに若い女性に乏しくなかったが、関係が固まった恋人がいないまま28歳になっちゃったら、結婚する気もなかった。聞かれたらよく好きな子がいない、或いは自分が好かれていないと林海が言い張っている。どんな人が好きなのか、どういうふうに好かれていないのかについて彼はいつもあいまいで言う様がない。お母さんはとても焦っていて自分で嫁さんを選ぶことにした。
お母さんはとても気に入った人はいる、彼女は林海と同じストリートで服装商売をやっている陶玉風だ。彼女の本籍は北京だが、黒竜江省で育った。ご両親は20数年前から黒竜江省へ支援に行き、数年前に定年退職して、彼女は未婚の兄さんと一緒に北京へ戻った。関連政策により、政府は兄だけに北京の戸籍を与え、就職チャンスを提供したが、再び北大荒へ戻りたくない彼女はやむを得ず両親の協力で実家の周辺で小売りを起業した。彼女のような状況は良いとは言えないが、また普通の容貌で、暮らし向きが豊かな男は追っかけないだろうが、お母さんは彼女の人柄を気に入っている。大都市じゃないところで育ったので、都女のプライドがなく、お高く留まっていない、優しくて落ち着いて苦労に耐える、どんな時でも和やかな微笑みを帯びている。こんな嫁をもらったら一生幸せになると決まっている。北京戸籍の問題について、林江が助けてくれるし、また少しお金を使えば、遅かれ早かれ解決できるだろうとお母さんは思っている。
その日の夜、お母さんからその思いを言われたら、林海はボウとした、顔つきが悪くなった。林海の虚栄心のせいだとお母さんは知っているから、彼に話し続けた。お母さんの記憶の中で、そんな長い時間でしゃべらない林海を見たことがないのだ。お母さんはそれで終わりかと思ったら、1ヶ月後、林海が陶玉風を連れてきた。また3ヶ月後、二人は結婚した。
お母さんは思ったとおり、玉風は家管理をよくやりこなして、夫婦の仲も良くて、林海は束縛を感じていない、商売もどんどんよくなっていった。自分で選んだ嫁だから、最初からお母さんは他人扱いをしていなかった、娘を持っていなかったから、玉風を自分の娘のように扱っている。最初、林海が来て玉風に好感を告げてから結婚式まで、玉風はずっと夢見ているようだった、のちその経緯を知ったら、玉風は心からそのお母さんに感謝していて、姑関係はもっと親密となった。ただ一つは、結婚後の林海は落ち着いていない、裏でほかの女とかかわりがある、どうやってかかわっていたかわからないが、その中に昔の林海をふった女もいた。お母さんはよく嫁さんのいない時に林海をひどく叱っている、そのような不祥事はもちろん嫁さんにばれている、玉風はとても度胸があって、知らないふりをしていた、そうじゃないと、どんなことが起こるかを想像もできない。
お母さんは林海の夫婦に自分の家に住んでもらっている、そして夫婦の中で特別な役割を果たしている。その役割とは、お母さんが話したようによく息子を叩いて、でたらめにやりすぎないように息子に教えている。お母さん自身は自分がこの家に不可欠な存在だと信じているから、年配者としての余計な存在感がない。
ともかく、林海のことで苦労しているが、心が疲れていない。それもちょうどお母さん自身の心理習慣とあっている。だから、3人息子を見て、一番落ち着いて心がゆったりとできるのが林海だ。
林平のことを思い出すと、お母さんは思わずがっくりする。彼に特別な思いやりをして、苦労してきたが、林平は3人息子の中、一番わかりにくい子だ。
それもお母さん自身のせいになるかもしれない。実は林平が旦那と生んだ子じゃない、本当のお父さんは専門学校時代のクラスメイトだ。そのクラスメイトは班長や学校の学生組織で宣伝部長を担当していた、多芸多才でハンサムな人間だ。お母さんを含めた多くの女子学生は争って彼と付き合おうとしていた。お母さんは元々勝利者だったが、卒業後、彼氏に国の呼びかけに答え、開拓者として未開発の内陸に行こうと言われた、当時のお母さんは彼氏について行きたかったが、未亡人の母親に断固に反対された。結局、彼氏について一緒に青海に行ったのがクラスメートのもう一人の女性だった。ある夏、お母さんは出張で西寧に行った、西寧を離れる前に、どうしても10年間も会っていない彼と会いたくて、結局見つかった。当時の彼がそんなに不幸だとお母さんは夢見もしていなかった、右翼だと見なされ、一緒にいた女性に振られ、離婚した、自分の子供も連れ去られた。意気消沈した彼は昔のクラスメイト兼恋人と会ったら、やはりこらえきれず泣き出してしまい、お酒を飲みすぎてつい酔っ払ってしまった。酔っ払った彼は時間の錯覚をして、元恋人を元妻に見なし、元妻は再び現れたかと間違った。お母さんの手を握って、苦情を言い続け、感情が溢れたらお母さんを抱きしめた、そして…お母さんは少ししかお酒を飲んでいなかったが、酔っ払った。彼は幸せに生活しているなら、昔の恋人としてお母さんは安心してまたプライドのために彼と距離を置くが、今、誰も構ってくれない孤児のような彼を見て、同情心が湧いてきた。その時のお母さんはできるだけ、運命に翻ろうされた彼に最大な慰安をあげたいだけで、自ら最後の衣服を脱いだ。その夜に彼女はすべてを忘れた。翌日の午後、電車に上がったら、自分がバカなことをしたと気付き、その頃ちょうど自分の妊娠危険期だったことと突然思い出した。家に帰ってしばらく経ったら自分が妊娠したことをわかった。元々中絶したかったが、浮気されたと知らなかった旦那に今2人息子がいるから、娘がほしいと中絶を止められた、結局また男だった。北京に帰ったら、約束通りのように元彼氏に手紙を書くことをお母さんはしなかった。二人が分かれてから数日後、彼は交通事故で死んだことを数年後お母さんは知った、元彼氏が死ぬときにお母さんはまだ自分が妊娠していることをわからなかった。だから、お母さんはそんなに偶然なことがあるなんてずっとおかしいと思っている。でも、お母さんは彼のために子供を生んだが、でも彼のことについてよく知らない。そうじゃないと、お母さんは林平はいつもおかしいと思わないだろう。
独特な林平は実父の顔立ちのいいところをすべて受け継いだ、背が高くてハンサムだ。しかし、性格上では両親と違って、別のタイプとなっている。どうしても遡ろうとしたら、林平は両親性格のすべての欠点を受け継いでいる、それは感情が豊富でもろくて、性格が悪い子だ。
中学生の時代、林平はもう気持ちが良く落ち着いていなかった、楽しく歌ったり、がっかりして気を落としたりした。現実を超えた幻想にはまったり、翌日になったら国や国民を心配して、現実の悩みで疲れたりしていた…表情を隠さない林平は誰でもが自分の内心世界を望むことを許さなかった。他人から望まれたら、彼はいつも冷たい表情で黙ったり、「お前は何も知らんよ」ときつく言いつけて頭を振り返えたりする。強い独立性を持った林平は人付き合いが独特で、他人からのかかわりを恐れている、他人が好意を込めた行動に対してもありがたがらない。一番の例は着衣だ、彼は半月ベースで服を変えているが、でも半月経たず服が汚くなった時もあるから、その時に彼は着替えろと催促されたら、いつもむかつくようになる。もう一つは彼があまりお金を請求していなかった、請求しても多くもらわない、お金の使い道も隠さない、お金をもらえなくても、付きまとわないが、長い間親と会話をしなくなる。
でも、彼は多くの長所もある、一番著しく見えるのが尋常でないセルフコントロール能力だ、つまり自分に厳しい。幼い頃から、彼は同じ世代の子供と違って、あまり遊び好きではなかった、嬉しくなりなんでも忘れてしまうこともなかった。彼は読書が好きで、教科書だけではなく、新聞紙や雑誌、商品取り扱い書などまで、文字を載せたすべてのものは彼の興味を引き出せる。窓の外側にいる子供たちは楽しく遊んでいる同時に、こっち側にいる彼は本を持ちながら思考しているという場面がよくあった。家族の誰も彼の勉強に助けをあげたことがないが、彼の成績がよくて、先生に好かれ、お隣に住んでいる方々によくそんな聡明な子はどうやって育てたかと聞かれて賞賛の声が絶えなかった。
そんな子に対して、お母さんもどうしようもない。お母さんは時々戸惑っているのがその生まれべきでない子は自分が産んだ子ではない、或いは、神様もその彼氏を可哀想がっていた、彼が世間で苦しんでいることをみて世間を離れさせることにしたが、しかし、ある理由で、お母さんのところに転生させられた。その思いで、お母さんは前世に苦しみまくった林平が目の前に悲しむのが怖かった。それを避けるために、林平を甘やかした。林平が怒りっぽいと知って、お母さんは話しにも気を遣って慎重だ、いつも林平の立場に立って考える、できるだけ林平のやり方を受けいれて、こっそりとあれこれをやるのも林平の機嫌を取るためだ。
「良く扱わないとならない、そうしないと…。彼の実父はもしかして幼い頃も同じように、綺麗で聡明な子は変な癖がよくあっただろう」とお母さんはいつも思う。
しかし、林平は大きくなったら、頭が良すぎるようになった。中学を卒業する直前、彼は高校に行かず、農村部に行きたいと言い出した。困苦な環境で鍛えられた後こそ、社会に貢献できる人材になれる。田舎生活は苦しそうだが、楽しみもある、果てしない天地に、美しい田園、緑の山々、澄んだ渓谷、明るい星など都市で見れないものがある、大自然に溶け込んだこそ、詩歌のような生活ができる。そのような話を聞いて、お母さんは焦りだした。ちょうど良かったのは、その年度から、国が指示を出して、都市の青年に農村に行かせなくなったから、結局林平は夢を実現できなかった。高校二年生の時に、文科か理科を選ばされたら、分科を選ぶと林平が決めた、クラスの担当先生はやむを得ずお母さんのところに、林平がロジック思考に得意だから、文科系だと暗唱だけに頼るのが林平の長所ではないと相談に来た。他のクラスメイトから聞いた話では、文科を選んだ理由は文化大革命が徹底的に否定され、林が釈然としないから、一体にどういうことなのかを知りたくて、文科を選んだという。その考えがとても甘くて、余計な苦労を招くのかもしれないと担当先生が言っていた、お母さんは先生のほかの話を覚えていないが、ただ一つ当時流行っていた「数理化をよく勉強すれば、どこでも通用できる」という言葉を覚えた。お母さんはとても先生の考えを賛成しているから、林平を説得することと約束した。その日の夜、お母さんは息子の将来のために、自分が跪いても構わないと心の準備をした。案外にお母さんの話を聞いて、林平は少し驚いたようだったが、何も言わずに承諾した。簡単に取った勝利でお母さんはあまりにも喜んだほか、戸惑いもあった、それは自分がまったく林平のことを理解できなく、そのまま続くと、いつか親子の間で大きな喧嘩が起こるかもしれない。独特な考え、冷たい性格を持った林平は大人になったら、思わずこの家を飛んでいくかもしれない。それを思うと、お母さんの心はいつもいらいらとする。
大学進学試験を控え、他のクラスメイトは精一杯試験準備に励んでいる時、林平はすこし油断した。予備試験に通らなかったクラスメイトと一緒に楽しく香山を登ったり、万里の長城で遊楽したりしている。お母さんはそれを心配して、文句を言ったら、林平から「たいしたことがない、大学に行ってやる。試験前、一番大事なのは勉強じゃなくて休憩なんだって知っといて」と笑いながら言われた。お母さんは仕様がなく、彼のクラスメイトと会いに行った。試験の後どう遊んでも構わないが、試験の前に林平を邪魔しないように、また自分がお願いに来たことを絶対に林平に教えないようにとお願いした。お母さんの働きは効果を見えた、それから林平は出かけることが減って、家で勉強することが増えてきた。
しかし、結局、彼はよく復習もできなかった。試験本場になったら、国語試験後、ピンイン問題が出てきたのを思わなかったなって。数学試験後、二つの問題の数学公式を思い出さなかったなって。政治試験後、いくつかの問題を推測できたが、先生に答えを聞くのを忘れたなど等、息子のつぶやきを聞いて、お母さんはとても心を痛めているが、試験参加中の学生の気持ちに影響を与えないようにと学校から注意されたから、お母さんは怒りを抑えた。試験は3日間続いた、お母さんは3日間ずっと心配していた、結局疲れ果てたのは林平ではなくてお母さんだった。1ヶ月以上が経ったら、成績が発表された。林平の成績が重点大学に入れるが、先生たちの期待より大幅に下回った、特にクラスの担当先生はとても残念に思っている。
お母さんのがっかりした様子も考えられる。林平の前に、お母さんは初めて我慢しきれなくなった、長年積み重ねた不満が火山のように爆発した。泣きながら話した、話せば話すほど悲しくなる。自分のことを賢いと思っている林平はお母さんの期待に答えられなかった、お母さんはそれで苦しんでいる。林平は生まれてから初めて頭を下げて、無言になっている、どう言われても反応がない。涙がそのハンサムな顔を流れたときに、林平は自分の唇をきつくかみしめている。
その後、お母さんはもう一つの間違いをした。あまり失望しすぎて、心がいらいらしていた。また出張に行かされ、会議に参加し勉強することを加えて、お母さんは林平が進学希望の最後の2欄に希望大学何を書いたかに気を遣わなかった。出張から帰って、家に着く前に、林平が武漢地質大学に採用され、地質分野の人間となるよと他人から告げられた。
「地質の仕事だとよく野外で寝たり食事したりするから、苦労するだろう。お母さんはどうしてそんな学校に行かせるの?私に置き換えるとむしろ浪人させるか普通の大学に行かせるだよ」と同僚が言いつけた。
お母さんは自分の過失に気付き、急いで帰宅したが、林平を見つけない。晩ご飯時間が過ぎたら、林平はようやく帰った、誰かに怒っているようだ。お母さん側も怒っていた。怒っている二人は目があってお互いに意外と感じた、結局二人ともぼうとなった。
しばらくしたら、お母さんのほうから先に話しだした、もう地質学院に進学決定されたかと聞いた。
「そうですけど、何ですか」。林平は怒りながら言った、もう聞き飽きた話しのようだ。その前に多くの人々からそのような話を聞かれたと明らかにわかる。
「本当に行くなの?」
「うん」
「まじめに考えた?」
「もちろん考えた。既定の事実だから、変えようもない。」
「何のためだよ」お母さんは悲しくなり、涙が流れてきた。「自分が賢いと思い込んで、試験に不真面目で、成績が良くなかったのことを私はもう精一杯で受け入れようとしたけど、あなたはどうして出鱈目なことをするんだよ、学校が多いくせに、どうして地質を勉強するんだよ、わざと私を怒らせたいんですか。そんなバカなことをするなんて。私も恥ずかしいだよ」
「もういいんだ」林平は急に叫びだして、お母さんはびっくりした。その林平は怒り出したライオンのようだ「黙ってくれ、おれも子供じゃないから、どうして自分のことを決められないか?おれはどんなにバカなことをしても、母さんに叫んでもらわなくてもいい。一生ずっと話しを止めないままにいたのが飽きないのか、うるさいと思わないのか。俺のことをバカと言うのが、正しいかもしれん。でも母さんたちはどうだよ、賢すぎるじゃないか。自分のことだけを思って、自分の子供だけを関心して、この社会に本当に関心を寄せたこともない。だから、文化大革命が起こったんだ、わが国もこんなに貧しいんだ。母さんたちはこの一生、何をやったんですか。もう言い訳をやめろ、すべての間違いが他人のせい、林彪や四人組みのせいだと言うのをやめろ。あなたたちのような両親はずっと立ち回って言い訳をつけてきたから…もう変えられない歴史であなたたち全員が罪人となる。だから、私たちに説教する資格がない、もうやめろ。そうじゃないと。恥知らずに…」
「パチンッ」と響くようなビンタを受けて、林平は倒れた。お母さんは林平を殴った、息子が生まれて初めてだ、自分すべての力を使った。
林平を見つめて、あまり怒って話しもできなかった。しばらく経ったら、お母さんはドアを指してあえぎながら言った「いいよ、いいよ、罪人になりたくないから、また、あなたのような息子も要らない。出て行け、我が家を出て行け。これから気骨があればもう二度と帰ってこないでくれ」
地面に倒れた林平はいかに立ち直ったか、いかに腫れだした顔を触りながら唇から出た血を拭いてびっくりした様子で自分を見ていたのかをお母さんは永遠に忘れない。
お母さんを見て、ゆっくりとすれ違って行った。彼の目からどうしても自分の母さんは自分を放り出すなんて信じないようだが、でも…
玄関について、止まった、緩めに身を振り替えて、自分の母さんに対して、ゆっくりと腰をかがめた。
再び頭を上げたら、顔にもう涙だらけだった。急に身を振り替えて、よろよろと家を出た。
そのすべてがミュート状態で行われた、夢のようだった。お母さんは彼を見失ったら、ようやく聴覚を取り戻した、そのどんどん遠ざかっていく足音がハンマーの如く、自分の心を叩いている。足音がすべて消えたら、お母さんはやっと蘇ったように、彼がもう二度と帰ってこないことを覚悟した。すぐ、体が裂きなまされたように、立つこともできなくなった、その後…
お母さんは再び目が覚めたら、自分が病院にいるのをわかった、病床の周りに林江、林海、玉風がいるが、林平がいない。まだ怒っている最中で、みんなの前で林平のことを話したくないから、あまり話しもしていない。翌日の午後、お母さんはいつもこのような思いが浮かんできている、それはお母さんの殴りで林平は倒れた、そして緩めに立ち直り、血を拭きながらお母さんをじっと見つめている、悲しい目付きは鋭い刀のようにお母さんの心を刺している。だんだんお母さんは後悔しはじめた、どうして怒りを抑えられなかったかと自分を罵っている。殴ったばかりじゃなく、彼を放り出して…その時から、林平がそれらに耐えられるかどうかをお母さんは心配し始めた、林平は普通の子じゃないから。
その日の夜、お母さんは耐え切れず、林海に林平のことを聞いた。
「あいつは母さんをそんなに怒らせて、どうしてまたあいつのことを心配するかよ」
「それを構わないでください」。いつの間にか、林海の前に、お母さんも林平のように短気を起こしている。
林海はニコッと笑い、黙った。
しばらく経ったら、お母さんはなんか怪しいと思って、聞いた「どうしたの?どうして話さないの?林平はどこに行ったの?どうして見舞いに来ないの?私をこんなに怒らせて、まだ家にいられるの?」
「林平は…」林海の苦笑いしてため息をついた。
「どうしたのよ」とお母さんは緊張し始めた。
実はその日、林平は家を出た後、林海夫婦は仕事を終え家に帰って、気を失い地面に倒れたお母さんを見つけたら、すぐ病院に運んだ。林江が来たら、兄弟二人も何があったかをわからなかったから、絶対林平と関係あると判断した。林海は林平のクラスメイトの家で林平を見つけた、誰もいないところに連れ、事情を聞いたら、思わず林平は聞き終わっていないうちに逃げようとした。林海も怒りだして、散々殴った、殴りながらまた聞いていた。でも林平は泣いて泣いてどんどん悲しくなったほか、何も言わなかった。翌日、林江は再び林平と会おうとしたら、林平はもう何も持たずに武漢へ旅立った、電車チケットさえ、クラスメイトがお金出し合って買ってくれたのだ。
お母さんは悲しくて泣いた、泣き続けた。林平はまったく実父のようだ。その時にこんな子がいるのを知っていたら、どうしても浮気をしなかった。一生涯にこのような間違いは一回だけしたが、自分の敵のような子ができた、悲しい極まりだ。
その日の夜、お母さんは夢を見た。夢の中で、自分一人で荒野で歩いて、ある山に登ったら、目の前に果てしない大きな川が現れた。その川を眺めるとき、突然多くの人々が渡し場に駆けつけているのを見た。何のためかわからないが、お母さんもついていった、近付いたら、多くの人々が一人をひどく殴っているを見つけた。殴られた若者は泥地で苦しくもがいている、血だらけで、人間だと思われないようになっている。お母さんはいかって、そのリーダー模様の人に理由を聞いた。その凶悪な顔つきをしている人は手を広げて、あいつが船のチケットを買っていないと意味を示した。お母さんはすぐお金を取り出して、その人に投げた。そうしたら、向こうは笑いながら、どんどん小さくなって消えていた。お母さんはすこし迷い、周りを見渡したら、人々は全員消えた、その若者だけ頑張って立ち直ろうとしている。お母さんは助けようとしたら、その人が林平じゃないかと思った。どうしてここにいる?お母さんはぼうとなった。林平ととても似ている若者はお母さんに感激笑いした、深く腰を曲げた。その動作はどこかで見たことがあるようだが、思い出せない。お母さんは思い出そうとしているところ、若者がよろよろと去っていった。突然、そのシーンは一昨日にあったじゃないかとお母さんは気付いた、一昨日の林平はそうだったよ…そうだ、その人は林平だ、間違いない。お母さんは急いで追いかけながら、林平の名前を呼びかけている。ロウになったように若者は反応がなかった、逆に足取りがどんどん速くなった。
「林平、止まって、私を見てください、あなたのお母さんだよ。林平よ、私は誤った、ずっとあなたを捜しているのも謝りたいためだ。もう私のことで怒らないでください、早く帰ってきてね。あなたがいなければ私もいられないよ。林平よ、早く帰ってきて~」とお母さんは心苦しく叫んでいる。しかし、その若者は聞こえていないように、体が線を切った凧のように悠々と遠ざかっていった。
「林平…」お母さんは夢から起きた。起きても、心がどきどきして、苦しい極まりだ。振り返ると、どうしてそんな夢を見たかを自分さえわからなかった。それは何の意味がある?もしかして、林平は夢にいた若者のように自分を離れていくのか?離れたらどうなる?他の人にいじめられるのか?この世に、お母さん以外、彼を助けてあげる人がいない、お母さんは構わなかったら、彼はどうなるか…お母さんは怖くて想像をやめたが、徹夜泣き続いた。
翌日、お母さんは退院した。家に帰ったら、すぐ林平に200元を振り込んだ、安全に大学についたら早めに教えてくださいと書いた。また、他人にお願いして布団や衣類を持っていってもらった。その後、お母さんは林平に長い手紙を書いた。手紙で、お母さんは人を殴るのが間違いで、自分の子供を放り出すのも衝動行為だったと自己反省した、林平にお母さんのことを許してもらうようにお願いした。確かに自分の虚栄心があった、子供の未来は自分で選ぶべきで、どんな科目を勉強しても社会に需要されている、ましてその大学の地質科目はその分野をリードしている、お母さんは子供を誇りに思っている。次に、林平は突然別れたことでお母さんが苦しんでいると述べた、母親としての思いを語った。お母さんは林平に不満いっぱいがあるが、手紙に一つも言わなかった。
手紙を出したら、お母さんは待ち始めた。2週間後まだ返事がなかった、林平はすでに衣類と布団を受けたが、今は勉強が忙しいと聞いた。もう2週間が過ぎ、まだ林平からの返事がなかった。お母さんは焦りだした、もう一通の憤懣に満ちた手紙を書いた。そうしても、1ヶ月以上が過ぎ、林平がなしのつぶてで返事がぜんぜんない。もう2週間が過ぎ、お母さんは振込み未受領の通知を受けた、それは2ヶ月以上前に振り込んだお金は受領されなかったので、郵便局から返済された。お母さんはやっと怒り出した、もう200元を追加して一緒に振り込んだ、そして備考のところに、先に言っておきますが、そのお金再び返済されたら、もう二度と連絡しない。そうなったら、お母さんは自ら武漢に行って、林平がお母さんにお金どれぐらい借りがあるのかをはっきりと計算すると書いた。お母さんは本当に話を聞かない林平が憎い。
しかし、今度はすぐ返信があった。手紙の中に、林平は自分の誤りを検討して、確かにやりすぎたと言っている、どうしても、自分のお母さんと意地になって争うことをやるべきではない、お母さんにぜひこんな子供を許してもらいたいとお願いした。まさしく心を込めた文章だ。
お母さんは何回も読んで、思わず涙がこぼれた。しばらくしたら、お母さんは少し疑問ができた、その綺麗な字が林平は書いたものと似ていない、また手紙で表した思いと懐かしみも性格が冷たい林平から言い出すことじゃなさそうだ。4通目の手紙が来たら、お母さんはやっとわかった、それは全部林平のクラスメイトのある女の子が代筆した、彼女のおかげで、親子の関係を取り戻せた。とにかく、林平はもう抵抗しないから、お母さんも安心した。冬になったら、冬休みで家に帰ってくる「敵」の林平を待っていた。
でも、冬休みに近付いたら、林平の手紙が来た。手紙に代筆してもらった彼女はある理由で家に帰れなくなったから、もし自分も離れたら、学校で彼女一人を残して旧正月を迎えるしかないから、可哀想に。
「だから、私は彼女を助ける。前に彼女は僕を助けたように、そうじゃないと、エゴイストになる。母さん、そう思うでしょう?…」
「とんでもない、母親のことも可哀想に思いなさい…」とお母さんは不満そうに思った。でもそうには言わない、また抵抗してくるかもしれないから、しようがなく承諾した。手紙にぜひお大事にしなさいとの言葉を何回も繰り返した。
旧正月のお母さんはつまらなかった。それから、理由なく怒りっぽくなり、それで林海も家に帰りたくなった。翌年の6月になって、林平はそろそろ家に帰るのを思ったら、気持ちがようやく落ち着くようになった。林平は帰りの日に、お母さんは自ら駅へ出迎えに行った。林平を見たら、命懸けの戦場から戻ってきたようだと思ったら、涙が止まらなかった。